蛇は花を愛でるか レディ・アヴァロンも加わった船内は楽しげな雰囲気で満たされ、特異点とはいえ夏の風物詩となっているせいか心なしか笑顔の多いマスターや未だに怪しい道満の様子を遠巻きに見ながら、アスクレピオスは医療キットの最終点検を行なっていた。
「先生もたまにはあの中入ってきたらどうだい?」
そう声をかけられた方に視線をやると、程よく冷えた水を差し出された。水道のやつだから安心しなと言われればそれまでで、そのグラスを受け取るしかない。
キリも良いのでそのまま飲むか、と口をつけた。ほんの少し塩味を感じたのでこの水を渡してきた男──燕青をチラリと見る。
「赤い弓兵さん直伝、熱中症対策ってな? まぁ本当にそこの水道の水から作られてるし、主将からアスクレピオスは大丈夫だって分かってるけど渡してきて欲しいってさ」
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