リビングの真ん中に鎮座するテーブルに頬杖をつきながら、胡乱げな目でロディはそのページをめくった。そのページにあるのはヒーローについての街頭インタビューを100人にし、ランキング形式にしたというものだ。
ヒーローに持つイメージをランキング化したらしい、そのいくつかのランキングの文字を眺めながら、ロディは気怠さを隠すことなく片眉を上げ口を開く。
「誠実そうなヒーローランキング2位、奥手そうなヒーローランキング1位……ねえ……?」
ハッと息を切りながら笑い声を短く吐き捨てると、するりと背中に温もりがまとわりついた。ラグの上であぐらをかくロディの腹に綺麗に筋肉のついた腕がするりと回される。
「これのどこが? って話なんだよな」
読書中だぞ、という意味を込めてその傷だらけの手を軽くはたけば、小刻みな振動が背中から伝わってくる。首筋にかかる笑い混じりの吐息がくすぐったい。すり、と甘えるように首筋になつかれる。
「僕にそんなこと言うのは君くらいだよ。世間じゃ納得のランキングだって言われてるらしいし」
「どこが〜? 違うでしかねえだろ。人が雑誌読んでる背後から無言でTシャツの中に手ェ入れてくるヤツのどこが奥手で誠実なんだっての」
ロディの頭の上に乗っていたピノが賛同するかのように高く鳴いたのを、ロディの背中にぴとりとひっついている誠実そうなヒーローランキング2位、奥手そうなヒーローランキング1位であるヒーローデクこと出久が「え、ピノまで?」と律儀に反応を見せた。
それを一度くすりと笑ってから、ロディは再び文字を追う。まあよくも知りもしない相手のイメージをよく膨らませることができるな、なんて思いながら。何度も怪我をしては回復して、を繰り返し厚くなった掌の皮を腹に感じつつ、ロディは息を吐き出した。色気が伴わない触れ方に、まだ読書は続けられそうだと安堵する。
別に出久のこういった面を知っている自身に対し優越感を抱いているわけではない。ただ単に、案外出久はむっつりだし勢いがつけば順番なんかすっ飛ばして行動する。そういうところが緑谷出久のなかなか面白い部分なわけで、それを知らないのはもったいないな、と自由にヒーローデクに対してイメージを語っているコメントを眺めながら思った。ただ、それだけだ。
──残念ながら、ロディ自身、この思考を人に口にすることは今後もないので、これがマウントみたいなものだと自覚するチャンスは今後も訪れることはないのであった。