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    ナナシ/ムメイ

    @refuge774 @mumei_774
    ゲッター(漫画版と東映版中心/竜隼)書いて一旦投げる場所に困ったのでここに。推敲したのはpixiv(https://www.pixiv.net/users/1604747)に。■→推敲格納済
    なにかあればましまろにどうぞ↓
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    ナナシ/ムメイ

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    漫画サーガ版。G魔王鬼絡みだったり真の後だったり。他の詰まってる時に手癖で書いたらどれも遠距離恋愛(恋愛じゃない)みたいに……。
    「魔王鬼が彼らのジュヴナイルの終わりだったのではないか」と聞いた時に「早乙女研究所崩壊は彼らのモラトリアムの終わりだったのではないか」と考えたことから。

    ■ 涙はいつか 何事も無ければ随分静かな奴だった。いっそ拍子抜けするほど普通で。戦ってる時の冷酷さが嘘みたいに。皆が談笑するのをいつものスカした微笑みで穏やかに見守っているような。
     親か兄みたいなそれにたまに腹が立つ事もあった。

     俺たちより一歩早く大人になるしか、大人ぶるしかなかったのかもしれない、と思ったのはしばらく一緒に過ごしてからだった。

     容姿にも身体能力にも恵まれたIQ300の天才児。
     もちろんそれがわかり、そう伸ばされる程に裕福な家庭だったらしいとは何も聞かずとも知れる。金が無かったらどうなるか、俺はよく知ってるし。
     すんなりと早乙女博士の助手のような位置に収まり白衣を着て混ざれるくらいに、学を収め知識も持ちえた。
     神様って奴がいるなら不公平にも程がある。それをまざまざ思わせるような奴で、それでいながら何故だか不思議と羨ましくはならなかった。

    「お前、本当になんでもできるよなぁ」
    「……できることは確かにあるが、世の中どうにもならないことの方が余程多いさ」

     半ば呆れながら聞いた俺の言葉に返ってきたのはやるせなさを隠し切れていない苦笑だった。あれだけ色々できて持っていて、それでもそんな顔でそう言うならそういうもんかと思った。
     できる事と実際やれる事とやりたい事とやらなきゃいけない事が同じとは限らんもんさ、なんて言われてもその時は全然ピンとは来なかった。
     ……そういえばこいつは何か欲しがる事も無かったし、見返りを求めた事もなかった。大体の物は手に入るからか、と最初は思い、後からそうかもしれないけどそうじゃないんだろうと思った。
     あいつからはむしろ持たされた者の苦労とかなんかそんな物ばかり感じた。
     自分にできるからやる、と言うが、本当はやりたくない事までやれるのも問題で。しかもしんどくない訳ないのに平気な面してられるのなんかいっそ厄介で。
     世の中上手くいかねえもんだ。

    「やりたくねえならやらなくてもよかねえか」
    「皆やりたくないが誰かがやらなきゃならん事だからやってんだろ」
    「貧乏くじ自分で引きたがるとか、自分虐めでも好きなのかよ」
    「うるせえよ」

     そんな事を話したな、と思い出す。
     バラバラになった元人間の機械の残骸の前で。
     あいつ自身が泣きながらとどめを刺した亡骸にすらならないガラクタの山の前で。
     俯き歯を食いしばって静かに泣いている背中を見ながら。

     神様とか運命とかいうのは残酷だ。こいつに与えるだけ与えておいて、本当に欲しいものはくれてやらないんだ。性格が滅茶苦茶悪ぃに違いない。
     ……その片棒を担いだのは俺か。
     従兄弟で、仲間で、友人だったと絞り出すようなモニター越しの声は震えていた。最初にこいつらを引き離し無理矢理に連れ去って、今、こうして惨い青春の終わりを迎えさせたのは俺だった。
     いっそ俺のせいだと罵ってくれりゃマシだったのかもしれない。お前は自分のせいかもしれないとしか言わなかった。それは本当にお前だけのせいなんだろうか。あの瞬間、確かに俺もお前と同じ操縦桿を握っていたんだ。胸が重くて痛い。

     また大人になるしかなくなったあいつの背中は、なんだか寂しくて。
     置いてくんじゃねえよと思う自分の不安のまま、引き止めるように、追い付くように、隣に並んで冷たい手を握るくらいしかできなかった。
     一瞬びくりと跳ねた手のひらは震えるばっかりで、握り返すのを恐れてるみたいで、全部気付かないフリして強く握った。

     お前をこんな地獄に引きずり込んだのは、俺なんだ。
     謝る気は無い、から。
     せめて隣にいさせろよ。


     ――あいつがああして泣くのを見たのは、あれが最後だった。


    =====


     感情も豊かにころころとよく表情が変わる奴だった。素朴で愚直と言ってもいいだろうその様は、平時こそ明るいと言えたが戦ってる最中などには何もかも燃やし尽くす太陽にも似て苛烈だった。
     あまりにも真っ直ぐすぎるそれは自分には疎ましく感じる時すらあった。

     何故そんな風にいられるのか、と言えばそれは生来のものでは確かにあったのだろう。

    「空手をやっていた」という話から、なんでもない事のようにあいつは言った。
    「と言うより、俺にはそれしか無かったからなぁ」
     聞けば幼い頃から父親と修行に明け暮れていたという。言葉の端々からは経済状況も良くはなかったのだろうともしれた。道場でもあった家での厳しい修行の話は自分には実感が湧くはずもなく、目を瞬かせながら黙って聞いていることしかできなかった。
     腫れた手を塩水に浸しての砂箱突きやら野犬と戦わされたやら、スパルタにも程があったとしれる教育方針には眉をひそめてしまいそうにもなり、しかしそれでも父親になんのしがらみや後暗い感情も見せず「親父は不器用なだけで俺の事を思ってはいたんだぜ、良い思い出もぼちぼちあるしよ」と、そんな風に笑いながら朗らかに話せる事が理解しがたかった。その父親をも失い、天涯孤独の身となって、それでもそういられる事が眩しかった。

    「……なんも言わねえんだな、お前」
    「なにが」
    「大概こういう話すっと、みんな『可哀想』だの『大変だったね』だのなんだの言うからよ」
    「……俺にはそういう経験は無いからお前の気持ちはわからないし、上から目線になってるだろう何かを言われたくもないだろう」
    「真面目だなぁ、お前」
    「……俺ならお前のようにいられなかっただろう。未来を信じることすら忘れていたかもしれない。
     尊敬するよ」

     どう返せばいいのか悩んだ末に出たのはそんな短い言葉で、自分の不甲斐なさを感じていれば、あいつはただでさえ大きな目を一瞬丸くして、照れくさそうにはにかみながら頭をかいた。そして頭の後ろで手を組んで明るく笑った。

    「未来くらい信じてなきゃ、楽しく暮らしてらんねぇだろ」

     ――結局、お前の根底はそういうところにあったのだろう。
     いっそ無責任なほどに根拠の無い未来への希望。しかしそれは明日も見えない日々の中で何より輝いていた。
     お前は同じ場所で明日より遠くの場所を見て、俺は昨日までの日々と共に今を見ていた。
     ……それが、明確になっただけと言えばきっとそうなのだ。そして、それが運命に抗うのか受け入れるのかの選択となり、互いにひとりで戦う事になったという、きっとただそれだけだ。
     ……あのコクピットでお前は何を見たのだろうか。あのお前がそう言うほどに、これは危険なのだろうとは思う。それでも。
     誰もいない格納庫で、ひとり真ゲッターの封印作業を進めながら思い出すことは取り留めもない。
     早乙女博士が去り、自分達でそれに向き合い決める時だったのだ。
     手が止まる。ここで過ごした五年あまりの時間は、自分には大きすぎた。不意に喉元まで迫り目の奥を痛める熱いものを飲みくだし、震えそうになる息と滲みそうになる視界を深呼吸と瞬きでやり過ごそうとする。

     なにもかも既に去った。
     それでも、戦う事を決めた。
     去っていったもの達のために。
     この先、隣には自分の感情を表してくれていたようなお前はいない。もう共にあの戦場を駆けることも無い……無ければ、良いと思う。

     ああ、ダメだな。結局俺は強がってばかりの弱い生き物なんだろう。お前のようにいつかを信じて別れの最後まで笑っていられただろうか。
     これを最後にして、涙は、お前に預けよう。

     俯いた歪んだ視界の中、コンソールにぽつりと水滴が流れて、
     指先まで痛むような喪失感に、自分はひとりだと、初めて知った。

     抗う事と受け入れる事で異なっていても、同じ運命の上にいるなら。全て終わって、またいつか、お前と笑い合える日が来るのを信じていたい。

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    ナナシ/ムメイ

    DOODLEアイサガ軸のチェンゲ竜隼。バレンタインとかホワイトデーとかの時期を盛大に逃したけど今出さないと完全に忘れるだろうので。
    適当に色々ぼかしてあるので、「アイサガ隼人の好物はエネルギーバー設定」だけ知ってればチェンゲで読めると思います。(そもそもチェンゲ本編は再会してから時間無さすぎでこんな話やれるはずないのは置いといて)
    好きにしたいだけ今日は元の世界で言うところのバレンタインデーだかなんだか、らしい。
    そんな習慣がこっちにもあるのかと不思議になったが、恋人やら家族やらへの感謝の日みたいなもんがあるって事は、誰かに感謝とか好意を伝えたい人間がそれなりにいたって事だろうし、悪くねぇと思う。

    女からチヤホヤされたいか、と言われれば、性別どうのじゃなく好意を貰えばそりゃ嬉しい。が、好意のフリだけしたご機嫌取りだの媚びだのは昔から遠慮願ってたくらいには興味がねえし、いっそ煩わしい。口にこそ滅多にしねえが。
    もし、愛情の形とか貰えるなら、大事に思う相手からだけで良いし、なんなら貰うより送る方が性に合ってる――それが誰か聞かれたら困るが。

    コートのポケットに突っ込んだままのエネルギーバーを思い出して軽く眉を顰める。
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    ナナシ/ムメイ

    DOODLE1本目→寒すぎて五半をくっ付けたかった。(動機に邪念しかないがまた銀婚式夫婦)
    白狐の毛皮は秋野さんが前に書いたネタから拾いました。手入れすれば長持ちするんだそうで。
    羽織は戦国時代からとか調べはしたけどなんか違ってるかもしれない。

    2本目→でっかーい五右衛門がちっちゃな柘植櫛摘まんでにこにこ半蔵の髪すいてたら可愛いなって

    (言葉遣いは元が割と現代風混じってラフなので細かくやってません)
    ■ 冬の五半╱ぬばたまの動物というのは人が思うより頭が良い。
    息も白む冬の最中、いつの間にやらするりと入り込んだ猫が書き物机の隣に置いた火鉢に背を着け丸まり、ごろごろと喉を鳴らしていることなどもままある。

    しかしまあ、逆に時折、人であっても動物より頭がよろしくないのではないか、と思う時もある。
    半蔵は暫し席を立った間にどこから乗り込んで来たやら、火鉢の傍で身を縮めていたそれに溜息付きつつ呼びかけた。

    「……五右衛門」
    「なんだァ?」
    「冬の間は山越えが危のうてかなわぬから、滅多に来るなと言うたじゃろう」
    熊かと思うて背筋が冷えたわ、と半蔵は帯に忍ばせた短刀を再びしまいながら呟いた。火鉢の前に黒い毛皮の小山が見えた時には本当に熊かと思い一瞬肝を冷やしたのだった。
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    ナナシ/ムメイ

    DONEネオゲ本編後竜隼。
    あの世界の竜馬はどうして研究所離れて、二人は五年間何考えて過ごしてあの後どうしたんだろうとか。

    ネタとしては粗方見終わった直後にはあったんですが、データ二回飛ばした(主な理由)り、書こうとしては原作と根本的な軸や核が色々噛み合わなさすぎることに悩んでこんな時間かかり……。
    原典周りから色々設定引っ張りながらネオゲの本編内容ある程度組み込んでるつもりです。
    ■ もう一度、何度でも五年、という月日は短かったのか、長かったのか。

    ……さっぱりわからねえな。なにもかも。
    そう胸の中で独りごちながら、竜馬は縁側で一人煙を燻らす隼人を眺めた。
    黒いスラックスに白いワイシャツ。ネクタイが外されて見える首元に、今はあの十字架の鎖も無い。

    恐竜帝国の再侵攻、そして六年近くに渡っての戦いの決着からしばし。
    あの日、あの瞬間、中天で輝いていた太陽の代わりのように月が静かに秋の夜闇を照らしていた。
    山中にあるこの烏竜館は、今は自分達以外に人もおらず、まだ手入れの行き届いていない庭の草むらからは澄んだ虫の声が響く。
    長い脚を持て余す様に片膝を立てて縁側に腰を引っ掛け柱を背に寄り掛かる隼人の姿に、竜馬は不意にいつか早乙女研究所のバルコニーで手摺に腰掛けていたその姿を重ねた。
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    ナナシ/ムメイ

    DOODLERe:ハニー小ネタだけど竜隼。そういえば二十周年なのかと気付いたので、記念的に。
    資料未所持で本編だけ見て書いてるのでなんか違っても許して。

    映像や脚本も良かったし単純にポップでキュートでビビッドで派手で外連味があって面白かったけど、「ダイナミック漫画作品における戦闘シーンのお顔これだー!!」感があってそういう所もとても好きです。
    今度こそ二人共に並んで生きてくれ、みたいな祈りを感じるところも。
    ■ CROSSING《Re:ハニー》前半→ハニーとなっちゃん
    原作は漫画版しかきちんと見てませんが、例えご都合主義でも違う世界と人々であってもあの終わり方は嬉しかったです。
    「友」は少なくとも石川ゲッターロボでは本当に愛した存在にこそ向けられる言葉なので、そのニュアンスで。
    後半→「早見」と「誰か」
    説明めんどくさいから極端に簡単に言うと、Re:ハニーはハニーだったけど同時に石川ゲッターロボだったし、早見は竜馬寄りで隼人混じってたよね?って前提で、なら早見にも相方いてもおかしくないよね?っていう。


    =====


    「あのね、なっちゃん」
    「なに、ハニー?」
    「えへへ、んーん、呼んでみたかったんだぁ」
    「なによ、にまにましちゃって。ほら、片付け終わってないじゃない」
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