脱兎!雪だ!
雪が降った!
雪が降った!
天気予報に見え隠れする雪だるまがやっと白い雪を降らせた。
12月も半ばを過ぎた22日。想い人である伏黒恵の誕生日を祝うため、狗巻棘はどうしても雪が降ってほしかった。
降り始めた雪は弱弱しく、かすかに積もった雪を集めて小さな半球を作る。用意しておいた南天の葉を2枚差し、赤い実を2つ埋め込めば小さな雪ウサギの完成だ。
バケツに用意した南天は授業でのランニング中に敷地内で見かけたものだ。勤勉な伏黒はやれ冬の季語だの喉飴の材料になるだのと高説を垂れ、最後に脱兎の目みたいだと優しく笑った。その時に狗巻棘は決めたのだ。今年の誕生日には南天で作った脱兎を贈ろう。雪の少ない東京で誕生日に脱兎の群れを贈れたら、ついでに告白してもいいかもしれないと。
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