感謝の言葉「お前は家族だからな、もちろん」
エリーが言った言葉に、先程の苦しかった胸の何かがすぅと消えて、嬉しくて笑ったが、同時に涙が溢れてきた。ポタポタ、と涙は落ちて床を少しずつ濡らす。泣くつもりなどなかった、自分の涙は、あの日雨と共に流れたはずなのに。それほどに、エリーの言葉は嬉しかった、星と同じ事を言ってくれたから。
「泣かなくていいのよ〜」
「……」
血の繋がりがないのは当たり前なのに、今を生きているツクリテと作り物のニジゲンは違うと言うのに、こんな自分を家族と呼んでくれた。嘘偽りなどない言葉、まるで当たり前だと言わんばかりに聞こえる。星が自分の事をあの二人ではなく、エリーに託した理由がわかる。
「案外表情出すね。あんまり出さないかと思ってたけど」
「……俺も驚いてる」
涙を拭うように目を擦る、エリーの仕事を邪魔してしまったと謝り、部屋を出た。その時ちょうど、エリーとよく居るニジゲン───サクリの姿が見えた。認可のあのニジゲンによく似ていると思っていたら、どうやら同一人物らしい。ジュードはサクリを引き止めた。
「……なぁ」
「……なんだよ」
サクリはこちらを向いてじっと見てくる。居るだけでどこか圧を感じたが、ジュードは真っ直ぐ顔を見て話す。
「……星の手紙をエリーに届けてくれてありがとう」
あの日、病室に来たエリーの手には手紙が握られていた。それは星がエリーに死ぬ前に託した手紙、それを届けてくれたのは、どうやら目の前にいるサクリだという。認可だった星が無免であるエリーを気にかけていたぐらいだ、どこかでなにかしら話した事があったのだろう。
サクリが星の事をどう思っているかは知らない。けれど、最期の願いを叶えてくれた事に関しては、感謝しかない。サクリはジュードの言葉にそっぽを向く。
「なんの事か知らねぇな」
そう言って影の中に消えてしまった。サクリの言葉に思わず微笑む、予想通りの反応だった、なんて思いながら。
「……ありがとう」
そう呟いた。