I could just die「ユリウスッ!」
サントレザン城の回廊。普段静寂に包まれているこの場所は大きな声を上げればそれはそれはよく響く。まだ若い新王陛下の弟殿下の声もその例外ではない。
「これはこれは殿下、ご機嫌麗しゅうお過ごしで」
いけない、如何にも御怒りの形相の殿下には、少々嫌味に聞こえたかもしれないな、まぁ意図的に嫌味を含めてしまった自覚はあるが。
「貴様っ!兄上を拐かすのもいい加減にしろ…!」
「お言葉ですが殿下、私が陛下にご教授させて頂いているのは思想ではなく方法論です。それを生かすも殺すも、その選択をしているのは陛下です」
「フン、お前が言う事を効くよう兄上を仕向けているだけだろう!」
「…殿下、無礼を承知で進言致しますが…どうか新王陛下を信じてあげてはいただけませんか」
「なんだと?」
「殿下が新王陛下を憂う気持ちはお察しいたします。大罪人である私が傍にいるのですからね。私を信用しないのはかまいません。当然のことです。ですが、私を受け入れる事を選び、新たな道を切り開かんとする新王陛下の選ぶ道は信じて戴きたい。それだけで陛下のお力になるというものです」
「私は、別に…信じてないわけでは…っ」
「フフ、新王陛下と同じく、殿下もお優しいのですね」
「なっ!どういう意味だ!」
「では、次の会議がございますので、これで失礼致します」
殿下はただ新王陛下を心配なだけなのだろう。でなければ、忠告などしたりしない。
もしも反逆を企てるような方ならば、忠告などはせず新王の失態を切り口に事を興そうとするはず。
私とは違い、支え合うことの出来る人物だ。
「大丈夫か?」
「おや、盗み聞きとは趣味が悪いねぇ、親友殿」
「べ、別に盗み聞きしていたわけでは…割り入るのも悪いと思って、だな…」
「フフ…感謝するよ親友殿」
「?」
今までの親友殿であれば、弁明に入ってきていただろう。私は大罪人ではないだの、悪い奴ではないだの、信じてやれだの…裏を返せば私の言葉を周りが信じないだろう、だから守ろう、と心配していたのだ。
心配してくれるのは有難いことだが、行き過ぎた加護は
、対象の力を信じていない事に等しい。
だが、今回はそうはしなかった…。
自覚はないようだが、親友殿はあの一件以来、以前よりも信頼してくれているようだ。
それが酷く嬉しい…
この時がいつまでも続くといい…
ふと、回廊から見える光さす庭に目をやる
その眩しすぎる様は、今のレヴィオンを表しているかのようだった。
この国の未来はきっと光り輝くものとなるだろう
咎人である自分が時にこの場に不釣り合いに思うことがある。それでも、信じてくれる友がいる。
ただそれだけで、私は…