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    Pドルオンリーで無料配布していたペーパーアンソロの小説部分です。付き合って最初のバレンタインデーのお話。
    後ほどネップリにて4P分をアップする予定ですので、お好きな方で、お楽しみください!

    あまいひとときをアナタに「師匠、これどうぞ」
     夕食後の片付けを終え台所から戻ってきたプロデューサーに、道流は小さなプレゼントを手渡した。二人きりになれる彼の部屋で渡そうと決めていたのだ。
    「時間が無かったんで少し簡単なやつになっちゃったんスけど、気持ちは沢山込めたんで!」
     そう伝えるとプロデューサーは嬉しそうにありがとうと受け取り、隣に座った。
     悩み抜いて決めたシンプルなラッピングは、とても似合っているものに出来たと思う。穏やかに笑う横顔を見ながら、達成感をひっそりと噛み締める。
    「この間のカカオラーメンがそうかと思ってた」
    「あれは皆が食べられる限定ラーメンなんで」
     自信作だったんスよと付け加えれば、美味しかったよとまた笑い返される。と同時にプロデューサーの表情が少しだけ曇った。眉を下げ、困った様な焦った様なものへと変わる。
    「どうしたんスか?」
     まさか苦手だっただろうか? と少し焦る。
    「いやぁ……被ったなって思って」
     そう言い終わると同時に電子レンジの音が聞こえてくる。
     ちょっと待ってて、と立ち上がり台所へと向かって行く。マグカップを二つ持ち戻ってくると、甘い香りが鼻腔をくすぐった。
    「俺からも、どうぞ」
     テーブルに置かれたマグカップの中身はホットチョコレートだった。真ん中に浮いているマシュマロとミルクが綺麗に溶け合っている。
    「師匠が作ったんスか?」
    「俺がと言うより、電子レンジが、かな?」
     だから手作り料理じゃない、セーフ! と、真面目にこちらに訴える仕草に思わず笑ってしまった。プロデューサーはあの時自分とした約束を、ずっと守ろうとしてくれている。
    「ありがとうございます、嬉しいッス!」
     言葉にすると、召し上がれ、と嬉しそうに笑う。
    「いただきます」
     フーっと息を吐き冷ましながら口に含むと、優しい甘みがじんわりと広がる。一口、二口と進めていくと体も少しずつ温まった。
    「……美味しいッス」
    「本当?」
     プロデューサーも自分のものに口をつけると、安心した様に良かった、と小さく呟く。
    「甘さもちょうど良くて……もしかして、作るの練習したんスか?」
    「失敗しないレシピを信用しきれなくて……」
     不安だったんだよ、とプロデューサーは照れている様で少し赤くなっていた。
    「どれくらい甘くしてもいいのかって考えた時に、道流の好みとか良く知らないんだなって思ってさ」
     なんでも良く食べてるし飲んでるし、しみじみと頷きながら口にされる。その時の自分の姿を思い返されているのだと思うと、少し気恥ずかしい。確かに好みを聞く事は多々あれど、自分から伝える事は少なかった。
    「でも」
     渡したプレゼントのラッピングに優しく触れながら、プロデューサーは続ける。
    「これから道流の色んな事知っていけるって思ったら、嬉しくなったんだ」
     だから色々教えて貰えたら嬉しい、とはにかんだ笑顔で伝えてくれる。
     それは自分も同じだと道流は思う。
     プロデューサーが自分の為に準備してくれていた事。こんなにも優しく沢山笑う事。どれも新しく知る事ばかりだ。
     だからそれが自分も嬉しい。
    「勿論ッス。それに、師匠の事も沢山教えてください。まずはチョコの感想聞きたいッス!」
    「そうだった、俺も食べよ」
     ありがとう、と言いながら包み紙を丁寧に剥がしていく。これもまた新しい発見だ。
     また来年も同じ様に交換をするのだろうか。それに来月のホワイトデーはどうなるんだろうか。
     けれど、それもまた一緒に考えていければ良い。次は何を作ろうかと来年の楽しみを考えながら、彼の優しさに口をつけた。
     
     
     
     
    「これ、いくらでも飲めそうなくらい美味しいッス」
    「本当? おかわりするなら次はお酒入れて作ろうか?」
    「……酒、飲んじゃうんスか?」
    「ん? まぁ体も温まるし、少しなら寝る時に良いかな……って……」
    「………」
    「……入れないで飲もうか」
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