妖怪ろくろ回し☆quiet followMOURNING殺生丸と刀々斎(妄想) ##半妖の夜叉姫 * カーン カーン 小気味いい音が鳴る。人っ子一人見当たらない薄いぐらい洞穴で老翁が刀を叩く音は恐ろしいほどに響き、無言の続く空気を叩き割る。「(だぁから嫌だったんだけどなぁ)」 口から火を噴く刀鍛冶の妖怪はいつまでも慣れることのない妙な緊張感に冷や汗を垂らした。 犬の大将から頼まれていなければ金輪際関わりたくないとすら思えるその刀の持ち主たる妖怪は口を閉じたまま刀々斎の近くで微動だにせず座ったままだ。すぐ終わる、その辺で待っていろと告げたのは老妖怪自身だが、出来上がったら持って行くとでも言えばよかったと遅すぎる後悔を今更ながら抱く。 随分と丸くはなったものの、それでもこの殺生丸という男は気まぐれが服を着て歩いているようなものだ。以前ほど激しい気性ではないし、出会い頭に「殺すぞ」なんて物騒な言葉を投げつけてくることもなくなったが、それでも不機嫌を丸出しにした殺生丸とは口を聞きたくないのが本音だ。「……刀々斎」「んだ」 弟と共々揃って人間の小娘に入れ込み、あろうことかその間に娘まで儲けてもその性格はひん曲がったままだ。「私は 父上と同じ轍は踏まぬ」「まだなんも言ってねぇだろ」 思い出せないほどに遠い遠い昔。 殺生丸とよく似た姿の妖怪が己の牙で刀々斎にひと振りの刀を打たせた。そして鉄砕牙というその牙から天生牙と名付けられたそれを打ち分けた。その妖怪、殺生丸の実父が抱いた刀への真意は今も知れないが、過程と結果を追えば多くの血が流れたのは間違いない。血を分けた兄と弟が(一方的ではあるが)命を奪い合い、牙を求め憎しみあい、共通の敵を抱きながらも啀(いが)み合った。「私は 父上とは違う」 父亡き今、犬一族の大妖怪として名を馳せはじめた殺生丸はそう口にした。 この世で最も尊敬し、敬愛し、そして憎みもした父親は亡骸すらもうこの世に存在しない。『あの世』にも在らず、『この世』にも在らず。骨の一片すら今世に遺すことのなかった父をしかし、息子は否定した。「ちったぁおやじどのの心も分かるかとは思ったがよ」「……」「ま、無理強いはしねぇよ」 名前はたしか、永遠(とわ)と刹那(せつな)。 らしいと言えばらしいが、それにしても皮肉が過ぎる名を娘たちに与えたものだ。刀々斎はその姿を未だ見たことはないが、殺生丸という妖怪の娘たちである以上、いつかは巡り会うことにはなるのだろう。 二人いるならお前さん、もう一本牙でも研ぐか? なんて尋ねて危うく折角こしらえた新居ごと爆砕牙の餌食にされそうになったことは忘れもしない。あれは本当に危なかった。けれどいずれ道は避けられぬ。娘たちが半妖であるのなら、弟・犬夜叉と同じ。命の危機が迫ったその時には己でも制御不能な妖怪の血に呑まれてしまうのは目に見えている。その上、娘たちに流れるはあの殺生丸の血。手綱を持つことのできない血に弄ばれ、彼女たち自身が傷つくなんてことは殺生丸も望んではいないだろう。 望んでいたかは別だが、弟という血縁者の半妖を見てきた殺生丸がそれを分かっていないはずもない。重々承知の上のこと。「私は 娘たちを殺しあわせたりなどはせぬ。……絶対に」「……バカ兄が何言ってんだ」 お前さんたちのおやじどのだってそう思ってたに決まってるだろうが。 とは言えぬ。 何せ口では父とは違うと叫びながらも殺生丸もまた、『それ』を解しているからだ。犬の大将は決して兄弟を殺しあわせるためにあの牙の刀を託したのではないことを。 守り刀が必要なのは──天空に住まう女妖怪との合間に生を受けた殺生丸ではなく、薄幸の姫君・十六夜の血を持つ犬夜叉であっただけのこと。「……明日取りに来る」 母親譲りの美しく長い白金(しろがね)の髪が流れ、男は立ち上がる。「そうしなそうしな。……バカ弟に会ったら伝えとけ、そろそろ研いでやるってな」「……」 もう殺しあう理由はない。 互いに人間の小娘を愛し、互いに人と妖の血を持つ娘を持ち、刀の因縁からはとうに解き放たれているというのに。だというのにまだ殺生丸は頑なに犬夜叉を弟と認めないあたり、それは父母どちらから受け継いだ性質ではなく彼生来の『ひねくれ』なのだろう。 そんなあの男が同じ血を継ぐ二人の娘に果たして何を与え、何を遺し、何を為すのか。「知ったこったぁねぇがよ」 徐々に足音は消えて行く。 何にしたって、同じ父を持つ兄弟や姉妹が殺しあうのはもう御免だ。 刀々斎は槌を振るう。 慈愛の心が在らねば扱えぬ癒しの刀に向かって。Tap to full screen .Repost is prohibited 妖怪ろくろ回しMOURNING翡翠とせつな*「あぁもう、何を怒っているんだ!」「構うなと言っているだろう!」「だから、それがなぜだと聞いているんだ、せつな!」 かしましい声があぜ道に響き渡り、ずんずんと大股で歩くせつなを追って小さな化け猫を抱えた翡翠が重たい飛来骨を背負って走る。なぁ、話を聞け、いいから、とにかく。そう言ったって眼前を進む年下の少女は聞く耳を持ってくれそうにはない。 しかし呼び止めようとする側の翡翠もまた、伝えたいことはたくさんあるのに伝えるべき言葉はなにも浮かばない。 けれどここで彼女を見送ってしまってはいけないと青年はもう一度「せつな!」と大きな声で名を呼んだ。「……」 そして、娘は立ち止まる。「叔父上の話を聞いていたろう。お前が半妖だからといって……」「……」「あぁいや、そうじゃない。叔父上は関係なくて……その、俺はお前が半妖だとは知らなかった。腕っ節の強い女子(おなご)だとばかり思っていた」 しどろもどろに目を泳がせながら翡翠は言葉を選んではそうじゃない、違う、と一人芝居を繰り返す。 せつなはその姿に呆れてため息をつき、「……それがなんだと言う」 と言い放てば、目の前の 1932 妖怪ろくろ回しMOURNING弥珊と翡翠*「さぁともあれ酒です、翡翠。ほら珊瑚も」「えぇっ 酒?」「当たり前です。めでたいことがあれば酒。万病の薬でもありますから」「もう、法師さまは飲みたいだけでしょう?」「母上」「翡翠。父上の相手をしてやって」 金烏と玉兎もいればよかったのだが、と弥勒は徳利かに口をつけた。「母上まで」 翡翠は非難の声をあげたものの、苦笑を浮かべながらも肩に手を置いた母親がそう言うのだからそれ以上の悪口は飲み込んでしまう。母上は甘いんですよ、と苦し紛れの言葉も、「そうだね。だけど今日くらい許してやって」なんて言われてしまえばそれで終わり。「珊瑚、ほれ珊瑚。お前もだ」「私はいいよ」「いいからいいから」「あっ もう」 引っ張らないで法師さま。 珊瑚は言われるがままに弥勒の前に腰を下ろすと、押し付けられた盃にとくとくと音を立てて注がれる香り高い酒を鼻で味わった。「母上まで」「……いいんだ、翡翠」「いやぁ、これで私の夢はひとつ、叶いましたね」「そうだね、法師さま」「夢? どういうことです、父上 母上?」「まぁまぁいいから。とにかくお呑みなさい、翡翠」「はぁ」 いささ 2128 妖怪ろくろ回しMOURNING殺りん*「りんは……きっと死んじゃうね」 十年先か、二十年先か、五十年先か、それとも明日か。 それは誰にも分からない。いかな殺生丸といえども、天に座すあの全智を持つとすら見える彼の母親であれど、誰一人としてそれは分からない。更に言えば、死すはりんではなく殺生丸やもしれぬ。 命とはそのようなものだ。「……」「でもね、桔梗さまがそうだったみたいに……もしかしたら、生まれ変わってまた会えるかもしれないね」「……」「そしたら殺生丸さま、りんを見つけてくれますか?」「断る」 殺生丸は即答した。 何を血迷ったことを言っているのかとも言いたげな視線を少女にやった妖怪はしかし、膝の上で困惑した表情を浮かべたりんの髪の毛に長い指を差し入れた。指であっても通らぬほど強張った髪に彼は少しばかり目を細める。「殺生丸さま……」 あのかごめという女は。 桔梗という名の、犬夜叉などという半妖に心を奪われた巫女の生まれ変わりであるというのは事実だろう。だが、間違いなくあの女は『別人』だ。最初こそ似た匂いを纏わせてはいたが、桔梗の多くを知らぬ殺生丸ですら彼女らの言動は互いにかけ離れてた場所にい 1548 妖怪ろくろ回しMOURNING三人娘* 手繰る。 今までの大切な記憶たちを。 縄を綯うようにもうずっとずっと昔のことにすら思える、今までのことを。 思い出せなくたって過去を捨てる必要なんてないんだ、と教えてくれた姉を名乗る仲間がいた。思い出したくもない、忘れたいことまで無理に覚えておく必要なんてないんだ、と教えてくれた従姉妹を名乗る仲間もいた。「全く、お節介な奴らだ」「誰がお節介だって?」「……自覚はあるのだな」「そりゃあ、毎回言われたらちょっとは自覚するってば」 いつからいたのか、とわは笑いながらせつなの隣に腰掛けた。「そうそう。とわはもうちょっと冷徹でもいいんじゃねえの? 双子だってのに、せつなとは正反対だな」「もろは」 頭の後ろで腕を組みながらやってきたもろはもまた、とわと反対側に座り込んだ。「はは。でもせつなだってお節介なときもあるよ」「私は……」「ま、確かに。変なところでせつなも頑固だし、妙なところで拘ったりしてさぁ」 そのせいで散々な目に遭ったこともあったっけ。火鼠の衣を纏った少女はけらけらと声をあげた。「で、結局みんな揃って振り回されてさ」と続け、長い階段を降った先、楓の 1578 妖怪ろくろ回しMOURNING弥勒と翡翠*「ほう! これはまた、久方ぶりのものを……」「知っているのですか、父上」「あぁ。昔はよく、旅すがらいただいたものです。この背徳的とも言える味、いやぁ 懐かしい限りです」 サク、サク。 せっかくだから少しお父さんと話していきなよ、これでも食べてさ。 そう言ってとわがくれたのは翡翠が今まで見たこともない異国の菓子であった。きっちりと封をされているはずの袋を裂いて開ければあら不思議、濃厚な匂いがあたりに広がった。「奇怪な味だ」「なれど癖になる。いやはや思い出しますなぁ。こうしてよく、他愛のない話をしながらつまんだものです」 隣には雲母を膝に乗せた珊瑚がいて、かごめがいて、七宝と犬夜叉が最後の一粒を取り合って。 甘ったるい果物の汁を分けあって飲んだこともあった。口内に弾け飛ぶ刺激の強い、薬のような味のする甘い汁を飲んで犬夜叉が大暴れしたこともあった。とわが持っているものと似た、やはり大きな背負い袋を抱えた異国人のかごめがこうして菓子を広げてくれて──様々な飲食物を勧めてはくれたが、弥勒は知っている。この菓子を持ち込めるのは限りがあって、貴重なものだということを。 仲 1338 妖怪ろくろ回しMOURNING殺生丸と両親* 殺すも生かすも心次第。 然れど、いつ如何なる刹那であろうとも、殺そうとも生かそうとも忘れてはならぬことがある。命を愛でよ、それが殺すべき息の緒であれ生かすべき玉の緒あれ、分け隔てることなく。「皮肉な名前をつけたものだ」 故に、殺生丸と。 命を尊ぶ者になってほしいという願いと祈りの込められた赤子はしかし、そんな父の想いなど我知らず。とんだ暴れ馬となったものだ。気の食わぬ者は妖怪であれ人間であれ毒爪の餌食とし、ころころ玉遊びのように他者の命を奪うかつての可愛らしい赤子は、今まさに母の膝上で寝息を立てていた。「元気がよいのは結構だが……もう少し父としては慈しみの心があってもよかったと思うが……」「慈しみ、のう。闘牙さまの目は節穴か」「むぅ」「弱き者を苦しまずに殺してやるのもまた、慈悲の心だとは思いませぬか?」「……まぁ、下から数えれば……そうなるやもしれんが」 少なくとも今はまだ相手を嬲り殺すような遊びを覚えてはおらぬだけよい。 そんな言い方の佳人に闘牙王は大げさなため息を零したが、見目麗しき細君は気にした様子もなく笑みを美しい唇に浮かべたままだ。「それに、 1429 recommended works 雪風(ゆきかぜ)。DOODLE寝起きとわちゃん 点(ちょぼ)DOODLE【犬夜叉】新しく描いたらここに画像を追加していく。(最終更新:2020/11/16) 4 雪風(ゆきかぜ)。DONEとわちゃんのお正月! 火燈弥紗💀🔥Skeb募集中DONE半妖の夜叉姫13話の変化したせつなの姿をかっこいいと言ってくれるとわ※せつとわ ヨタカDONE殺生丸様は演技派 雪風(ゆきかぜ)。DONE今日は15話放送日。せつなが大好きなとわちゃんかわいいな~ 雪風(ゆきかぜ)。DONE今日は17話!11話で、千代ちゃんに救いの手をさしのべるとわちゃんがイケメンすぎた。惚れる。 雪風(ゆきかぜ)。DOODLE幼少期から大切な人を想い続け、悲しい思いをしたとわちゃんが嬉し涙を流せる日が来ますように… 雪風(ゆきかぜ)。TRAININGデジタル練習兼ねて