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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    エガキナ

    すずこは
    よその子さんお借りしてます

    ##すずこは

    貴方と見る紅葉は「琥珀、今度の休日予定入ってるか?」
    「え?」
     隣でコーヒーを飲んでいた鈴鹿が琥珀にそう言った。琥珀はちょっと待ってて、と一言言ってスケジュール帳を開く。鈴鹿が言った休日には、珍しく何も予定が入ってなかった。
    「大丈夫。入ってない」
    「あのさ、紅葉が名物の旅館があるんだ。行かないか? 泊まりで。そこの旅館、一組限定の所だから、ゆっくり出来ると思うし」
    「紅葉? 行きたいな」
     丁度この時期は紅葉が綺麗で、テレビでも紅葉をテーマにした特集が組まれていた。行きたいとは思っていたが、締切や人の多さで諦めていたが、鈴鹿の言う旅館ならゆっくり出来そうで琥珀は年甲斐もなくはしゃぎそうになった。
    「……もしかして旅館予約してくれたのか?」
    「したっていうか……丁度空いてるからおいでって。……俺の恋人に会ってみたいと」
    「鈴鹿の知り合いのところなのか。……」
     琥珀は少し恥ずかしくなったのか、黙ってしまって照れていた。鈴鹿がお世話になった人からは、二人の仲を応援されており、それに照れてしまうのだ。鈴鹿の口ぶりから、相当人気な旅館なのだろう。
     これほど紅葉特集で賑わっていて、ちょうど空いてるはあまりにもタイミングが良すぎる。それにもかかわらず、自分たちのために空けてくれたのを考えると、お礼の気持ちでも持ってきた方がいいかもしれない、と琥珀は思いつつ鈴鹿の手を握る。
    「最近忙しかったから、鈴鹿と出かけられるの嬉しいな」
    「……俺も」
     鈴鹿も少し微笑んで琥珀の手を握り返した。

     休日、空は真っ青な晴れ模様となっていて、絶好の紅葉狩り日和だった。琥珀が泊まりに行く間、フレイ達は創の所に泊まることになっており、フレイ達からも楽しんできて、と笑って見送られた。リヒトから紅葉の葉っぱが欲しいと言われていたため、綺麗なのを数枚探しておこうと考えつつ、鈴鹿と歩く。
    「晴れてよかった」
    「もう少しで旅館に着くから」
     鈴鹿がそう言いつつ、少し表通りから入った小道へと歩いていく。賑やかな通りとは違い、静かで、どこか空気も冷たく感じた。
     石畳の道を歩いて、しばらくすると趣のある建物が見えてきた。横には旅館の名前が書いてある看板があり、名前からして目的の旅館だった。紅葉が有名と言うだけあり、二人の目に最初に入る赤が見事だった。
    「綺麗だな……」
    「露天風呂の所にもあるから、入るか」
     鈴鹿がそう言うと、玄関で着物を着た女性が経っていた、八十代を過ぎているであろう女性は、ピン、と背筋を伸ばしており、綺麗な白髪はキラキラと光ってるように見えた。佇まいから凛とした何かを感じ取れた。恐らく女将だろうその女性は、二人の顔を見るとにこやかに笑い、お辞儀をする。
    「ようこそお越しいただきました。……鈴鹿くん、大きくなったわねぇ」
    「お久しぶりです、今日はありがとうございました」
    「鈴鹿くん、こんな小さかったのにねぇ。……さして貴方様が……」
    「あ、はい。……灰野琥珀、です」
     琥珀は少し緊張しつつ、挨拶をする。世間話をしながら二人は旅館内に入っていく。中に入ると木の香りが鼻に入り、女将に案内されながら琥珀は周りを見ていた。一組限定とだけあり、当たり前だが騒がしくもなく静かで落ち着いており、この雰囲気で何か短編が書けそうだ、と周りを眺めていると、今回二人が宿泊する部屋へと案内された。中に入ると、目に入るのは大きな窓から見える綺麗な紅葉だった。
    「綺麗だな……」
     思わず子供のように窓に駆け寄った琥珀だが、女将がニコニコと見ているのを見て、恥ずかしくて顔を伏せてしまう。女将からは温泉の時間、食事の時間など教えられ、部屋から出ていった。まだ夕食まで時間があったため、鈴鹿と温泉に入ることになった。
     温泉までの廊下を歩いている時に、琥珀は鈴鹿にお礼を言った。突然お礼を言われた鈴鹿はどうした? と言わんばかりの顔をして琥珀を見る。
    「この旅館選んでくれたの、相手さんが言ってくれたのもあるだろうけど、傷を気にしないで温泉に入れるの、嬉しいなって思って。そこ気にしてくれたのかなって思ったからさ」
     琥珀の腕には幼少期に母親から傷つけられた跡があった。それだけではなく、認可としての仕事で怪我することが多く、お世辞にも綺麗な体とは言えなかった。鈴鹿は綺麗だから、と何度も言ってくれるが、一度気にしてしまうと頭では分かっていても、中々こう、と思えなかった。ただでさえ、腕の傷は何度見ても痛々しいし、見ていて気持ちの良いものでは無い。学生時代でさえ、人と被らないようにしたほどだ。
     こうした温泉など、入るのも気が引けており、入るとしても人がいないであろう時間帯でしか入ることは無い。だからこそ、明るい時間に入れるのが嬉しかった。
    「……まぁー……、琥珀がのんびり出来たら、もあったけど。最近忙しかったし、琥珀とゆっくりしたかったから」
    「……ありがとう」

     温泉に入ると、やはり紅葉が目に入った。落ちた葉が水面に浮かび、どこか幻想的にも見える。湯の温度も丁度よく、疲れが解れていくようだった。
    「気持ちいい……」
    「ここの温泉、小さい頃から入ってたけど、ここが一番だなって思う」
    「俺もそんな気がした」
     笑いつつ琥珀はチラリ、と鈴鹿を見る。何度も鈴鹿の裸は見たことあるのだが、やはり直視するとどこか照れてしまう。カッコイイな、なんて思ってしまうのだ。
    「……琥珀顔赤いけどのぼせたか?」
    「……だ、大丈夫」
     見惚れてたから、なんて言えずに琥珀は口元近くまで湯に浸かる。
     そんなことをしていたからか、温泉から出る時には少しだけ頭がぼぅ、としてしまっていた。鈴鹿が心配して飲み物を持ってきてくれ、申し訳なさがありつつも口に含む。飲み物を飲んだからか少し落ち着いた後、浴衣に着替えた。以前、鈴鹿から浴衣をプレゼントされた時に着付け方を教わっていたため、難なく着付けた。
     琥珀が着付けた時には鈴鹿は終わっており、琥珀を待っていた。鈴鹿の和装姿は何度かみたことがあったが、やっぱり似合うななんて思いつつ一緒に歩く。歩いている時、そっと鈴鹿が手を繋いできた。
    「俺らしかいないし」
     そう一言言って。それを聞いた琥珀はそっと握り返した。温泉に入ったばかりからか、手は暖かく、職業柄か、タコができているのが分かる。自分の一番好きな手だ、なんて微笑んで。
     豪華な料理を食べたあと、部屋に戻ると布団がひかれていた。布団がひいてあるのはいいのだが、ピッタリと布団が二組くっついて置かれており、琥珀は思わず顔を赤くした。
    「ははっ、あの人、気を使ったな」
    「あー……うん、そうだな」
    「知られてるのに恥ずかしいのか?」
    「……こう、改めてされると恥ずかしい」
     琥珀がそう呟くと、鈴鹿は可愛い、と言ったのが耳に入る。それに何も返せずに誤魔化すように広縁へと行く。どうやら外は紅葉が見えるように少しライトアップされており、窓から見える夜空と紅葉は、昼間見た時とまた違った綺麗さを見せていた。置かれているソファに座って窓を見ると、鈴鹿もソファを移動させて、琥珀の隣に座る。
    「夜に見る紅葉も綺麗だな」
    「そうだな」
     そう言うと、鈴鹿が琥珀の頬に手を添えたかと思ったら、優しくキスをされた。
    「んっ……鈴鹿?」
    「……やっぱ琥珀の方が綺麗だなって思って」
    「……き、綺麗じゃ……」
    「どんな宝石でも夜景でも、琥珀の方が綺麗だから」
    「み、耳元で言うなって……」
     機嫌がいいからか、琥珀の耳たぶを少し甘噛みしながら体を撫で始めた。それにかぁ、と顔を真っ赤にしながら鈴鹿に体を預けるように身を委ねてしまう。恥ずかしい、鈴鹿の言う言葉もくすぐったく、手つきも優しくて、まるで傷をつけないように触るのだ。その全部が鈴鹿が琥珀に向けている愛情なんだ、と身をもって実感しているのだが、如何せん何度されても慣れることがない。このまま倒れてしまいそうだ、と琥珀は恥ずかしそうに顔を埋める。
    「琥珀、可愛い」
    「……鈴鹿もかっこいい、よ。……これからも隣にいたい」
    「もちろん」
     そう言ったあと、もう一回いいか? と優しく唇を撫でられた。それに答えるように、今度は琥珀から鈴鹿にキスをした。
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