夜半 意識を取り戻した瞬間、北村想楽は異常を察知した。
古論クリスと同棲生活を送る寝室、クリスの長身と想楽の身体がすっぽり収まるベッドの中は二人の体温で温かい。隣からクリスの規則的な寝息が聞こえて、珍しい、と想楽はぼんやり考える。
クリスが想楽より遅く起きることはそうそうないはず……まとまらない思考をもてあそぶ想楽は、窓の外がまだ暗いことに気がついた。
「……?」
カーテンの向こうは未明の気配すら遠い。手元の充填機に挿したスマートフォンは手に取ったとたん遠慮のない輝きを溢れさせ、顔をしかめながら想楽が時刻を見ると三時二十八分を示していた。
「――」
スマートフォンの電源ボタンを押せば画面は暗転。まだ夜だと気づいたせいで急に体が冷え始め、想楽は大急ぎで布団にもぐりこむとクリスの背中に顔をこすりつける。
「…………」
「…………」
寝入っているクリスが反応を示すことはなく、鼻先から伝わる体温は心地よく想楽を眠りへと誘いだす。
「……――」
もしも朝、覚えていたら、夜に一度目を覚ましてしまったのだと伝えよう。
眠気の中で抱き寄せた体の心地よさを知らせてあげようと思ううち、想楽の意識はクリスと同じ場所へと沈んでいった。