夕方の光が街をオレンジに染めている。アルバイトを終えたエグザべの、胸の奥が妙にざわついている。喉が渇いた。額に浮いた汗は今日が特別暑いわけでもないのに落ちてくる。なるべく早く帰らないと。そう思い大通りではなく近道の人通りの少ない路地を抜けようとして、曲がり角を曲がろうとしたそのとき数人の影が忍び寄る。
「あれ、オメガじゃね?」
軽い調子で投げられた言葉に、肩が微かに揺れた。振り返った瞬間、腕を掴まれそのまま裏通りへと押し込まれる。夕暮れの雑踏の音は遠ざかり、狭い路地に安っぽい笑い声だけが残った。エグザべは眉をひそめ、静かに言った。
「...どいてください」
運がない。そう思った。相手は五人。路地の出入口を塞ぎにやつきながらこちらを囲んでいる。
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