触れた手「ずるくね」
とある昼下がり。一周年を控えみんなで集まろうと、宿を取った時のことだった。ミスタは頬を膨らませて、じっとりとヴォックスを睨んでいる。
「何がだ?」
「シュウの髪! ヴォックスだけ触ってんのは不公平だろ!」
「あぁ、そんなこと」
昨日のヴォックスの配信で、ぼくが頭を触られたことを言っているらしい。そんなことでいじけなくてもいいのに。
「触りたいなら触っていいけど?」
「触るけど! なんで俺より先にヴォックスがさあ!」
「ミスタは来るのが遅かったから仕方ないだろう」
「納得いかない!」
すくっと立ち上がり、ぼくの前まで歩いてくる。思ったよりも丁寧な手つきで頭を撫でられる。壊れ物に触れてるみたいでちょっと擽ったい。
1491