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    妖怪ろくろ回し

    ほぼほぼネタ箱。
    夜叉姫は先行妄想多々。

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    妖怪ろくろ回し

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    琥珀と邪見

    ##犬夜叉

    *


     また難題を。
     燕の子安貝を取ってこいと言われた方がましやもしれない、こんなことでは。否、命じられた『使い』の難易度はそれほど高くはない。ただ単に「着物を買ってこい」と砂金の詰まった巾着を投げつけられただけだ。
     たったそれだけのことではあるが、相手が悪い。
    「(殺生丸さま、そういうところあるよな……)」
     見た目こそ見目麗しい妖怪であるが、蓋を開けてみれば傍若無人と言っても過言ではない男だ。確かに、琥珀には殺生丸に命を守られた恩義はある。それはあれど、だからといって使い走りになったつもりもなくば下僕になったつもりもない。
    「なんだ琥珀、浮かん顔をして」
    「……殺生丸さまご自身のほうがこういうの、向いてると思うんですけど」
    「ばぁか。あのお方が慣れてたらそれはそれで怖いわい。あれくらいでちょうどよい」
    「そんなもんです?」
    「そんなもんじゃ」
     齢数百といえど、あの殺生丸という妖怪は今の今まで女に貢物などしたことはない。
     父が母に贈り物をし、そして十六夜という人間の小娘にも多くのものを与えたことは知っている手前、男は女に貢ぐものだと考えている節すらある。それはいい、それは。
     だが贈り物を自ら調達するという意志はあまりないらしい。
    「そういう意味じゃないと思うんだけどなぁ」
    「仕方あるまい。……犬だし」
    「……邪見さま」
    「ほれ。犬夜叉も犬であろう。殺生丸さまとくればそれも半妖ではなくご母堂さまも犬ときた」
    「いつもそんなことをお考えだったんですか」
    「……決して言うまいぞ琥珀。わしだって命が惜しい」
     犬だし。
     そんなところまで頭回ってなさそう。
     邪見は阿吽の上でくちばしを尖らせた。
    「りんは殺生丸さまがくれるものならなんでもいいと おれは思います」
    「珍しく意見があうのう、琥珀」
    「……おれもおなごの心なんて分かりませんが、りんが欲しいのは……」
     殺生丸さまのお心そのもの。
     きっと突き詰めれば贈り物それ自体に意味はない。そして殺生丸はそれを未だ知らず、りんもまた伝えられないまま。
     振り回される身にも少しはなってほしいが、それでも以前に比べれば棘の抜けた殺生丸は付き合いやすいとは言えずともまだ意思の疎通が可能だ。一方的な物言いといい高圧的な態度といい近寄りがたくなにを考えているかは分かりづらいが。
    「さてはて、そのようなことを殺生丸さまがお気づきになるのはいつになることやら……」
    「おれはあと半年は気づかないと思います」
    「……わしは一年じゃな」
    「…………退治屋の里に大きな柿の木があるんです」
    「ほう? わしもかつての下僕どもが大きな桃を育てておってな……」
    「「……」」
     賭けは 決まり。
     そのどちらもの予想を覆す、殺生丸が『それ』に気付くまで二年は要し──呆れた邪見と琥珀が柿と桃を互いに贈りあったのはまた 別の話。
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    妖怪ろくろ回し

    MOURNING弥勒と翡翠*


    「ほう! これはまた、久方ぶりのものを……」
    「知っているのですか、父上」
    「あぁ。昔はよく、旅すがらいただいたものです。この背徳的とも言える味、いやぁ 懐かしい限りです」
     サク、サク。
     せっかくだから少しお父さんと話していきなよ、これでも食べてさ。
     そう言ってとわがくれたのは翡翠が今まで見たこともない異国の菓子であった。きっちりと封をされているはずの袋を裂いて開ければあら不思議、濃厚な匂いがあたりに広がった。
    「奇怪な味だ」
    「なれど癖になる。いやはや思い出しますなぁ。こうしてよく、他愛のない話をしながらつまんだものです」
     隣には雲母を膝に乗せた珊瑚がいて、かごめがいて、七宝と犬夜叉が最後の一粒を取り合って。
     甘ったるい果物の汁を分けあって飲んだこともあった。口内に弾け飛ぶ刺激の強い、薬のような味のする甘い汁を飲んで犬夜叉が大暴れしたこともあった。とわが持っているものと似た、やはり大きな背負い袋を抱えた異国人のかごめがこうして菓子を広げてくれて──様々な飲食物を勧めてはくれたが、弥勒は知っている。この菓子を持ち込めるのは限りがあって、貴重なものだということを。
     仲 1338

    妖怪ろくろ回し

    MOURNING殺生丸と両親*


     殺すも生かすも心次第。
     然れど、いつ如何なる刹那であろうとも、殺そうとも生かそうとも忘れてはならぬことがある。命を愛でよ、それが殺すべき息の緒であれ生かすべき玉の緒あれ、分け隔てることなく。
    「皮肉な名前をつけたものだ」
     故に、殺生丸と。
     命を尊ぶ者になってほしいという願いと祈りの込められた赤子はしかし、そんな父の想いなど我知らず。とんだ暴れ馬となったものだ。気の食わぬ者は妖怪であれ人間であれ毒爪の餌食とし、ころころ玉遊びのように他者の命を奪うかつての可愛らしい赤子は、今まさに母の膝上で寝息を立てていた。
    「元気がよいのは結構だが……もう少し父としては慈しみの心があってもよかったと思うが……」
    「慈しみ、のう。闘牙さまの目は節穴か」
    「むぅ」
    「弱き者を苦しまずに殺してやるのもまた、慈悲の心だとは思いませぬか?」
    「……まぁ、下から数えれば……そうなるやもしれんが」
     少なくとも今はまだ相手を嬲り殺すような遊びを覚えてはおらぬだけよい。
     そんな言い方の佳人に闘牙王は大げさなため息を零したが、見目麗しき細君は気にした様子もなく笑みを美しい唇に浮かべたままだ。
    「それに、 1429