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    mame

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    mame

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    ロディ誕生日小話。出+ロ(ロ不在)のブロマンス。おめでとう!

     彼がハンドルを握りながら口ずさんでいた鼻歌を、いまでもよく覚えている。
     何気ない、とりとめもない会話を、国境へ向かう道中たくさんした。その会話の中で誕生日の話題が出たのは自然だったのかもしれない。出久がロディに年齢を聞くと、意外とあっさり年齢を教えてくれた。
    そこで同じ歳なのが発覚して、誕生日を聞きあって。自動車の運転していいの!? と出久が驚くと、オセオンは十六から免許とっていいと教えてくれて。日本は十八からだと教えると、お互いの国の違いに話題が流れて行って。病院の入院中、そういえば懺悔するけど、と子ども同士が内緒話をするように耳をよせて、ロディは「十六から運転免許とっていいけど、俺が免許持ってるとは言ってねえ」と宣い、出久の目をまるくさせた。もお、と出久がじとりとした視線を向け口を尖らすと、ロディがけらけら笑った。歯を見せて無邪気に笑うロディの顔は、まるで憑き物がとれたみたいだった。


    「さっきの、なんの歌だ?」
     いつのまにか口から洩れていたらしいそれは、今朝カレンダーを見てから脳内にずっと流れていた音だった。出久の出勤ルートとたまたま同じルートの轟と道端で偶然鉢会ったとき、くちずさんでいた。
    「わからない」
    「わかんない歌を歌ってたのか、そんなのこと可能なのか」
     出久の隣で盛大に眉間に皺を寄せる轟をひとつ笑ってから、出久はえっと、と言葉を探す。顔の造形が整っていて、個性も正義感も強くて、性格も問題なしのプロヒーローショートは相変わらずプライベートだとすこしかわいい。彼に御幣なく説明するには、と斜め上を見る。白い雲が、風で尾を引くように細かく伸びていた。天候は、晴れ。水色の空が広がっていた。
    「音だけ知ってる。曲名も歌詞もわからないんだ。ロディが口ずさんでたの、そのまま覚えちゃっただけだから」
    「ロディってオセオンのか。連絡とってんのか?」
    「たまに手紙のやりとりしてるよ。航空専門学校に春から通いだすんだって」
    「へえ……アイツ、普通に飛行機運転できるのにな。学校で免許とらなきゃいけねえの、まどろっこしいな」
    「あはは、確かに。お金ためて、ようやく行けるみたい」
     ロディとオセオンの空港で別れて数年。彼の妹が、出久に手紙を出したいといったことをきっかけに、雄英高校へ手紙をロディが送ってくれた。もちろんこれはロディ談だ。実際の理由はソウル家のみぞ知る。
    相沢から渡されたエアメールには、ララからのイラストと、手紙。ロロからの手紙。そして、ロディからの手紙も入っていた。世界を揺るがしたOFAとの闘いから数か月たって届いたその手紙には、トレーラーハウスのテレビでワールドニュースを見ていたこと。そして世界を救った出久を、お前と関わったひとりの人間として誇りに思う、とシンプルに綴られていた。遠く、オセオンから届いた手紙が、出久をどれほど喜ばせたか、きっとロディは知らないし、考えもしないだろう。
    それから、数か月に一度。大体、日本の季節がひとつ変わるくらいの頻度で、ロディとの文通が続いている。彼との連絡手段は、それだけだ。だから、近況は手紙で知っていても、ロディの姿がいまどんな姿かはわからない。
    「じゃあもう三年くらい会ってねえんじゃねえのか。よく覚えてるな」
    でも、あの日、ロディが口ずさんでいた、歌詞も曲名もしらない歌のメロディだけは、しっかり覚えている。
    「うん。もしかしたらメロディも間違えて覚えちゃってるかもしれないけどね。今日はロディの誕生日だから、朝からずっと頭のなか流れてて」
    「へえ、二月なんだな」
    「うん、以外だった。なんだか、秋っぽいよね」
    「なんだそれ。誕生日にぽい、とかあんのか」
    「え、ない? 轟くんは冬っぽいよ。実際一月だから、ぽいなあって思ってた」
    「よくわかんねえ……ああ、でも確かに緑谷は、初夏っぽい。真夏じゃねえよな」
    「そう?」
    「ああ」
     隣で轟が口元に笑みを浮かべるのをみて、出久も微笑んだ。ヒーローコスチュームが入ったケースを、ぐっと握りしめ、空を見上げる。広がる空に、先ほどはなかった、一筋の飛行機雲が目に入る。その光景に笑みを深めて、出久は遠い空の下にいる友人の誕生日を静かに祝った。
    ――また会いにくるよ、と言って、未だに会いにいけていない。そんな出久が、突然オセオンに行ったら、ロディはびっくりするだろうか、と近い未来の想像をしてみる。実は今年の夏に会いに行こうとこっそり計画を練っているのだ。数か月遅れの誕生日プレゼントは、何がいいだろう。
    ねえ、ロディ。誕生日、おめでとう。
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