妖怪ろくろ回し☆quiet followMOURNING殺りん ##犬夜叉 * 似合わん。 殺生丸は言い放った。 酉か、坤か。ちょっとした気まぐれで訪れた地で見つけた珍しい果物を手土産にりんが暮らす村に立ち寄った彼を出迎えたのは、縄を片手にずるずると床に幾重も着物を引きずった少女の姿であった。「殺生丸さま、来てくれたんだ! それはなに?」「……葡萄だ。……りん、なんのつもりだ」 似合わぬ紅まで点して、髪まで結って、まるでどこかの姫のような格好で。だというのに彼女は縄を綯っていたのだからちぐはぐだ。「あ、これは……その」「……察しはつく」 どうせ殺生丸が不在のうちに下界に『遊び』にきた母の仕業だろう。 彼女が手に余るほど持つ着物を時折持って来てはりんを人形のように立たせて好き勝手着せ遊んでいることは知っている。「ごめんなさい」「謝る必要はない」「……はぁい。……似合わない、かぁ」 むぅ、とりんは少しだけ残念そうな顔をする。「……巫女はどうした」「楓さま? 珊瑚さまに用事があるって。それで、りんはお留守番」 縄をその場に放り投げ、がさごそと乱暴な手つきでりんは身を巻く帯を取り去り、あれやこれやと美しい着物を脱ぎ去っていく。これ、どうなってるんだろうと言いながらあれやこれやと引っ張って無理やり着物を脱いでいくのだから、やはり母が着せたのだろう。 どうせ「これだけ粧し込んで出迎えれば殺生丸もきっと喜ぶだろう」なんて悪戯めいた笑みを浮かべてりんにあれやこれやに吹き込んだに違いない。「こういうの、かごめさまなら似合うのかな」「……似合うはずもない」 今でこそ巫女装束を身につけているが、あの女は奇怪な着物をまとい、素足の大半を晒して奈落の体内までやってくるような人間だ。「珊瑚さまは?」「…………」 もう一人もまた。彼女もまた骨の塊を片手で振り回すような女子(おなご)だ。「……だよね。りんたち、お姫さまじゃないもん」「……その着物は……父上が遺したものだ」「え……」 見覚えがある。 西国で織られたそれはまさしく『姫君』のためのもの。「十六夜に渡すつもりだったものだ」「……いざよい……」 犬夜叉の母、殺生丸の父が愛した人間、既に亡き月華の姫君。 聞き覚えのある名前にりんは顔を上げた。殺生丸に贈られた着物姿に戻った彼女は脱ぎ去った触り心地のいいそれに手を伸ばす。「父上が死に……意味を喪ったものだ」「……そう、だったんだ」 あの日止まった時間は凍りついたまま動くことはなかったはずだった。 母が住む御殿の奥に仕舞い込まれた多くは父が十六夜に贈ろうとしていた楚々たるものの数々。次会ったときに渡そうと思う、それまでここに置いておかせておくれ。せっかく着物を持っていったのに人間たちに追い返されてしまったよ、だからしばらく置かせてくれ。全く、せっかく珍しい果物を持って行こうとしたのに竜骨精に邪魔をされてしまった。もう腐って食べれぬから、庭にでも埋めてくれ。 殺生丸の白い目など感じていないかのように父は二百ほど年を遡った冬の頃、両のかいなを使っても足らぬほどの貢物を全て置いて逝った。そのたびに母は「仕方がないおひとだ」と言いながらもどこか嬉しそうな顔をしていたことも彼は昨日のことのように覚えていた。「……捨ててしまえばよかったものを」 或いは、はじめからそんなものを遺して逝かなければ。「でも、捨てたら勿体ないよ」「言ったはずだ。もはや意味などないと」「…………捨てられなかったんだね お義母さま」「……」 あの母親がそんな感傷に浸る心を持っているかは分からない。 けれどきっとりんの言葉は正しいのだろう。終ぞ人間の手に渡ることのなかった、愛した男が嬉しそうに集めていたものたちを捨てるのは愚か、触れることすら。だからこそこうして今になってりんにあれやこれやと差し出してきたに違いない。「りんには似合わないけど……もらったらだめかな。きっとそのほうがいいよ」 突き返せば再び昏い倉の中で──それこそ、『終わり』を待つのみとなってしまう。「……それはお前がもらったものだ」「! それって……」「好きなだけ汚せ。好きなように使え。……お前の好きにするといい」「……はい、そうします!」 泥を拭いてもいい。 野菜を拭いてもいい。 褥と共に使ってもいい。 ただ、身にまとい十六夜が君のように笑ってみせるのだけは──やめろ。色とりどりの着物を装った深雪のなか微笑むような姫君などではなく、陽光のもと素足で駆け回るような童(わらべ)のほうがいい。 父上ならばきっと許してくれるだろう。 ずっとずぅっと眠り続けるのではなく、こうして想いを知った者が手にすることを。「……そんなものより……腐る前に食べてしまえ。足がはやい」 殺生丸はぐしゃぐしゃになった着物を奪い去ると、いつもより赤い唇をしたおよそ姫君からは遠い少女にたわわに実った葡萄を差し出された両手に乗せてやった。Tap to full screen .Repost is prohibited 妖怪ろくろ回しMOURNING翡翠とせつな*「あぁもう、何を怒っているんだ!」「構うなと言っているだろう!」「だから、それがなぜだと聞いているんだ、せつな!」 かしましい声があぜ道に響き渡り、ずんずんと大股で歩くせつなを追って小さな化け猫を抱えた翡翠が重たい飛来骨を背負って走る。なぁ、話を聞け、いいから、とにかく。そう言ったって眼前を進む年下の少女は聞く耳を持ってくれそうにはない。 しかし呼び止めようとする側の翡翠もまた、伝えたいことはたくさんあるのに伝えるべき言葉はなにも浮かばない。 けれどここで彼女を見送ってしまってはいけないと青年はもう一度「せつな!」と大きな声で名を呼んだ。「……」 そして、娘は立ち止まる。「叔父上の話を聞いていたろう。お前が半妖だからといって……」「……」「あぁいや、そうじゃない。叔父上は関係なくて……その、俺はお前が半妖だとは知らなかった。腕っ節の強い女子(おなご)だとばかり思っていた」 しどろもどろに目を泳がせながら翡翠は言葉を選んではそうじゃない、違う、と一人芝居を繰り返す。 せつなはその姿に呆れてため息をつき、「……それがなんだと言う」 と言い放てば、目の前の 1932 妖怪ろくろ回しMOURNING弥珊と翡翠*「さぁともあれ酒です、翡翠。ほら珊瑚も」「えぇっ 酒?」「当たり前です。めでたいことがあれば酒。万病の薬でもありますから」「もう、法師さまは飲みたいだけでしょう?」「母上」「翡翠。父上の相手をしてやって」 金烏と玉兎もいればよかったのだが、と弥勒は徳利かに口をつけた。「母上まで」 翡翠は非難の声をあげたものの、苦笑を浮かべながらも肩に手を置いた母親がそう言うのだからそれ以上の悪口は飲み込んでしまう。母上は甘いんですよ、と苦し紛れの言葉も、「そうだね。だけど今日くらい許してやって」なんて言われてしまえばそれで終わり。「珊瑚、ほれ珊瑚。お前もだ」「私はいいよ」「いいからいいから」「あっ もう」 引っ張らないで法師さま。 珊瑚は言われるがままに弥勒の前に腰を下ろすと、押し付けられた盃にとくとくと音を立てて注がれる香り高い酒を鼻で味わった。「母上まで」「……いいんだ、翡翠」「いやぁ、これで私の夢はひとつ、叶いましたね」「そうだね、法師さま」「夢? どういうことです、父上 母上?」「まぁまぁいいから。とにかくお呑みなさい、翡翠」「はぁ」 いささ 2128 妖怪ろくろ回しMOURNING殺りん*「りんは……きっと死んじゃうね」 十年先か、二十年先か、五十年先か、それとも明日か。 それは誰にも分からない。いかな殺生丸といえども、天に座すあの全智を持つとすら見える彼の母親であれど、誰一人としてそれは分からない。更に言えば、死すはりんではなく殺生丸やもしれぬ。 命とはそのようなものだ。「……」「でもね、桔梗さまがそうだったみたいに……もしかしたら、生まれ変わってまた会えるかもしれないね」「……」「そしたら殺生丸さま、りんを見つけてくれますか?」「断る」 殺生丸は即答した。 何を血迷ったことを言っているのかとも言いたげな視線を少女にやった妖怪はしかし、膝の上で困惑した表情を浮かべたりんの髪の毛に長い指を差し入れた。指であっても通らぬほど強張った髪に彼は少しばかり目を細める。「殺生丸さま……」 あのかごめという女は。 桔梗という名の、犬夜叉などという半妖に心を奪われた巫女の生まれ変わりであるというのは事実だろう。だが、間違いなくあの女は『別人』だ。最初こそ似た匂いを纏わせてはいたが、桔梗の多くを知らぬ殺生丸ですら彼女らの言動は互いにかけ離れてた場所にい 1548 妖怪ろくろ回しMOURNING三人娘* 手繰る。 今までの大切な記憶たちを。 縄を綯うようにもうずっとずっと昔のことにすら思える、今までのことを。 思い出せなくたって過去を捨てる必要なんてないんだ、と教えてくれた姉を名乗る仲間がいた。思い出したくもない、忘れたいことまで無理に覚えておく必要なんてないんだ、と教えてくれた従姉妹を名乗る仲間もいた。「全く、お節介な奴らだ」「誰がお節介だって?」「……自覚はあるのだな」「そりゃあ、毎回言われたらちょっとは自覚するってば」 いつからいたのか、とわは笑いながらせつなの隣に腰掛けた。「そうそう。とわはもうちょっと冷徹でもいいんじゃねえの? 双子だってのに、せつなとは正反対だな」「もろは」 頭の後ろで腕を組みながらやってきたもろはもまた、とわと反対側に座り込んだ。「はは。でもせつなだってお節介なときもあるよ」「私は……」「ま、確かに。変なところでせつなも頑固だし、妙なところで拘ったりしてさぁ」 そのせいで散々な目に遭ったこともあったっけ。火鼠の衣を纏った少女はけらけらと声をあげた。「で、結局みんな揃って振り回されてさ」と続け、長い階段を降った先、楓の 1578 妖怪ろくろ回しMOURNING弥勒と翡翠*「ほう! これはまた、久方ぶりのものを……」「知っているのですか、父上」「あぁ。昔はよく、旅すがらいただいたものです。この背徳的とも言える味、いやぁ 懐かしい限りです」 サク、サク。 せっかくだから少しお父さんと話していきなよ、これでも食べてさ。 そう言ってとわがくれたのは翡翠が今まで見たこともない異国の菓子であった。きっちりと封をされているはずの袋を裂いて開ければあら不思議、濃厚な匂いがあたりに広がった。「奇怪な味だ」「なれど癖になる。いやはや思い出しますなぁ。こうしてよく、他愛のない話をしながらつまんだものです」 隣には雲母を膝に乗せた珊瑚がいて、かごめがいて、七宝と犬夜叉が最後の一粒を取り合って。 甘ったるい果物の汁を分けあって飲んだこともあった。口内に弾け飛ぶ刺激の強い、薬のような味のする甘い汁を飲んで犬夜叉が大暴れしたこともあった。とわが持っているものと似た、やはり大きな背負い袋を抱えた異国人のかごめがこうして菓子を広げてくれて──様々な飲食物を勧めてはくれたが、弥勒は知っている。この菓子を持ち込めるのは限りがあって、貴重なものだということを。 仲 1338 妖怪ろくろ回しMOURNING殺生丸と両親* 殺すも生かすも心次第。 然れど、いつ如何なる刹那であろうとも、殺そうとも生かそうとも忘れてはならぬことがある。命を愛でよ、それが殺すべき息の緒であれ生かすべき玉の緒あれ、分け隔てることなく。「皮肉な名前をつけたものだ」 故に、殺生丸と。 命を尊ぶ者になってほしいという願いと祈りの込められた赤子はしかし、そんな父の想いなど我知らず。とんだ暴れ馬となったものだ。気の食わぬ者は妖怪であれ人間であれ毒爪の餌食とし、ころころ玉遊びのように他者の命を奪うかつての可愛らしい赤子は、今まさに母の膝上で寝息を立てていた。「元気がよいのは結構だが……もう少し父としては慈しみの心があってもよかったと思うが……」「慈しみ、のう。闘牙さまの目は節穴か」「むぅ」「弱き者を苦しまずに殺してやるのもまた、慈悲の心だとは思いませぬか?」「……まぁ、下から数えれば……そうなるやもしれんが」 少なくとも今はまだ相手を嬲り殺すような遊びを覚えてはおらぬだけよい。 そんな言い方の佳人に闘牙王は大げさなため息を零したが、見目麗しき細君は気にした様子もなく笑みを美しい唇に浮かべたままだ。「それに、 1429 recommended works 火燈弥紗💀🔥Skeb募集中DONE半妖の夜叉姫10話のせつなが二度もとわのことをガン見してたので絶対記憶戻ってる※せつとわ 火燈弥紗💀🔥Skeb募集中DONE半妖の夜叉姫11話のとわともろはのハイタッチにつられてせつなもハイタッチしかけた時の見たことない笑顔が見れて良かった※せつとわ 雪風(ゆきかぜ)。DONEかごめちゃん。夜叉姫1話で再会出来て嬉しかったな!(もちろん他のみんなとも) dosuko_dosuCAN’T MAKENEWSの3人を退治屋にしてみたかったのです。。(昔V6で留美子先生やってくれたの嬉しくて。。すみません) 雪風(ゆきかぜ)。DOODLEなかよしとわ&せつな! 雪風(ゆきかぜ)。DONE理とわの結婚式(もどき)全力で祝福したい。二人とも幸せになって。 雪風(ゆきかぜ)。DOODLEもろはが思わず赤面してしまう恥ずかしエピソードが解禁されたようです; 雪風(ゆきかぜ)。DOODLE幸せいっぱいな理とわ❤ 雪風(ゆきかぜ)。TRAINING抱きつき構図大好きすぎる練習も兼ねて妹大好きなお姉ちゃんかわいい