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    MandM_raka

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    MandM_raka

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    お題で頂いた分裂したDPのお話【スパデプ】

    「緊急事態って何?」
     緊急事態が起きたと言われてデッドプールのケイブに来てみれば、珍しく素顔の状態のデッドプール──ウェイドが真っ先に出迎えてくれた。
     室内だというのに厚ぼったいパーカーとスウェットを着ている彼は相変わらずフードを被っていて、今更僕相手に素顔を隠す必要なんてないのに、どうやらこの癖はいつまでも抜けないらしい。
     見た所五体満足だし、緊急事態には思えないなと思っていたけれど。これで下らない用事だったら力加減も出来ずに殴ってしまうかも。
    「流石の俺もあんまり事態を飲みこめてない」
    「はあ?」
    「ハイ、スパイディ~!」
     ウェイドが苦渋を飲むような表情で真剣に言うものだから、状況が分からない僕は首を傾げ──ようとした所で後ろから急に感じた重みに思わず息を飲んだ。
     背後から聞こえた声は聴きなれたデッドプールの物で、けれど僕の目の前にはウェイドが居て。
     混乱する頭で恐る恐る後ろを振り向けば、真っ赤なスーツに憎たらしい程に見慣れたマスクを被った男が僕に抱き着いていた。
    「え…、え?何、これ、誰?」
     余りの混乱に頭が上手く働かなくて語彙力も家出してしまった。この体になってから前以上に頭は良くなったけれど、この状況はどうにも飲みこむ事が出来ない。
     まさかデッドプールのスーツを誰かが着ているだけなのだろうかと思ったけど、鍛え上げられたウェイドの体に合うように作られたそのスーツを普通の人が着たらブカブカになるだろうそれは、しっかりと体にフィットしている。
     その上さっき聞いた声は紛れもなくデッドプールの物だ。
    「何かまあ、その。仕事で面倒事に巻き込まれた」
     仕事。彼の仕事なんて碌な物ではない。
     いや、これは職業の事を言っているのではなくて、依頼される内容の事だ。
     普通の人間なら手を余す所か命に関わるような事だって、ウェイドは気にする事もなく依頼を受ける。その分報酬は弾んでいるようだけど。
     僕も人の事は言えないけれど、ウェイドも大概運が良くはない。死なない彼にとっては死ぬ事は些細な問題らしいけど、それ以上の副産物があったりするのだ。
    「スパイディ、俺ちゃんの事心配してすぐ来てくれた?チョー嬉しい!リコッタパンケーキ食べていく?」
     背後から僕に抱き着いたままの彼──もういい、スーツを着ているからデッドプールと呼ぼう。デッドプールは声を弾ませながら僕の首元に頬ずりしてきた。
     この感じ、偽物とは思えない。
     偽物と思えないから問題だ。
     普段以上にテンションの高いデッドプールとは対照的に、ウェイドはソファに座ったままため息をついている。
     元々彼はスーツを着ているか否かでオンオフが凄いのだけど、こうも目の当たりにするとその差は顕著だ。
    「パンケーキとか言ってる場合じゃないでしょ。君もう少し危機感持った方がいいんじゃない?」
     人格の分裂だなんて早々起こるものではないし、起きて貰っては困る。
     僕には理解出来ない程に楽観的な脳を持っているデッドプールからすれば、焦るものではないのかもしれないけど。
     というかこの状況、緊急事態と呼ばれて来たはいいけれど僕に解決するのは難しいんじゃないだろうか。
     そもそも、あの連絡をしてきたのはどっちだったんだろう。
     呼び出しはメールだったから、どちらが呼び出したのかは分からない。何となくデッドプールじゃないかなって思うけど。
    「そもそも、この状況で僕に出来る事なんて無くない?どっちが呼び出したのか分からないけど」
    「俺じゃない」
     やっぱり。
     何となくだけど、ウェイドはこういう事は僕には隠したがりそうだ。そして、デッドプールがわざわざ僕を呼び出した理由はきっとろくでもない事だと思う。
     この状況を解決するために僕を呼んだわけではない事は何となく想像がついてしまうのが嫌だ。
     そろそろ抱き着いている腕を離させてデッドプールへと向き直ると、大の男が照れるリアクションをしているからげんなりと肩を落としてしまう。
    「どうせこういうのは時間経ったら解決するんだって。そういうモンなの」
    「じゃあ尚更僕が来た意味はないよね」
     そもそもどういう状況でこうなったかは分からないけど。仮に分かったとして解決できるわけもない。
     完全にお手上げの状況なのに、このケイブの中で一人だけ楽しそうなデッドプールが少し鬱陶しく感じた。ああ、これはいつもの事だった。
    「折角のこういうレアな状況なんだから、楽しまないと損じゃない?って思うワケ」
    「どうせろくでもない事だろ」
     間髪入れずに言えば、デッドプールは泣き真似をしながら顔を逸らした。
     何なんだ、今日は随分とリアクションが大袈裟だな。こっちの方には素の状態──ウェイドの人格が抜け落ちてるんだろうか。
     いつも以上に理性がぶっ飛んでいる気がする。
    「スパイディがヤッた事ない事しようと思ったのに。3Pとかどうせした事ないだろ?」
     ああ、ほらね。やっぱり。
     何となくこういう事言い出すんじゃないかって思ってた。
    「君さ、デッドプールとしての人格しか無いのか詳しくは知らないけど、普段の倍は理性が蒸発してない?」
     僕の嫌味なんて知った事ではないらしくて、デッドプールは完全に僕の事を無視だ。
     ウェイドはどうやらそういう気はないらしくて、ソファに座ったまま銃の手入れをしている。こういった姿は中々見ないから珍しい。
    「スパイディ興味無いの?折角俺ちゃんが二人居るのに?」
    「あっちの君はそういうテンションじゃなさそうだし、僕もヤる気が全く起きそうにもない」
     取り付く島も無い口ぶりで言ったのに、デッドプールは全然気にしていないようだ。
     普段からぶっ飛んでいるとは思っていたけれど、素の状態の彼が留守になるだけでここまで会話が出来なくなるとは思っていなかった。
     今日何度目か分からないため息を漏らして、どうにかして解決、とまではいかなくてもデッドプールを大人しくさせる方法は無いかと思案する。
     ウェブで簀巻きにして放置してもいいけれど、それでは問題を先延ばしにするだけだ。
     かと言ってこの状況でデッドプールの言う通りにセックスに興じるなんて事も出来る訳もない。それで満足して元に戻ってくれるのならいいけど、絶対そんな事はあり得ないし。
    「こういう時こそ楽しまないと損だろ。お堅いよな、ウェブズは」
    「一応参考までに聞くけど、どういう状況でこうなったの?」
     理性が普段よりも無いデッドプールとなんて会話が成り立つ訳がない。僕は早々に諦めてウェイドの方へと声を掛けた。
     こっちは同一人物とは思えない程に落ち着いて会話が出来るから、少しは参考になる話が聞けるかも。
    「あー、詳しくは言えないけど、研究施設でちょっと。仕事があって。そこで間抜けにも捕まって、変な部屋で実験されたらこうなった」
     人体実験をする時点でまともな研究施設とは思えない。どういった実験をしている施設なのかは分からないけど、ウェイドもプロなので仕事の詳細は絶対に話す事は無い事はわかっているからそれ以上の言及はやめた。
     どういった実験なのか気になるけれど、人体実験なんて拷問のような物だろうし、詳しく覚えていない可能性だって高い。
     おそらく、それの内容を知った所でまたそこの研究施設に行かないとどうにも出来ないだろう。
     諦め半分、呆れ半分でため息が口から出てしまう。
     これで本当に時間経過で治るのならばいいけど、このままだったらどうするつもりなんだ。
     それなのに当の本人である二人は焦っている様子はないし。多分ウェイドは諦めているんだろうけど、デッドプールに関しては完全にこの状況を楽しんでる。
    「君たち二人って感覚は共有されてるの?」
    「試してない」
     万が一痛覚が共有されているのなら、二人が同時に大怪我──または死ぬ事があれば普段彼が味わっている倍の苦痛を味わうのだろう。
     別行動をさせるにしても、感覚が共有されているのなら不便な事もあるだろうし。
    「ちょっと試そう。万が一に備えて」
     そう断りを入れてから僕の心が痛まないという理由でデッドプールの二の腕辺りを小突いた。小突いたといっても、一般人の力ではないけれど。
    「「いてっ」」
     同時に発せられた言葉は完全にシンクロしていたから、どうやら痛覚の共有はあるらしい。
    「痛覚は共有されてるんだね。それならお互いに無理しないようにしないと、普段の君なら死なない怪我でも、二人別々に怪我をしたらショック死する事だってあり得る」
    「俺ちゃん家でじっとしてるのは性に合わないんだけど」
    「ゲームでもやって時間を潰せば?」
     不満を言ってくるデッドプールを適当に嗜めてから思ったけれど、意外とウェイドとデッドプールは喧嘩をしない。
     僕がスパイダーマンとピーター・パーカーとして分裂する事があったら絶対に喧嘩すると思うけどね。
     意外とウェイドの方が我が強くないのかな。
    「ねぇねぇ、スパイディ」
     何か思いついたようににんまりと笑うデッドプールに嫌な予感しかしない。絶対にさっきよりも禄でもない事だ。
     無視したいけれど、そうもいかなそうだから渋々と続きを促すように視線を向けた。
    「痛覚が共有されるって事は、快感も共有されるよな?つまりスパイディのセックスが普段の倍気持ちいいって事じゃね?」
    「言うと思った」
    「ワオ、俺ちゃんの考えが分かるなんてスパイディったら俺ちゃんの事好きなんじゃない?」
     好きじゃなかったらセックスなんてしてないんだけど。って言葉は飲みこんだ。
     今のこの状況で言うのは何か腹が立つから。
    「大体、倍にならなくたって君いつも死ぬ死ぬ言ってるよね。本当に死ぬんじゃないの」
     君は死なないけど。
    「でも興味あるじゃん」
    「ウェイドはそうでもないんじゃない」
     セックスに乗り気なのはいつもデッドプールの彼だ。ウェイドは余り気乗りじゃないというか、あまり素顔でセックスはしない。
     もう素顔なんて気にしていない事はわかっているだろうけれど、それでも顔を隠したいらしい彼はいつもマスクを手放さないのだ。
    「ウェブズ」
     デッドプールよりも幾分低い声で僕の事を呼ぶのはウェイドだ。
     彼の方へ視線を向ければ、さっきまでソファから動かなかったウェイドが僕の間近まで来ていた。
     長身二人に挟まれるのは何だか落ち着かない。
    「俺だってソイツなんだから、セックスが嫌な訳じゃない」
     そう言ってマスクをまくり上げられてウェイドに唇を奪われたタイミングで、背後からデッドプールに腕を掴まれる。
     別に彼の力位振り払う事は出来るけれど、なんとなくそれも出来ないままされるがままにしていれば僕を挟む二人が同時に楽しそうに笑い声を漏らした。
    「蜘蛛を捕食出来るなんて滅多にないから楽しみだ」
     そう言って目を細めるウェイドと目が合う。楽しそうなウェイドを見るのは悪くはないけれど、蜘蛛が大人しく捕食されるだけだなんて思わないで貰いたい。
     これから食い散らかされるのはあくまで君たちだ。
     今だけはつかの間の優位を味わえばいいさ、どうせ後で泣きを見る事になるんだから。
    「ベッドで死ぬのだけはやめてよね」
     そう言ってから掴まれていない手でマスクを取り払って、目の前のウェイドの唇へと噛み付いた。
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    REHABILIお題で頂いた分裂したDPのお話【スパデプ】「緊急事態って何?」
     緊急事態が起きたと言われてデッドプールのケイブに来てみれば、珍しく素顔の状態のデッドプール──ウェイドが真っ先に出迎えてくれた。
     室内だというのに厚ぼったいパーカーとスウェットを着ている彼は相変わらずフードを被っていて、今更僕相手に素顔を隠す必要なんてないのに、どうやらこの癖はいつまでも抜けないらしい。
     見た所五体満足だし、緊急事態には思えないなと思っていたけれど。これで下らない用事だったら力加減も出来ずに殴ってしまうかも。
    「流石の俺もあんまり事態を飲みこめてない」
    「はあ?」
    「ハイ、スパイディ~!」
     ウェイドが苦渋を飲むような表情で真剣に言うものだから、状況が分からない僕は首を傾げ──ようとした所で後ろから急に感じた重みに思わず息を飲んだ。
     背後から聞こえた声は聴きなれたデッドプールの物で、けれど僕の目の前にはウェイドが居て。
     混乱する頭で恐る恐る後ろを振り向けば、真っ赤なスーツに憎たらしい程に見慣れたマスクを被った男が僕に抱き着いていた。
    「え…、え?何、これ、誰?」
     余りの混乱に頭が上手く働かなくて語彙力も家出してしまった。この体になってか 4646

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    REHABILIお題で頂いた糸にぶら下がってキスする二人【スパデプ】「君また腕無くなってるの?」
     騒ぎがあったビルまで来てみれば、屋上でデッドプールが腕を失くしている状態で寝転がっているのが視界に入る。
     普通の人間なら一大事なその状況も彼ならばいつもの事になっているのだから、慣れとは恐ろしい。
     意識はあるのかと近付いてみれば、どうやら意識はあるらしく無事な右腕を軽く上げられた。
    「遅かったな、ウェブズ。殺しはしてないから安心しろよ」
    「そういう問題ではないけどね」
     どうせなら僕の庭で仕事をしてほしくない。
     殺しをしないと僕に言う彼の言葉は九割方守られていて、今までどうしてもそうしなければならない時以外はニューヨークでは殺しをしていない。そのどうしてもそうしなければならない事も無ければいいのだけど。
     彼の仕事柄どうにもそうはいかない時もあるようだし、何よりも彼が逆恨みされた時は手加減をしてもそうはならないらしい。
     もう彼の仕事について口を出すことはやめるようにしているけれど、どうしても何かを言いたくなってしまうのは仕方がない事だと思う。
    「俺ちゃんの可愛い左腕どこいっちまったんだろ」
    「さあね、少なくともここには無いよ」
     よく体の一部とお 4789

    MandM_raka

    REHABILIお題で頂いた蜘蛛はカフェインで酔うらしいスパデプ蜘蛛にカフェインを与えると酔っぱらうらしい。
     詳細はネットの情報しかないがこれはどうやら有名な話らしくて、あくまで生物的な意味の蜘蛛にカフェインを与えるとドラッグよりも酔っぱらうって話を見て興味が湧いた。
     そういえば愛しのヒーローはコーヒーの類を飲んでいるのは余り見た事が無いかもしれない。
     ネットで見た情報では蜘蛛が巣を作る前にドラッグを与えたよりも、カフェインを与えた方がぐしゃぐしゃな巣を作っている。人間にとってはカフェインは脅威ともいえる程の成分ではないが、自然界を生きる昆虫には害になるんだろう。
     確かにカフェインを取るなんて彼らが普通に生きていれば早々無いだろう。
     さて、此処までで今回の俺ちゃんが何をしようか分かったと思う。
     スパイディは人間だけど、その効果は表れるのかって興味が湧いた。酒を飲んでいるのもあまり見ない彼が酔っぱらっているのは見てみたい。
     いつも崇高な精神を語ってくるあの口がどう変わるのか、興味を持たない方がおかしいと思う。
    「でも普通の量じゃ効果出ないよな」
     コーヒーを飲んでいるのは余り見ないが、コーラはよく飲んでいる。コーラにも当然カフェインは入 5994

    MandM_raka

    TRAININGリルデプちゃんと初めての邂逅をするデプちゃん【スパデプ】『ハイ、今回の話は今までのあらすじなんて存在しない。突発的に始まるから覚悟しろよ。一応前提としては俺ちゃんの事が本当は好きなスパイディと、スパイディがめっちゃ好きだけど関係が壊れるのが嫌だから何も言えない健気な俺ちゃんって感じだ。うーん、これだけ聞いて本当に読みたい奴居るの?いかにもインターネットにこういう話をアップしてるファンガールが考えそうな内容だよな』
     俺ちゃんは今とっても疲れているかもしれない。テーブルの上でグラスに寄りかかりながらそう言ってくる小さい謎の生き物は俺ちゃんに見た目だけなら似ているかも。
     何だこれ。どういう仕組みなんだ?誰かの悪戯だろうか。
     そう思って持ち上げてみたら非難するようにピーピー悲鳴を上げていたけど、取り合えず電池か何か入っていないのか探してみる。
     幻覚にしてはしっかり触れるし、本当どういう仕組みになってるんだか意味が分からん。
     意味が分からないのはこの生き物が言っていた謎の言葉も解せない。まあ、後半部分については自分の事だから渋々認めるとして、スパイディが俺ちゃんの事を好きだなんて事は絶対にありえない。どれくらいありえないって、蜘蛛に噛まれて 6844

    MandM_raka

    MOURNING初めてのモブ霊書きかけ供養大人になってから反省する事は山ほどある。
     それは子供には言えないような失敗がどんどんと増えていく。俺が子供の頃は大人は失敗しないものだなんて思っていたが、実際は大人は失敗しても子供に言わないだけで、それを隠しているなり嘘で誤魔化しているだけなのだ。
     ああ、大人になるってのは本当に面倒だ。俺は昔から要領も良かったしどんな事だって適当に何とかしてきた。実際の所、そこまで大きな挫折ってのは味わったことがないかもしれない。
     自分でも思うが俺は何とも悪運が良いのだから。
     話は冒頭に戻る。大人になってから失敗する子供にも言えない失敗の代表、それは酒だ。昨日モブが成人になった記念に俺の奢りで飲もうって誘って、居酒屋で飯食いながら飲んでたのは覚えている。
     そこでベロベロに酔っぱらってモブに迷惑かけまくったとかならまだいい。今回の失敗はそんな事よりも最悪の状況だ。
     まず目が覚めて俺の視界に入ったのは見慣れない天井だ。その上裸だったんだから何をやってしまったかなんてわかりきっている。何ともありがちな展開ではあるが、実際に自分がこの立場になってみて分かったがめちゃくちゃにパニくる。
     酒飲んだ勢 9550

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