ゆめみるひと その日彼らは新しく見つかった有碍書に潜書していた。
その最奥と思われるところに辿り着いてもボスらしき敵はいなかった。周辺を探索しても土がむき出しの道と田舎の風景が続くだけで、潜伏している雰囲気はない。雨上がりの情景は空気がよく澄んでいた。
「仕方がない、そろそろ戻りますか」
筆頭の夏目の提案する。
「犀星さんがいないよ」
「どこ行ったんだ、アイツ」
新美の言葉に田山があたりを見回してもやはりその姿は見つからなかった。皆で呼びかけても返事はない。
三人がほとほと困っている時、道脇の大きな木の頭上に茂った葉から田山と夏目を狙いすましたように一つずつ雫が落ちた。
「うわ、つめたっ!」
「これは参りましたね」
慌てて二人は木の下から退いた。
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