ぱちん。「…あ、爪割れてる」
夕食の後片付けを終えたプロデューサーは、指先を見つめて呟いた。
「爪切り使いますか?」
「うん、ありがとう」
最近爪割れやすい気がするなと難しい顔をしているプロデューサーに、タンパク質不足じゃないッスか?と他愛のない話をしながら爪切りを渡す。
「しっかり食べてるつもりなんだけど」
ぱちん。
「乾燥も原因らしいッスよ」
ぱちん。ぱちん。どうやらついでに他の爪も切るらしい。
「へー、そこまで考えた事無かったな」
ぱちん。深爪にならない程度に整えられていく。
「あとは補強用のマニキュアもあるとか」
ぱちん。その形には見覚えがあった。
「流石にそこまでは大丈夫だよ」
ぱちん。自分の奥に触れる時にはいつも爪を切るのだ。
「ハハッ、そうッスよね」
ぱちん。その指に蕩かされるのは気持ちが良い。
「………」
ぱちん。
「………」
ぱちん。ぱちん。
「…あのさ」
「はい?」
爪切りを終えたプロデューサーと目が合う。
「明日も出かけるの早いし、今日はしないよ?」
「…そんな顔してたッスか?」
「熱い目で見られてた」
バレていたのか、と顔がじんわりと赤くなるのが自分でも解る。
「…すみません」
「気にしてないよ」
「いえ、そっちじゃなくて」
「ん?」
手を取り指先に口付ける。
「明日の予定、遅らせてしまうんで…」
だからすみません、と押し倒すと、綺麗に整えられた指先がゆっくりと自分の背中を撫でた。