もしかしたらと思って 衣類、食品、インテリア、変わり種だとテーピングの包帯。
そうしたファンからの贈り物を抱えて帰宅した大河タケルは、プレゼントを紐解いていく。
事務所に届いた荷物や手紙は全て山村賢とプロデューサーがチェックしてから各アイドルやユニットに振り分けられる。牙崎漣はプレゼントの中から食品と一部の気に入った物だけを抜いて後は事務所に寄付――という名の放置――をしているが、タケルは全て持ち帰ることにしていた。
先月はテレビ出演が重なり、数日前にはライブがあったことも関係しているのかプレゼントの数はいつもより多い。物の種類ごとにおおまかに分けてから、タケルはそのまま食べられる菓子や飲料品と、調理が必要なもの――または食べ方がよく分からない物に分類する。よく分からないものは円城寺道流の元に持っていけば食べ方を教えてもらえたり、その場で調理して出してもらえたりする。
馬肉の缶詰は道流の元に持っていくことに決めて、衣類はスポーツウェアとそれ以外で簡単に分ける。インテリア類はどうするか悩んでから棚にまとめて置くことに決めて、ようやく全ての贈り物を片づけ終える頃には帰宅からかなりの時間が経っていた。
「……」
兜大吾から勧められたゲームを進めたかったが、明日の予定を考えるとゲームをするほどの時間は取れない。とはいえ寝るまでに時間は少しある――タケルは事務所から持ってきたファンレターを取り、一通ずつ読み始めることにした。
一口にファンと言っても、タケルの仕事を全て追う人もいればたまたまテレビで見かける程度の人もいる。ファンレターを送るファンは熱い、または濃いファンだと渡辺みのりが言っていたことを思い出しながら便箋に綴られた言葉を読んでいると、タケルの頬は自然と緩む。
どの手紙からも、ひしひしとタケルやTHE 虎牙道、315プロへの想いが伝わってくる。長々とした手紙も端的な手紙も同じだけタケルの心を満たし、全ての手紙を読み終える頃にはタケルの体は程よい充足感でいっぱいになっていた。
(――)
時計を見れば、そう時間は経っていない。
寝る支度をしながらも、タケルの頭の中には今日受け取った物のことがちらついた。
受け取った物の全てがファンからの気持ちで、そこに優劣はない――それは分かっていても、やっぱり。
(……手紙って、嬉しいもんだよな)
暗くなった部屋で思いながら、タケルは目を閉じる。
(じゃあ、今年は――――)
眠る寸前、タケルの心の中には道流の笑顔が浮かんでいた。