Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    mame

    小話ぽいぽいします
    リアクションとっても嬉しいです。
    ありがとうございます!

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 104

    mame

    ☆quiet follow

    出ロデ プロヒ×パイロット
    ※互いに両想いなのはわかってるけど付き合ってないふたり
    設定・過去作( https://twitter.com/i/events/1431533338406178824)
    初の自宅へご招待の巻(前作/https://poipiku.com/1356905/5991012.htmlの続き)

     突然の再会から、数えること五回。時間にしておよそ三ヵ月。
     木々を彩っていた広葉樹の葉がすっかり歩道に落ち、日によっては灰色の街に雪がちらつく。ロディと出久が再会してからあっという間に時が経ち、初回で出久が連絡をしてくれとお願いしたのが効いたのか、ロディは日本に仕事で来るタイミングでメッセージを送ってくれているため、日本の四季のひとつを一緒に味わうことができている。ただ、ロディが出久に連絡をくれるタイミングが早くて二日前、基本的にフライト直前、そして下手すれば日本に着いたあとだったりするので、出久は連絡をもらった瞬間に毎度大慌てでシフトを調整している次第だ。約束を取り付ける連絡をするとそのたびにロディには「予定空けれたのか」なんて驚きの反応を返されるので、それならもっと早くに連絡頂戴よと思う出久である。
     ロディの泊まる空港のホテルから乗り換えなしの電車一本で行ける繁華街で待ち合わせして、お店でゆるっと飲んで解散。出久は自宅へ、ロディはホテルへ。初回から前回までずっと同じパターン化していた。
     お互いの近況なんかを話しながら飲むアルコールはおいしくて、たのしくて、ロディが出久を「アンタ」と呼んでいたのが再び「お前」になるまでそう時間はかからなかった。ほんの少し、距離をとられているみたいでアンタと呼ばれるたびに寂しさを覚えていたので、アンタと呼ばれるタイミングでお前と呼ばれると出久は頬を緩めてしまい、ロディとピノに怪訝な顔をされる。
     だから、まあ。そんな呼び方ひとつでも心を動かしていたのだから、もっと一緒にいたいなと出久が思うようになったのは、きっと自然なことだったのだと出久は思う。
     
     
    「明日は僕の家で飲まない?」
     前日に連絡してくれたロディに出久が電話を折り返すと、あっさり電話に出てくれたロディはすこし面食らったようだった。
    『デクんち? あー……うーん……ホテルまでどれくらいの距離?』
    「ホテルまでちょっと距離あるから、ロディの予定に問題なかったら明日ウチで飲んだらそのまま泊ってくれて大丈夫だよ。僕、明後日非番だから、ゆっくりできたらいいなと思って。あ、キャンセル料とかいる?」
    「いや、会社が年間通して借りてる部屋だから別にチェックイン時間までに連絡いれたら特に問題はねえよ」
    「じゃあぜひ! 大したおもてなしはできないけど……!」
     今度前日に連絡が来たら絶対誘おうと思っていた。そして前日に連絡がきたのが、ちょうど非番のタイミングに重なっていた。そんなわけで今しかないと出久は喜び勇んで今回、ロディを自宅にお誘いしたわけだ。ちょうど出久が朝家を出る前に連絡がきたのが功を奏した。
    『んならお邪魔すっかな。どこ行きゃいい?』
    「やった! 最寄り駅まで来てくれたら迎え行くよ!」
    『じゃあメッセージ送っといてくれ。あと一応デクんちの住所も差し支えなければ』
    「もちろん! じゃあ送っとくね! 明日楽しみにしてる!」
    『ん、今から仕事だろ? 気を付けてな、ヒーロー』
    「ありがとう! ロディも気を付けてきてね!」
     少々戸惑った気配を醸し出していたロディだったが、出久の誘いに乗ってくれた。それに嬉しく思いながら、スマートフォン片手に満面の笑みを浮かべる。当たり前みたいにロディが気を付けて、と電話の向こうで出久を送り出してくれたのが嬉しかった。明日会えて、さらにお泊り会までできるなんて、浮足立つのもしょうがないというものだ。
     ――ここまで来たら、正直自分でもわかっていた。これは、おそらく、友達に向ける執着ではない。
     出久は自他ともに認めるしつこく諦めの悪い人間だ。お節介だとか、粘り強いだとか、言い方はいろいろあるけれど、例えば無個性発覚時、例えばオールマイト、例えば爆豪勝己、例えば救いを求める者。形は違えど、なにかひとつ見つけたら、出久が納得できるまでしがみつき続ける。幼馴染みに「どれだけぶったたいても張り付いてくる」「気色悪い」と言わしめたしつこさ、あきらめの悪さがある。
     だけど、それはヒーロー活動に関する方向へずいぶん振り切っていて、日常生活やただの緑谷出久とし過ごしているときはそうでもないのだ。多分。まあ、オタクなのはいつだって一緒なのだけれど。それは部屋の隅にでも置いておいて。
     だからいくらこういう方面に疎い出久でも、ロディに対して必死になってしまっている自分に気づいたとき、この執着心がなんなのか理解できてしまった。
     だって、ロディと再会できてうれしい。こんな風に会ってくれて、連絡をくれて舞い上がる。ロディの言葉の端々にこれまで出久のことを忘れたことがなかったというニュアンスが自然と溶け込んでいるのがたまらない。ロディが気を許してくれるのがむずかゆくて、彼の表情の変化ひとつひとつに心をうごかして。会えば会うほど、もっと知りたくなって、もっと一緒にいたくなって。やっといつだって聞けるようになった彼の声を、二度と忘れたりなんかしたくなくて。
     雄英高校を卒業したヒーロー仲間たちとはまた違う。彼らは仲間で戦友で学友で、かけがえのない存在なことには変わらないけれど、彼らが楽しそうに、嬉しそうに笑うとき、出久も楽しく幸せな気持ちになるけれど、でも、ロディ相手だと違うのだ。ロディが楽しそうに、嬉しそうに笑うとき、出久もその場にいてみていたい。その笑顔を作るのが、ほかの誰でもなく、出久起因だったらいいと思う。
     この執着心が友達に向けるものとは違うと自覚したのは、前々回の逢瀬のときだった。待ち合わせ場所にすでにいたロディに声をかけようとしたとき、ロディは電話をしていて、少し離れたところから声をかけようとした出久は慌てて口をつぐんだ。ロディは出久に気づかないまま、そのまま電話を続けていて、そして花が綻ぶように、やさしく笑ったのだ。その笑顔に、何の話をしているんだろう、という考えよりも、誰にその笑みを向けているんだろうと体の奥の何かがざわりとして、そうして自覚してしまった。電話を切ったロディが出久に気づいて、よっと片手をピノと一緒にあげ軽く微笑みかけてくれたので、すぐにざわめきは軽減されたけれど、それも判断材料のひとつだった。
     好きだ。ロディのことが。独り占めしてしまいたくなるくらい、ロディという存在が、どうしようもなく好きだと気付いてしまったのだ。
     思えば、数日の関わりしかなかったロディに対して持っていた執着がそもそもおかしかった。好きを自覚してから出久は自分に頭を抱えた。過去、友達に会うために連休をもぎ取ったことなどなかった。ロディに会おうと決意した時点で、きっともうこの気持ちは走り出していた。
     ロディは出久に「普通」をくれる。ヒーロー活動で、ヒーロー仲間と一緒にいると麻痺していく感覚を、リセットしてくれる。そしてリセットされたただの緑谷出久と一緒にいることを純粋に楽しんでくれる。まあ、これは多分だけれど、そう信じたい。
     そんなわけで、まあ。今回のお泊り会で、ロディを少しでも口説けたらいいなと思っているわけで。せめて脈在りかどうかくらいは、見極めたいと思ってもいるわけで。恋愛偏差値四の出久だけれども、成就に向けて頑張りたい所存である。
     ――大丈夫、インターネットにあった「脈なしだとわかる相手の態度二十選」はスマートフォンの充電が切れるまで読み込んだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞💞💞💞💞💘💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works