お酒と、親友の本音 たまたま灰野琥珀、江波戸創、御手洗鈴鹿の三人の休みが重なった日があった。しかも一日だけではない、連日重なっており、創が三人で泊まらないか、と提案した。問題は誰の家に泊まるのか、となり話し合いの結果、ニジゲン達と住んでいて比較的二人より広めのマンションを借りて暮らしている琥珀の家になった。当日はご馳走を作る、と琥珀は嬉しそうに二人に言ってその日は終えた。
泊まり当日、一緒に暮らしている琥珀のニジゲンは、たまにはゆっくりしてと琥珀の知り合いのツクリテの所に遊びに行った。気を使われてしまって、泊まりが終わったら皆の好きなものでも作るか、と思いつつ料理をリビングへと運ぶ。一応酒も用意したが、酒だけではなくお茶も用意して。
「琥珀の飯いつ見てもうまそー」
「なんかわるいな、こんなに」
「別にいい、作るの好きだから」
創と鈴鹿の言葉を聞いて笑う琥珀。作る自体は好きだし、相手が美味しそうに食べる顔を見るのも嬉しいのだ。数少ない琥珀の特技でもあった。創が早速酒を注いでコップを片手に口を開く。
「んじゃ! 二人ともお疲れ様!」
「おつかれ」
「お疲れ様」
三人でコップをあてて乾杯をし、お互いに飲む。琥珀は酒を飲めないのでお茶を飲みつつ、料理をつまむ。もっぱらの話題はお互いの作品の話、愚痴、原稿が進まない等……話が進むということは、料理や酒が進む。それで時間もすぎる、どのくらい時間が過ぎただろうか、最初にうつら、うつらと眠たそうにしていたのは琥珀だった。
食べた皿を下げたり洗ったり、一緒に手伝ったりしていたからだろうか、まだ酒を飲んでいる創や起きている鈴鹿と比例に、琥珀は眠たそうにしていた。
「琥珀、眠いか?」
「んー……」
「あちゃ、寝そうだなこれ」
創が琥珀の頬をつんつん、と指でつつく。最初はなんとか受け答え出来ていた琥珀だったが、段々と反応が鈍くなっていた。これはそろそろ寝かせた方がいい、と創が思っていると、隣にいた鈴鹿がそっと琥珀を姫抱きした。
「琥珀の部屋分かる?」
「あ、部屋出て二番目の……」
「ん」
鈴鹿は短く返事をすると、リビングから出てドアノブを捻る。鈴鹿から抱き抱えられたにも関わらず、琥珀は起きる気配がない。すぅ、と静かな寝息をたてて寝てしまっていた。部屋に入り、ベッドに優しく横にさせて寝かせると、鈴鹿は愛おしそうに琥珀の頭を撫でた後、部屋から出ようとすると扉の前に創がいた。どうやら心配してついてきていたらしいが、表情はどこか呆れていた。
「お前さ、そこまで琥珀の事好きなのに、なんで告白しないわけ?」
「……好きだから告白しねぇの」
「……」
鈴鹿は琥珀を見る。その目が、愛おしそうに、誰が見ても好きだとわかる。そして、創はそのまま口を開く。
「告白するしないは鈴鹿の勝手だけどさ、琥珀、友好関係広いし、琥珀のこと好きな人でてくるかもしれない。もしかしたらその中で付き合う人が出てくるかもな。その時お前、後悔しないの? 心からおめでとうって言えるわけ?」
黙ったままの鈴鹿をみて、創は少し睨みつつ、でも悲しそうに見る。
「俺は心からは言えないよ、お前の気持ち知ってるから」
鈴鹿の気持ちは知っていた、高校時代から。最近やっと自覚したというのに、創からしたら、琥珀の隣には鈴鹿しか居ないと思っていたのだ。今琥珀は好きな人は居ないとは思っている、けど、これから先出来るかもしれない。それが鈴鹿意外だったら。
とても嫌だな、と創は目を閉じる。