Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    mame

    小話ぽいぽいします
    リアクションとっても嬉しいです。
    ありがとうございます!

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 104

    mame

    ☆quiet follow

    復興後ifの千ゲン③完結

    https://poipiku.com/1356905/3255402.html
    https://poipiku.com/1356905/3260479.html

    「飛行機の時間とか大丈夫なの」
    「そっちこそスケジュールは」
    「俺は2時間後にすぐそこのラジオ局で収録開始」
    「―、収録の合間に来たってことか」
    「そういうこと。予定はなかったんだけどね、ふらっと入ってみちゃったわけよ」

     千空がプロデュースしたプラネタリウムが気になって、とは言わず、ゲンは肩をすくめながらそう答えた。横に並んで科学館を出る。一年間まったく会うこともなく、連絡をとることもなかったというのに、これが当たり前だとでもいうのか、なんの違和感もなく千空とゲンは同時に歩き出したし、打ち合わせをすることもなく外へ足を向けた。会話もスムーズで不思議な感覚にゲンは陥る。
     ふたりの身長は同じくらいで、目線の高さも大体一緒だ。久しぶりの千空の横顔にゲンは思う。色々自覚してから直接みるはじめての千空の姿、攻撃力があまりにも高い。ひとり小さく苦笑を浮かべて、腕時計をちらりと見た。五分と言った千空だ。おそらくスケジュールはカツカツだろう。なにせ明日は月へ行く男。ロケットの発射が日本というのが救いだろうか。
     石神村から船を出して数時間のところにロケットの発着場はある。再びJAXAと名付けられた組織が今度のプロジェクトは中心となっているらしい。だから今回の宇宙飛行士たちは全員日本に集まっている――すべてテレビや新聞で得た情報だ。ゲンは知るつもりもなかったのだけれど、目に入ったので読むしかなかった。昔のように種子島だったら今ここに千空が居ることはありえなかっただろう。否、やはり飛行機を飛ばせば二時間かからないとはいえ、前日の昼過ぎまでこっちにいて、飛行機に乗る直前に都心にある科学館に来たというのは正気の沙汰ではないのではなかろうか。
     千空が欲しがった五分。なんのために使いたいのか、ゲンには皆目見当がつかなかった。なんのためにここまで来たのか……と落葉した葉で埋まる歩道を歩きながら考えて、そういえばと思い当たる。

    「ていうか来館したって聞いたからってどういうこと?」
    「そのまんまの意味だ」

     あっさり千空が答えた。ゲンのことをちらりと流し見て、そしてまた前を見る。その横顔をゲンは理解できない。眉間に皺を寄せると、千空がほんの少し下唇を突き出して話し出した。

    「あさぎりゲンが来館することがあったら俺がどこにいようが何してようがすぐに連絡してくれって館長にいってあった」
    「どこにいようがって」
    「国内でも海外でも地球外でも」
    「ええ~ここの情報管理どうなってんの…………」
    「知らねえかもしれねえから教えてやる。俺はここの名誉館長だ」
    「うわっ、びっくりするくらい堂々とした職権乱用!」
    「そういうこった」

     息をつめて短く笑う千空にゲンは首を傾げる。使えるものは使う精神の千空だけれど、それは科学に限った話だとゲンは認識している。これは、ゲンの知る限りでは科学ではない。それとも重要な何かが発覚して、連絡をとりたかったのか。それこそ別に事務所にでも連絡をしてくれればよかったのだ。なにもまどろっこしいこんなやり方、千空が好んでやるとは思えなかった。

    「なんでよ」

     こういうのはもう直球勝負だ。千空相手なら下手な小細工で誘導しても時間の無駄だ。そう、五分くらいしか時間がとれないわけだし早く用件を言わせた方がいい。

    「賭けみてーなもんだ。テメーがここに来たら、言いたいこと言ってやろうって決めてた」

     千空が足を止めた。千空が足が止まったことに気付いてすぐゲンも足を止めたが、ふたりの間には三歩分の距離が開いた。
     秋晴れの空の下、ふたりの周りに歩行者はいない。風が吹いて落ち葉を巻き上げた。視界が一度、イチョウの黄色に染まる。再び強い風が吹いて黄色を攫って行く。開けた視界ではまっすぐに千空がゲンを見つめていた。ゲンの心臓がとくりと一度跳ねて存在を主張した。千空と正面から向き合うなんて、いつぶりだろう。下手したら初めてかもしれなかった。
     あまりにも真剣な表情にゲンはなにも言えなかった。いつもぺらぺらと勝手に動いてくれる口だというのに、こんな時ばかり静かになって嫌になる。

    「あの日……俺が月にもう一回行くって言ったとき、テメーが何を飲み込んだかしらねぇが」

     意志の籠った宝石のような赤い瞳がゲンの心を貫いた。

    「俺はテメーに何を言われようと月に行く」

     どうやらすべてお見通しだった千空はゲンに止めを刺しにきたらしい――ゲンは答えを導き出した。なるほど、これは急を要する案件だと納得する。自分の実力を過信しているわけではないが、それでもゲンがうまいことやればきっと発射を中止できずとも後伸ばしにすることくらいできるはずだ。だから明日の飛行に支障をきたさないように千空はここに来たのか。
     心配せずとも、明日は仕事をみっちり詰めてある。ロケットの発射日を知ったときから、ゲンはそうしてある。止めたくても止められないように。自分が自分であるために、そうしている。

    「うん、そうだよね」

     ゲンの横髪が冷たい風に吹かれ顔を半分隠した。にこりと笑って、ゲンはわかってるよと、安心してよと、肯定にすべて乗せて千空に伝えた。すると正面の千空がみるみる目を見開いて、苦い顔をする。後頭部をガシガシと右手で苛立った様子でかき混ぜて、ゲンは違和感を覚えた。

    「おい、まて、ちげー。~……くそ、こういうのはメンタリストの仕事だろ。ちゃんとその優秀な脳働かせろ、バカ」
    「なにその言い草」

     さすがに片眉をゲンがあげれば、千空が再び目を見開く。今度は少し嬉しそうだった。小さく頷いて「それだよ、それ」なんて言ってくる。訳が分からずゲンは首をひねった。千空はそんなゲンから少しだけ目を逸らして、口を開く。

    「だから、気にせず言えよってことだ。何言われても俺がすることは変わんねー。テメーがなに言っても変わんないんだったら、なに言ったっていいだろ。勝手に飲み込まれて、結論出されて、そのまま離れられるほうがよっぽど堪えるんだわ」

     開かれた口から飛び出してきた言葉にゲンはぽかんと口を開けた。なにそれ。一度ちらりと千空がゲンをみた。そしてまた逸らされる。逸らされた視線は戻されないまま、千空はまだ言葉を続けた。

    「そのうち戻ってくるかと思ったけど一向に連絡すらよこさねーし……そりゃ賭けにだってでるだろ」

     思ってたより早く来館してくれておありがてえ、なんて千空は言葉の後ろにひっつけた。
     つまり、どういうことだ。
     ゲンは混乱する頭の中を必死に整理する。
     賭けと千空は言ったが、そんな賭けゲンはしらないし、誰もいつこの科学館にゲンが来るかなんて予想もつかないだろう。千空お得意の計算でもそもそも計算に必要なデータが存在しない。どちらかと言えば、これはゲンの分野だ。来館するように誘導するなど、千空にできるはずがない。
     そんな勝ち目の見えない賭けを、千空がわざわざ、ひとりでしていた。
     理由と言えば、ゲンに今の言葉を言いたかったらしい。それだけのためにいつ来るかわからない賭けの勝利を待っていた。そう、待っていたのだ。あまりにも非合理的な賭けをして。

    「いや千空ちゃんから連絡くれればよかったんじゃん」

     ぽかんと開いていたゲンの口から正直な感想がこぼれ落ちた。今度は千空がゲンの言葉に顔を顰めた。

    「身辺整理して芸能界一本にする宣言して離れた人間が俺からの連絡とるのか」
    「あ~……とらないかな~~~~~~?」
    「ほらみろ」

     腕を組み大きく体を横に倒しながらゲンが言えば、千空が小さく笑った。今日の千空は表情豊かだ。

    「こっちは待つしかなかったんだ」

     元々豊かだけど、でも、なんだか今日は、ゲンが知っている表情とは少しずつ違う気がした。
     定まっていなかった視線がゲンの元へ戻ってくる。どこまでもまっすぐにゲンを見つめてくる。

    「さっきのプラネタリウム、面白かったか」

     このタイミングでどういう質問だと思いながら、ゲンは素直にうなずいた。

    「え、あ、うん。ゴイスー面白かった。いろんな子が宇宙に興味もってくれると良いよね」

     動揺を隠さないまま答える。だって本当に面白かったのだ。美しい映像とリンクする話に、入り込みやすいとっかかり。織姫や彦星の話や、月の満ち欠けと潮の満ち引きの関係なんかの話は子どもの初めての興味を引き、大人には新たな知識を。
     日常にあったなんでもない疑問。空を見たときの不思議。その答えを、わかりやすく、興味深く、もっと知りたくなる。そんなプログラムだった。
     科学館を置き土産にしたゲンだ。未来に繋げていくにはぴったりだと嬉しかった。ゲン自身も途中の千空の登場で驚きはしたが、最初から最後まで驚いたり、微笑んだり、感心したり、ずっと楽しかった。

    「俺は、」

     凛とした声が開けた空間に響く。空まで届くような透明さだった。

    「好きなもんとか、意識とか、そういうのは人それぞれだ。そこに相互理解がなくても容認できるなら共存できる。それでいいしそれがいいと思ってる」

     そういう考えでもなければ、人類みんな石化から元に戻すなんてクレイジーな事言わないよね。内心でそんなことを思いながらゲンは千空の言葉にうなずいた。相槌というのは会話においてとても重要な役割を持つ。だからこそゲンは相槌を意識して打つ。でも今日の千空はゲンの相槌を気にすることなく、言葉を紡ぎ続けた。

    「でも、俺はマジックが気になるようになった。花だって生態や成分を知ってたら十分だったのに興味の幅が広がった」

     マジック。花。千空の口から飛び出した言葉に、今度はゲンの切れ長の目が見開く。

    「そうだっつーのに……ゲン、テメーがどうやったら俺が好きなもんを好きになるのか、わかんねえ。それが当たり前なのに、わかりてえ」

     悔しそうに、難問にぶち当たったときに見せるような千空の表情に、ゲンは呆気にとられる。だって、その言い草はまるで。

    「じゃあ、もしかして、『君の気になる宇宙の話』って」
    「……気になってもらえるようなプログラムを考えた」
    「俺に?」
    「ぁ」

     拗ねたように、視線を斜め下にやり、千空が唇を尖らせた。

    「見たら、俺の話聞く気になるかな、と」

     だから、千空はゲンの来館を待ったというのか。

    「なにそれ」

     ゲンの好きなものを知りたくなった。ゲンがどうしたら千空の好きなものを好きになるか考えた。いつ訪れるかもわからないゲンの来館を待ち続けた。月に旅立つ前日に飛行機の搭乗をほっぽり出して駆けつけた。
     人それぞれだ、といったその口で、千空がそんなことを言ったのだ。

    「ジーマーで?」

    なんて下手くそなアプローチ。そして、なんて。

    「千空ちゃん、俺のことゴイスー好きじゃん」
    「ゴイスー好きだわ。隣にいるうちに言わなかったこと後悔するくらいにはな。まさか本腰入れて離れてくれやがるとは思ってなかった。そんなことありえねえって、なにがあるかわかんねえって、身をもって知ってるっつーのに」

     気持ち悪いといつかのように言ってくれればよかったのに、まさかの返事にゲンは呆然とする。
     千空はやはり拗ねているらしい。もしかしたらずっと拗ねていたのかもしれない。
    なにかゲンが言いたかったことを察したのに、ゲンがなにも言わなかったから。ゲンから連絡が来なかったから。ゲンからの好意に、なんとなく気づいていたから。ずっと、ずっと。もしかしたら、ゲンが自覚する前から、千空はずっと、そういう意味で。

    「だから、月から帰ってきたらゲン、テメーにプロポーズする」

     ああ、もう。
     ゲンはぷはっとたまらず噴き出した。そうだよね、そういう男だよ千空ちゃんは。
     意思確認もお付き合いもなにもかもすっとばして、最短距離でいきなりプロポーズ。それで、ちゃんと決めるところを決めるのだ。ずっと隣で見てきたから知っていたのに、ずいぶんゲンは怖がりになっていた――恐怖は薄れることはないけれど。
    くしゃりと笑ってゲンは一歩、足を踏み出した。千空の元へ。

    「千空ちゃん、それ死亡フラグって言うんだよ」
    「おーおー、石化して以降の人生は、散々死亡フラグ立てては無理やりへし折ったり、周りにへし折ってもらって生きてるわ」

     耳を小指で弄る千空との距離が二歩分になった。くすりと頬を緩めてゲンが笑うと、千空も唇の端を釣り上げて不敵に笑う。

    「今回も大丈夫だなんて言いきれねえけど、でも」

     さっきまで幼いくらいの表情で拗ねていた男とは思えない笑みだった。

    「フラグは月面にぶっ刺して帰ってくっから」

     千空の方から、一歩、ゲンに近づいた。そのまま、千空の荒れた手がゲンに伸びる。

    「別に好きなことやっていい。俺だって好きなことしかしねえ。でも、だから、同じ場所に帰りたい」

     指先がゲンに届いたと思えば、そのまま腰をぐっと引き付けられた。驚きにゲンが目を丸くしている内に、ゲンの肩口に千空の額が埋められる。

    「ダメか」

     低い声がゲンの耳元で響く。直接脳に届いた、懇願のようなそれにゲンは目頭が熱くなる感覚を覚える。

    「ば、バイヤ~……」

     辛うじて出た間抜けな声と、間抜けなセリフにゲンは自分でもあきれ返った。千空を先ほど言い募ったが謝罪ものだ。メンタリストのくせに脳が動いていない。千空の熱い瞳が、声が、突き刺さったまま抜けない。多分、もうずっと、抜けやしない――ぐるぐると思考を回しながらゲンは、ていうか、と我に返る。

    「も、もう、それ、プロポーズじゃない!?」

     行き場のないままの手をゲンが宙に浮かせていると、千空がさらに腕に力を込めて引き寄せてくるのでたまったものじゃない。ひい、と声がでた。キャパオーバーだ。うずめていた額を千空があげ、ゲンをみた。体は離さないまま。こんな距離じゃ、秋風だってふたりの間を通り抜けやしない。体温がじわじわと伝わって、ひとつになる。

    「? そうなんのか? したことねーからわかんねえ」
    「したことあるんでしょ、ルリちゃんに……」
    「逆にあれをプロポーズってカウントしたらルリの奴に失礼だろ」
    「千空ちゃんいつの間にそんな思いやりもてるようになったの」

     眉を寄せた千空に、やっとゲンの肩が下がる。真顔のままお互い顔を見合わせてから、同時に破顔した。こわごわと千空の腰に手をまわす。少したくましくなった。きっとロケットに乗るためにトレーニングをしていたのだろう。きゅっとそのままゲンが服を握れば、皺が寄るにもかかわらず千空が嬉しそうに笑った。
     と、同時。千空の身体から振動が伝わり、電子音がピリリと周囲に響き渡った。

    「あ、やべ」

     焦ったように千空がズボンのポケットをまさぐろうとするので、ゲンは千空から手を離す。千空の手もゲンの身体から離れ、ふたりの間には再び一歩分の距離が出来た。不思議と名残惜しさは感じなかった。
     あのころ一緒に作った携帯電話はもうポケットサイズだ。携帯電話の画面を確認した千空が、ゲンに視線を投げる。

    「行くわ」
    「うん」
    「宇宙から通信してもいいか」
    「エンターテイメントで生きてる人間としてはそんなゴイスーな通信、無視できないよねえ」
    「そりゃ都合いい。出ろよ。機材届けるように言っておくから」
    「いいよ、大丈夫。JAXA行く」

     千空の瞳がきらりと光った。はじめての発見をしたときの子どもはこういう表情をするのだろうなとゲンは愉快な感情を隠さずくすくすと笑って見せた。

    「俺からかけるから、宇宙で待ってて」

     千空の呆気にとられた表情なんて、ウルトラレアだ。千空の言葉を借りるなら、ゴイスー唆る。

    「話してよ。宇宙から、俺が気になる宇宙の話を」

     ふたりの間を風が通り抜けた。それを合図に千空が目尻を下げ、そして頷いた。
     きっと、コーラ一本で取り付けた薄っぺらな同盟以来の、未来の約束だった。
     千空がゲンの横を通り過ぎ、歩き出す。

    「いってらっしゃい、千空ちゃん」

     背中に投げかけると、千空が振り向かずに右手を挙げた。千空らしいな、とゲンは体の前で手を組みながら眉尻を下げて微笑む。
     どんどん距離が開いていく背中に、なんだか怒涛の流れになったこの数時間をゲンは思う。自身のペースは乱され、表情も計画も崩された。無関係であろうと決めたのに、言いたいことを言えと、言ったって千空は変わらないからと無茶苦茶なことを言われて、プロポーズの約束まで取り付けられて。これまでの努力が水の泡。失笑ものだ。
     一度科学館を振り返る。ドーム状のそれにしてやられた自分と、こんなにゲンをかき混ぜておいて明日月に行く男に段々腹が立ってきて、ゲンはすうっと息を大きく吸った。前を向き、さっきよりも小さくなった背中に、言葉を投げつけた。

    「千空ちゃん! 新居、どこがいい」

     秋空に霧散した声に、千空が弾かれたように振り返った。驚きに満ちた表情に胸がすく。にんまり笑って見せると、千空がクククと笑ってから、ゲンと同じように声を張り上げた。

    「テメーの仕事しやすいとこでいい!」

     いいなあ。やっぱりたのしいなあ。千空の隣は楽しい。ゲンは組んだ手に力を入れた。
     千空の隣にあって楽しい思いをしているのは自分だけだとゲンは思っていた。自分も千空のそんな存在になれていたらしい事実なんてついさっきまで知らなかった。マジックも花も、ゲン自身も、千空はいつのまにか好きになってくれていたらしい。

    「ジーマーでゴイスーな物件見つけておくから」

     言いたいことを言えばいいと、千空は言った。でも、やっぱりゲンは「また危ないところに行くの」なんて、千空に言う自分自身は絶対に好きになれないから。心の底から思ってるけれど、でも絶対にゲンは音にしたくない。

    「絶対、怪我なく帰ってきてプロポーズしてよね!」

     だから、これで折り合いをつける。
     これがゲンの妥協点。そしてきっと千空にとっては及第点だ。
     道の先で千空がゲンを見つめていた。ゲンはその千空を見つめる。じわじわと千空の口角が上がっていくのが見えた。千空の形の良い口がゆっくりと開かれる。

    「、いい子で地球で待ってろ」

     千空が戻ってくる日、ゲンは迎えに行かない。無事にその両足でゲンの元に帰ってきてほしいから。帰ってきた千空にプロポーズをされたらイエスを返すから。

     そうしたら、君の、とびきりの宇宙の話を俺に聞かせてほしい。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💍💍💒🙏💞☺💖👍💖💒😭😭🙏💒💖😍😍❤❤❤👍👍💴💴💎😍💒💒💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator