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    妖怪ろくろ回し

    ほぼほぼネタ箱。
    夜叉姫は先行妄想多々。

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    妖怪ろくろ回し

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    殺生丸ととわ(妄想)

    ##半妖の夜叉姫

    *


    「この髪、好きじゃなかった」
     娘は告白した。「この髪の色のせいで……色んな奴らに目つけられて。本気になればあんな奴ら一発だったけど、草太パパと約束したから」と。
     だからいつもやりすぎない程度に反撃して返り討ち。けれど中途半端に闘争心に火をつける結果となり、喧嘩を売られるたびに相手の人数は増えていった。白髪、脱色、ヤンキー、メッシュ女。今まで言われた悪口の数々はもう覚えていないほど。
    「……」
     父親は黙ってそれを聞く。
    「私は……自分が半妖だって知らなかった。せつなの髪は真っ黒で……私は白くて。昔はなんとも思わなかったんだ、髪の色なんて。草太パパも萌ママも芽衣も私とは違う色だったけど……気にしたことなんて なかった」
     けれど街へ一度出れば。
     自分と同じ髪色の子供なんて見たことがなかった。お父さん外国人? とか、お母さんは? とか、親の話を聞かれてもとわは何一つ答えることもできなかった。草太だけはとわが何を言おうとも信じてくれたし、彼女の髪の色も「綺麗だね」と言ってくれていた。
     それでも好きにはなれなかった。
    「……だから厭うか」
     この髪を。
     するととわはふるふると首を横に振った。
    「そう思ったこともあったけど。今は……そんなこと 思わないよ」
     人ならざる髪色であっても。
     すると殺生丸はどこか考えを巡らせるようなそぶりを見せてから口を開いた。
    「……この髪は」
    「え?」
    「父も 母も同じ色だ。……あの犬夜叉めもだ」
    「そういえば……」
    「一族の誇りだ」
    「……うん。今は思うんだ、私 この髪の色、大好きだ」
     黒を敷き詰めた空に輝く月明かりよりも美しく、大輪の白椿よりも透き通り、けれど貝殻よりも複雑な色変わりを見せるこの髪色が。
     せつなの宵闇色の髪の毛もまた、母親譲りだと言うのだから同時に美しい。一度でもとわはそんな己の髪色を憎いとも思ったことを後悔するほどに、今は父と、その父母と同じだと言う犬一族が代々引き継いできた色を愛していた。
     黒檀と白雪に差す、一筋の赤。血にも似た色をしたその一房が鏡合わせの双子を繋ぐ赤い糸。
    「りんに似たな」
    「えっ」
    「寝癖」
    「あ……あっ…………って。ママも寝癖すごいの?」
    「……」
     無言の首肯。
     あまり身だしなみに頓着しない性格もあるからか、母親の長い髪はよく跳ね回っているのだと父は教えてくれた。業を煮やした殺生丸や邪見が髪油を持って追い回すこともあれど、今目の前で跳ねた髪束を恥ずかしそうに押さえたとわの姿を見れば分かる。
    「……じゃあ、せつなはパパ似だね」
     長い長い黒髪は母に似ておれど、美しく流れる川面のような滑らかな髪質は殺生丸のそれと瓜二つである。櫛が逃げていくようにさらさらと風になびく髪の毛は少しだけ羨ましい。
     いつか会ってみてみたいな、とわの本当のパパ。
     そう言ってくれたのは草太パパその人だ。きっと素敵な人なんだろう、とわとせつなを見ていたら分かる。分かるよ、きっとパパは君たちを愛してる。なんて。
     だからこそ髪色をダシに喧嘩を売られたとわを慰めることはあっても、染めようか? とか、隠す? とか言うことはなかった。
    『だってそれは 君が本物のパパからもらったものだから』
     とは 言ってくれた。
    「何が可笑しい」
    「ううん。……草太パパの言う通りだなって。そう思っただけ」
    「?」
    「今度写真持ってくるよ。草太パパのこと、パパにも知ってもらいたいし!」
     話が読めないとばかりに訝しげな表情を作る殺生丸に、とわはとてつもなく嬉しそうに微笑んだ。
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    妖怪ろくろ回し

    MOURNING弥勒と翡翠*


    「ほう! これはまた、久方ぶりのものを……」
    「知っているのですか、父上」
    「あぁ。昔はよく、旅すがらいただいたものです。この背徳的とも言える味、いやぁ 懐かしい限りです」
     サク、サク。
     せっかくだから少しお父さんと話していきなよ、これでも食べてさ。
     そう言ってとわがくれたのは翡翠が今まで見たこともない異国の菓子であった。きっちりと封をされているはずの袋を裂いて開ければあら不思議、濃厚な匂いがあたりに広がった。
    「奇怪な味だ」
    「なれど癖になる。いやはや思い出しますなぁ。こうしてよく、他愛のない話をしながらつまんだものです」
     隣には雲母を膝に乗せた珊瑚がいて、かごめがいて、七宝と犬夜叉が最後の一粒を取り合って。
     甘ったるい果物の汁を分けあって飲んだこともあった。口内に弾け飛ぶ刺激の強い、薬のような味のする甘い汁を飲んで犬夜叉が大暴れしたこともあった。とわが持っているものと似た、やはり大きな背負い袋を抱えた異国人のかごめがこうして菓子を広げてくれて──様々な飲食物を勧めてはくれたが、弥勒は知っている。この菓子を持ち込めるのは限りがあって、貴重なものだということを。
     仲 1338

    妖怪ろくろ回し

    MOURNING殺生丸と両親*


     殺すも生かすも心次第。
     然れど、いつ如何なる刹那であろうとも、殺そうとも生かそうとも忘れてはならぬことがある。命を愛でよ、それが殺すべき息の緒であれ生かすべき玉の緒あれ、分け隔てることなく。
    「皮肉な名前をつけたものだ」
     故に、殺生丸と。
     命を尊ぶ者になってほしいという願いと祈りの込められた赤子はしかし、そんな父の想いなど我知らず。とんだ暴れ馬となったものだ。気の食わぬ者は妖怪であれ人間であれ毒爪の餌食とし、ころころ玉遊びのように他者の命を奪うかつての可愛らしい赤子は、今まさに母の膝上で寝息を立てていた。
    「元気がよいのは結構だが……もう少し父としては慈しみの心があってもよかったと思うが……」
    「慈しみ、のう。闘牙さまの目は節穴か」
    「むぅ」
    「弱き者を苦しまずに殺してやるのもまた、慈悲の心だとは思いませぬか?」
    「……まぁ、下から数えれば……そうなるやもしれんが」
     少なくとも今はまだ相手を嬲り殺すような遊びを覚えてはおらぬだけよい。
     そんな言い方の佳人に闘牙王は大げさなため息を零したが、見目麗しき細君は気にした様子もなく笑みを美しい唇に浮かべたままだ。
    「それに、 1429

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