冬の至り 今日は冬至なので、食堂で小豆と煮た冬至かぼちゃを用意してくれた。季節の折りのものなので、ありがたくいただいて部屋に帰る途中だったのだが。
「君とのキスはかぼちゃの味がするね」
単なる感想なのか苦情なのか分からない調子で芥川は言った。断りもなく突然にしておいてなんなのだと思う。そも直前まで食べていたのだから当たり前ではないか。
そう、室生はただかぼちゃの煮物を食べただけなのだ。ごくごく平凡な庶民的日風景の何が彼をこの行動に走らせたのか分からない。
「文句があるなら洒落た菓子でも持ってきてくれ」
「いいや、君らしくていいと思うよ」
ご馳走様、美味しかったよ、と彼は笑う。どういう意味だ、カボチャ野郎という意味か、いや芥川に限ってそれは無い。
「まだ食堂にあると思うぞ、かぼちゃ」
「僕もいただいたよ?」
とんちんかんな勧めに不思議そうに首を傾げた芥川は、何故か室生の後をついてくるのだった。