Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    fgskhry

    @fgskhry
    bnalりゅさい

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 12

    fgskhry

    ☆quiet follow

    実在の人物とは関係のないbnalりゅさい。

    赤いひれ 萩原はドアを開けるなりげんなりしてしまった。
    朝食の時間を過ぎて潜書までの時間、まんじりと自室でマンドリンの弦を弾いて寛いでいるときだった。
     訪ねてきた今日初めて見る親友は、友人に伴われていた。ただ共に来たのなら良かったのだ。とりあえず二人を部屋に迎え入れる。
    「朔くん、お邪魔するよ」
    何故か親友は友人に抱きかかえられ、小柄な体はすっぽり彼の腕の中だった。それが親友の意志によることが、友人の首に回された腕で示されている。
     午前中から何なのだ。芥川の脂下がった目尻が苛立たしい。昨夜はお楽しみでしたね、的なアレなのか。それを自分の部屋で展開するとはいったいどんなプレイだ。
     二人の間のことに口出しするほどもう青くはないつもりだが、足腰立たない程とか良くない、絶対良くないよ、犀! と、茫然とした状態から詰め寄ろうと立ち直った。
     その時視界の端に、ひらりと赤いものがちらついた。室生のいつもの履きものかと思ったが、それよりもオレンジ掛かって透き通った色だった。ひらひらと彼の足の先で揺れているのは、金魚の尾びれのように見えた。
    「朔」
    萩原の視線に気付いた室生が心底困ったといった顔を向けて来る。
    「どうしたの、それ」
    「朝起きたらこんなになってたんだ。それで司書に診てもらっていたんが、彼にもよく分からないようなんだ」
    そう言ってゆらゆら揺らして見せた。繊細な骨に張られたぬめりを帯びた赤い皮は、光をキラキラと照り返し、光沢のある薄絹のように優美に見せていた。
    「命に別状はないだろうとは言っていたよ。変化も急だったし、戻るのも突然かもしれないね。希望的観測だけれど」
    芥川が付け加える。
    「これじゃ庭づくりも出来ないし、猫を構いにも行けやしない」
    「そうだね。今の犀星だったら食べられてしまうかもね」
    不満顔の室生ににこにこと芥川が言った。
    「猫より先に、龍くんが煮付けにして食べちゃうんじゃないの」
    「朔くん、それはいい考えだ!」
    軽い一撃に芥川は花が咲くように顔を綻ばせた。思わぬ反応に萩原の顔が引き攣る。その顔のまま、語気荒く核心をぶつけた。
    「小説なんか書くからだよ」
    「やっぱりそれなのか」
    室生は重い溜息を吐いた。
    「とはいえそれは前からの事だし、何か心当たりでもあるの」
    「……あると言えばある」
    「ちょっと台詞をなぞってみただけだよ。もっともその時は僕が金魚の台詞だったけど」
    一体二人で何をやっていたのか、疑問ではあるが藪をつつくのは御免だ。
    「犀は詩人なんだから、小説は書かない方がいいよ」
    萩原は持論だけを伝えた。室生が苦い表情で押し黙る。三人の間に沈黙が落ちた中、芥川が口を開いた。
    「朔くんは、此処に来てから犀星の小説を読んだんだね」
    金魚の少女の話は、『萩原朔太郎』が読むことは決してなかった小説だ。彼がいなくなったあとに書かれたものなのだから。
     芥川の言葉に元気づけられたのか、室生の顔がパッと明るく染まる。
    「朔は昔から口ではそう言ってても、読んでいてくれたもんな!」
     寄り添う二人の暖かな、微笑ましいものに向けるかのような視線が痛い。なんでこんな目に遭っているのだろう。
    「龍くん、犀の煮つけは自分も半分もらうからね」
    と恨みがましい視線で釘を刺した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖👏❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    C7lE1o

    MOURNING推し作家さんのマシュマロに投げ込んだら素敵に仕上げて頂いて成仏した妄想

    成仏先↓
    【番外編】心の壁を壊すには、茨の本心を知るべきです | 琉 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17307253
    Edenの3人になにかに誘われても断る茨(一緒に帰りませんか、これ一緒に見ない?、ご飯食べにいこうetc)、それは自分が嫌われていると思っているからで、それを偶然会った弓弦に零すと歩み寄るのも大切、みたいな感じに諭され、ちょっとずつお誘いを受けるようになり、こういうのも悪くないかもな、と思っていたある日レッスンか何かで日和を怒らせてしまって、キツめのことを言われてしまい、やっぱり自分が好かれることなんてありえない、ちょっとでも好かれているかもなんて思った自分が馬鹿だった、と心の中に分厚い壁を築いてしまう、やっぱり駄目だった、俺なんかが好かれるわけないんだと弓弦に吐き出すと、少なくともここに一人おりますが、と言われてこのときばかりは素直に弓弦にお礼を言う茨(ここでくっつく?)、そして表向きはそれまでとは何も変わらないけどお誘いを再び断るようになり、Edenの3人もあれ、なんか距離遠くね?と気づき始めたころ、いつものように食事の誘いを断った茨が弓弦と一緒にご飯を食べているところを目撃、その二人の表情はとても穏やかで、言い合いをしている二人しか知らなかったEdenの3人は複雑な感情を持ち、Edenの3人が見ていることに気づいた弓弦(茨は気づいていない)がこれみよがしにイチャイチャ()するのでめちゃくちゃ嫉妬する、
    614