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    ナナシ/ムメイ

    @refuge774 @mumei_774
    ゲッター(漫画版と東映版中心/竜隼)書いて一旦投げる場所に困ったのでここに。推敲したのはpixiv(https://www.pixiv.net/users/1604747)に。■→推敲格納済
    なにかあればましまろにどうぞ↓
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    ナナシ/ムメイ

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    爆末伝面白かったし、思うところあったので一本書いてみたかった。

    現状読んだ中では五右衛門と半蔵の次くらいに竜馬と隼人の面影があるのに性格違いすぎて楽しい。

    ■ 腹の立つ奴、馬鹿な奴「お前はなんでそうなんだよぅ」

    バタバタと顔に落ちてくる雫は温かく、目を瞬かせ見上げる赤い顔はぐしゃぐしゃで。
    今しがたまで馬鹿とかそうじゃねえなどと文句を付けられながら板切れほどならかち割れそうな石頭で遠慮も無くガンガン頭突きされた額と床に打ち付けられた後ろ頭が痛いなんてものでは無く、気を失った方がまだ良かろうなどと頭をよぎる。
    ……泣き言を言うなんてお前らしくもない。
    いっそ時に腹が立つほど「合理的」に、感情は隠して、自分の本音はろくに見せなかった癖に。

    +++++

    ――函館、五稜郭。
    旧幕府軍はここを拠点とし、独立国家を築こうとしている。
    そう勝海舟からの報せを受けた平九郎に連れられ、いつの間にやらすっかり意気投合していた黄鹿達と蝦夷地へ渡るまでも一苦労だったが、着いてからも休む暇などはなく、築城などに駆り出されながらもようやく一息ついたのが今日だった。

    平九郎はおかしな奴で、甲板で甲羅干しをしようなどと誘って来た時からなんだかんだとズケズケこちらに踏み入りたがる節がある。着物から何から引っ剥がして素肌を見たがるのは婦女子だけにしておけ。全く無礼だ。その癖自分の腹の底は妙に見せたがらないのだから不公平というやつだ。
    けれどもまあ、そういう奴なのだ。我ながら腹の立つ事に嫌いでもない。

    だからニコニコと満面の笑みで何処で手に入れたやら図体のせいで小さく見える酒甕を抱えての、何度目ともわからん飲みの誘いに乗る事にした。
    政府軍の攻撃が激化するのは目前で、自分にも思うところがあり、最初に頼めるのは悔しいながらこいつだろうと思った。
    常日頃気を付けてはいるが、自制心を手放した見苦しい様など他人には見せられたものでは無い。平九郎は趣味が悪いのだ、まったくいただけない。
    二人で飲むならと承諾し、いつ死んでもいいように全て整頓してある自分の宿部屋の方が広くて良かろうと「来ても良い」と話した途端に何やらなんとも不可思議な表情までしやがって、まったくこいつはわからない。
    しかしまあ、上機嫌には違いなかった。
    日も落ちかけた頃、ズカズカと踏み入ってどかりと胡座をかき、まあ飲めと何処からか持ってきた湯呑みに豪快に注がれた酒は白く濁るどぶろくで、なにがどうと言う訳でもないがなにか試されてでもいるのかそれとも嫌がらせかと一瞬頭をよぎって眉を顰める。
    多分考えすぎだと一気に煽れば「いい飲みっぷりじゃねえか」などと喜色を含んだ声があがった。
    自分は澄んで身が引き締まるような清酒の方が好きだ。けれど、野趣を残して懐が深そうなこういう甘い酒をこいつが好みそうなのも理解はする。まったく趣味が合わない、が。
    「……悪くはない」
    「へへっ、だろ」
    「俺の好みでは無いが」
    「ちえっ、ならお前の好みを教えろよ」
    そんな軽口を叩き合いつつ互いにつぎあい、案外と静かに、奇妙な程に安心感のある時間が流れた。

    だから、やはり、こいつに頼もうと思ったのだ。

    暫く杯を重ねて、不意に会話が途切れた瞬間、意識してもいないのにぽろりと口からその話は零れていた。

    「……ところで平九郎。お前銃ばかりだが刀は振れるのか」
    「なんだよ、藪から棒に」
    「いやなに、俺は逆賊として首を斬られるくらいなら武士らしく腹を切って死にたい」

    だから、その時の介錯はお前に頼みたい。

    言外に滲ませたものに気付いたのか、上機嫌だった平九郎の顔がピタリと強ばってあっという間に血の気が引き、それ以上の速さでまた赤くなる。こいつは酒が入るとわかりやすいんだなと自分も鈍くなった頭でぼんやり思う。
    もしも政府軍に捕まりそうになれば、俺の首を持って突き出しお前達は協力させられただけだと言えばいい。実際に最初の形としてはそうなのだ。
    俺は自分の信念を通し、お前達は生きる目が増える。これこそお前が言う合理的と言う奴だろう。
    そうに違いない、と一人頷いていたのに、どうもこいつは気に入らないらしい。
    「――だっ、誰がてめえの介錯なんぞするか! 口を開きゃ切腹とかお前ら武士って輩はそれだから馬鹿なんだ!」
    ごっ、と床に乱暴に湯呑みを叩きつけて平九郎が怒鳴った。部屋の隅に置いた行燈の火が揺れる。
    「それは聞き捨てならん!」
    「腹かっさばいてもなんにもなんねえじゃねえか、俺は嫌だ!」
    「お前はそうだろうが俺は違うのだ!」

    身を乗り出してまで睨み付けてくる平九郎に、こちらも譲る気は無いと真正面から受けてたつ。
    確かにこいつに武士としての振る舞いなど求めてはいない。が、しかし、ここまできっぱり嫌だと返され馬鹿と言われては不満にもなる。
    お前は武士では無いと自分で言うし、それはわかっている。どうやったって俺もここは譲れんとはお前だって――。
    「――もういい。土方さんに頼む!」
    そうだった。こいつは俺とこんな所ばかり似ていて一度言い出したら聞きはしないのだ。
    そう思えば腹も決まる。すっくと立ち上がれば何やら子供地味た声が耳を打った。
    「な!? いやだ!!」
    酒のせいもあり、ふらりと一緒感じた目眩に額を抑える。
    「お前の好き嫌いは聞いてない、これは俺の矜恃の――」
    「やだやだ、あいつのとこにお前行かせるのは嫌だ! 絶対やだ!」
    まるで駄々をこねるような言葉の末に脚にしがみつかれた。ずるずると引き摺るにもこいつは図体がデカすぎる。
    「お前は子供か!? いいから離せ!」
    「いやだ! 離さねえ!」
    「愁嘆場じゃあるまいし何を聞き分けの悪いことを」
    「うるせえ! 嫌なもんは嫌だって言ってんじゃねえか馬鹿!!」
    「誰が馬鹿だ阿呆!!」
    「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いんだ馬鹿!!」
    ぎゃあぎゃあと喧しいし鬱陶しいし暑苦しい。意地にでもなったかのようにしがみつかれた脚が重い。
    それに。
    「なんでわかんねえんだよ、わからず屋!」
    震える声に力が抜けた。そんな声を聞くなんて思ってもいなかったから驚いて。
    ずるずるとそのまま引き倒されて覆いかぶさって来た平九郎の顔に丸くした目を瞬かせている間に額にガツンと食らわせられて。

    「お前はなんでそうなんだよぅ」

    それで、こうだ。
    なんでお前が泣くんだ。意味がわからない。
    お前だって知っていただろう。俺は死ぬつもりだなんて、会ったあの時に聞いていただろう。
    どうしてお前は諦めが悪いんだ。俺はとっくの昔に腹なんて括り切っているのに。
    死ぬ事は誰しも避けられぬ。自分はたまたま早いだけだったと。ならばこそ、その中でやりきるしかないと。

    「死んだら終わりじゃねえか」

    そんな自分の考えを見透かしたように不満そうな声が耳に届く。
    これだから貴様は厄介だ。わかっていやがってこれだ。

    馬鹿野郎。ぜってえお前の願いなんて叶えてやんねえ。馬鹿。わからず屋。頑固。石頭。馬鹿。

    一度カッとなったらいきなり酔いが周りでもしたのか、ぐずぐずむにゃむにゃ言いながら力が抜けてのしかかってくる身体が重い。苦しいと背中を叩けば抱え込まれて横になる。
    「そうじゃない、離せ」
    「……やだ」
    「こんなに酒癖が悪いなど聞いとらんぞ」
    「お前が悪い」
    俺は悪くない。なんだその言い方は。と、言いかけた言葉を飲み込んだ。

    あんな事言うから。死ぬなんて言うから。
    嫌だ、そんなの絶対。
    許さねえ、絶対。

    ……どうして諦めてくれないんだろうな、お前は。多分そういう奴なんだ。
    そんなに大事そうに抱え込まれたって、先も無い俺より一緒になんてなるつもりもない俺なんかより、綺麗で若くて未来もあって一緒に幸せになれる女にそれだけ熱を向けりゃ良いのに、そんな気は無いんだろう。だから阿呆なんだ。

    「……武士は近いうちに滅びると、お前も言っただろう」
    そんな事は自分だって知っている。それでもこの生き方を選んでいるのは、そこに人として生きる為の道があると俺は信じてきたからだ。
    「俺は武士として生きて死ぬよ」
    「……やだ」
    わかっては――いや、わかってはいるだろうにそれで良しとはしてくれんのか、と宥めるように出した声はグズる子供めいた言葉で叩き落とされた。
    「聞き分けのない子供はどちらだ」
    「うるせえ」
    はぁ、とため息ついて身体の力を抜く。押し付けられた胸元から鼓動が響く。いっそうるさいくらいに力強く。
    鼻を啜って幾分落ち着いてこれだ。もう手が無い。

    「……お前になら命をくれてやっても良いと言ってるんだぞ」
    「命なんざ要らねえから人生寄越せ」
    「それは……強欲にも程があるだろ」

    俺は強欲で我儘な奴は嫌いだ。きっとお前の事なんか好ましいと思った数より腹が立った数の方が多い。
    苦笑しながら思う。
    けれども、それがお前なのだから仕方がない。
    合わせてやるつもりなどは無い、お互いに。
    だから、まあ、それでいい。

    「……いいよ、いいさ。お前は武士のままでいいさ馬鹿野郎」
    でも死なせてなんかやらねぇ。
    やらねぇからな馬鹿野郎。

    薄暗闇の中、ぎゅうとただ抱え込まれた腕の中で、こいつは阿呆だし、許してしまう自分も馬鹿だと思った。

    +++++

    「なあ、新八よ」
    「なんだ」
    梅乱ごとサターンを海深くまで沈めて、あっちもこっちも何もかもボロボロの癖に、平九郎が勢いよくぐりんとこっちを振り向いて如何にも悪戯小僧のようにニンマリとした笑みを浮かべた。

    「国を出ちまえば武士なんて関係ねえよな?」
    「……お前がなんと言おうが魂は捨てんぞ」

    してやったりとばかりに豪快に笑う、貴様は本当に何もかも合わなくて腹の立つ奴だ。

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    Replies from the creator

    ナナシ/ムメイ

    DOODLEアイサガ軸のチェンゲ竜隼。バレンタインとかホワイトデーとかの時期を盛大に逃したけど今出さないと完全に忘れるだろうので。
    適当に色々ぼかしてあるので、「アイサガ隼人の好物はエネルギーバー設定」だけ知ってればチェンゲで読めると思います。(そもそもチェンゲ本編は再会してから時間無さすぎでこんな話やれるはずないのは置いといて)
    好きにしたいだけ今日は元の世界で言うところのバレンタインデーだかなんだか、らしい。
    そんな習慣がこっちにもあるのかと不思議になったが、恋人やら家族やらへの感謝の日みたいなもんがあるって事は、誰かに感謝とか好意を伝えたい人間がそれなりにいたって事だろうし、悪くねぇと思う。

    女からチヤホヤされたいか、と言われれば、性別どうのじゃなく好意を貰えばそりゃ嬉しい。が、好意のフリだけしたご機嫌取りだの媚びだのは昔から遠慮願ってたくらいには興味がねえし、いっそ煩わしい。口にこそ滅多にしねえが。
    もし、愛情の形とか貰えるなら、大事に思う相手からだけで良いし、なんなら貰うより送る方が性に合ってる――それが誰か聞かれたら困るが。

    コートのポケットに突っ込んだままのエネルギーバーを思い出して軽く眉を顰める。
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    ナナシ/ムメイ

    DOODLE1本目→寒すぎて五半をくっ付けたかった。(動機に邪念しかないがまた銀婚式夫婦)
    白狐の毛皮は秋野さんが前に書いたネタから拾いました。手入れすれば長持ちするんだそうで。
    羽織は戦国時代からとか調べはしたけどなんか違ってるかもしれない。

    2本目→でっかーい五右衛門がちっちゃな柘植櫛摘まんでにこにこ半蔵の髪すいてたら可愛いなって

    (言葉遣いは元が割と現代風混じってラフなので細かくやってません)
    ■ 冬の五半╱ぬばたまの動物というのは人が思うより頭が良い。
    息も白む冬の最中、いつの間にやらするりと入り込んだ猫が書き物机の隣に置いた火鉢に背を着け丸まり、ごろごろと喉を鳴らしていることなどもままある。

    しかしまあ、逆に時折、人であっても動物より頭がよろしくないのではないか、と思う時もある。
    半蔵は暫し席を立った間にどこから乗り込んで来たやら、火鉢の傍で身を縮めていたそれに溜息付きつつ呼びかけた。

    「……五右衛門」
    「なんだァ?」
    「冬の間は山越えが危のうてかなわぬから、滅多に来るなと言うたじゃろう」
    熊かと思うて背筋が冷えたわ、と半蔵は帯に忍ばせた短刀を再びしまいながら呟いた。火鉢の前に黒い毛皮の小山が見えた時には本当に熊かと思い一瞬肝を冷やしたのだった。
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    ナナシ/ムメイ

    DONEネオゲ本編後竜隼。
    あの世界の竜馬はどうして研究所離れて、二人は五年間何考えて過ごしてあの後どうしたんだろうとか。

    ネタとしては粗方見終わった直後にはあったんですが、データ二回飛ばした(主な理由)り、書こうとしては原作と根本的な軸や核が色々噛み合わなさすぎることに悩んでこんな時間かかり……。
    原典周りから色々設定引っ張りながらネオゲの本編内容ある程度組み込んでるつもりです。
    ■ もう一度、何度でも五年、という月日は短かったのか、長かったのか。

    ……さっぱりわからねえな。なにもかも。
    そう胸の中で独りごちながら、竜馬は縁側で一人煙を燻らす隼人を眺めた。
    黒いスラックスに白いワイシャツ。ネクタイが外されて見える首元に、今はあの十字架の鎖も無い。

    恐竜帝国の再侵攻、そして六年近くに渡っての戦いの決着からしばし。
    あの日、あの瞬間、中天で輝いていた太陽の代わりのように月が静かに秋の夜闇を照らしていた。
    山中にあるこの烏竜館は、今は自分達以外に人もおらず、まだ手入れの行き届いていない庭の草むらからは澄んだ虫の声が響く。
    長い脚を持て余す様に片膝を立てて縁側に腰を引っ掛け柱を背に寄り掛かる隼人の姿に、竜馬は不意にいつか早乙女研究所のバルコニーで手摺に腰掛けていたその姿を重ねた。
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    ナナシ/ムメイ

    DOODLERe:ハニー小ネタだけど竜隼。そういえば二十周年なのかと気付いたので、記念的に。
    資料未所持で本編だけ見て書いてるのでなんか違っても許して。

    映像や脚本も良かったし単純にポップでキュートでビビッドで派手で外連味があって面白かったけど、「ダイナミック漫画作品における戦闘シーンのお顔これだー!!」感があってそういう所もとても好きです。
    今度こそ二人共に並んで生きてくれ、みたいな祈りを感じるところも。
    ■ CROSSING《Re:ハニー》前半→ハニーとなっちゃん
    原作は漫画版しかきちんと見てませんが、例えご都合主義でも違う世界と人々であってもあの終わり方は嬉しかったです。
    「友」は少なくとも石川ゲッターロボでは本当に愛した存在にこそ向けられる言葉なので、そのニュアンスで。
    後半→「早見」と「誰か」
    説明めんどくさいから極端に簡単に言うと、Re:ハニーはハニーだったけど同時に石川ゲッターロボだったし、早見は竜馬寄りで隼人混じってたよね?って前提で、なら早見にも相方いてもおかしくないよね?っていう。


    =====


    「あのね、なっちゃん」
    「なに、ハニー?」
    「えへへ、んーん、呼んでみたかったんだぁ」
    「なによ、にまにましちゃって。ほら、片付け終わってないじゃない」
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