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    sakurafuki0220

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    sakurafuki0220

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    初めてポイピクで投稿させて頂きました~

    こちらのキャプション、200文字しか入れないのです?
    支部で思いっきり800文字くらい書いてしまった……

    とりあえずこちらをご参照ください↓
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19419556

    不慣れですみませんm(_ _)m

    #メギド72
    megiddo72

    高潔の血花と氷の棺【ゼロエリ師弟】その日は平和の一日だった。
    この前王都に行く時、シバの女王と軍団の皆の好意により頂いた大量な食料がやっと底についたので、朝食後の稽古を終え、久々に二人で山を下りた。
    今では幻獣による被害もかなり減り、色んな商品の流通は良くなったと麓に住む方々が教えてくれた。
    なのでこのあたりにない肉や茶っぱ、以前バレンタインの時期くらいしか見かけないチョコレートタルトも、いつでも買えるようになった。

    懸命に生き、努力を惜しまないこの世界の住人たちはやっと異世界の存在に怯えることなく、自分の力で未来を切り拓けるようになった。
    怠らない限り、この世界はこれからきっともっと良くなっていくのだろう。

    あれこれ物色してたら、家に戻った時すっかり暗くなってしまった。
    急いで夕食の準備をしてるはずが、はちみつを入れるか、レッドスパイスを入れるかで言い争いになり、しまいにそれぞれ自分の夕食を作ることになった。
    夕食を早々平らげ、今日買った色んなタルトをテーブルの上に並べる。
    「ちょっ、一気に出すなよ、甘ったるい匂いがこっちまで来てんじゃん、飯が不味くなんだよ……うげぇっ」
    「これから全部食べるので問題ありません。」
    「うっそだろう……」
    「貴方こそ、そんな頻繁に大量な辛味を摂取するといつか胃に穴が開けますよ」
    「一気にいっぱい食うからいいじゃん、師匠のタルト列と一緒。分かんねぇかな」
    「タルトなら分かりますが、貴方のそれは理解できませんねえ」
    何年一緒に居てもこれだけはどうしても分かり合えなかった。もっと時間かければ分かり合えるのだろうか。そうなる未来は全く見えないけど。
    本当は数日分の甘味を買ってあったのに、エリゴスと話しているうちに全部出して食べてしまった。
    少々予想外のことだったが、いつでも買えるから別に気にはしない。

    その日も平和の一日だった。
    これから先も、この世界では明るく平和な未来が続いていくだろう。

    そう、己の個が停滞するほどの。

    だから、次の日にいつも通り早起きし、
    いつも通り軽めの朝食を摂り、
    いつも通り武器の手入れを済ませ、
    いつも通り自分より少し遅く起きてまだ寝ぼけてる彼女に朝の挨拶をして、

    「エリゴス、そろそろ行きましょうか」
    「…………あぁ、そうだな。ちょっと待ってな、すぐ準備すっから」

    すっかり目が覚め、せっせと準備するエリゴスを待つ間に、二人の思い出が詰まった……とまで言えない物の少ない家を見渡す。
    誰が帰ってきても物の整理にさほど時間かからないのは気楽でいい。
    まぁ、誰も帰って来れなくても問題はないだろう、もう私の知ったことではないので。
    「うっし。師匠、行こうぜ」
    「えぇ」
    二人でいつもそこで稽古する山奥の平坦地へ向かう。
    この季節だとヴィータも獣もあそこまで来れないので、文字通り、今あそこは私たちだけのテリトリー。

    体を撫でる冷たい風は気持ちがいい。
    これより始まることを想像するだけで昂ってしまう自分の魂を落ち着かせる。

    「エリゴス、始まる前体を温めなくていいのですか」
    「あたしら昨日まで毎日ここで稽古してたじゃん。このくらいどうってことないって。どうせ今から嫌ってくらい熱くなんだろ」
    「そうですか。貴方がそう言うなら」
    「……」
    「では、はじめましょうか」
    「……行くぜ」
    武器を構え、互いを見据える。
    待ちに待った最後の狩りが、始まる。

    ここに至るまで何度もぎりぎりまでぶつかり合っていたが、今この瞬間に魂が一番高揚する。

    第二の人生で自堕落してた貴方は私に導かれ、ソロモン王と共に世界の危機に立ち向かい、メギドラル時代に負けないくらい多くの仲間と慕われるものに囲まれました。
    一度高潔さを失いかけた貴方でしたが、今では初めて出会った時よりずっと魂の輝きが私の目を惹きつけて離せません。
    やっとそれを今から私の手で殺す機会が訪れました。これ以上に心躍ることはあるのでしょうか。
    これまでの我慢と今体に増え続ける傷と痛みがそのためにあると考えたら、どうてことないと思えました。

    早く殺さねばと、容赦なく己の全てを叩きつける。それでも、満身創痍の彼女はまだ倒れない。メラメラと燃える光はまだ私に食らいつく。
    周りの時間が静止し、二人の死合いはこのままずっと続けていけるような錯覚してしまいそうになる。

    「終わりです」

    しかし、終わりが必ず来る、自分はずっとそれを望んでいるから。

    急所が貫かれた彼女は地に倒れ、その体から流れ出す血が栄養を得た花のように、彼女を中心に咲き始める。
    ぽたりとそれに落ちた私の血も鮮やかな花の一部となり、まるで二人でその花を育ているみたいだ。

    あぁ、なんて心地の良い情景だろうか。
    私が求めずにはいられないものは最高の形で手に入れた。
    この一瞬のためだけに私は生きてきたと確信をもって言える。
    徐々に呼吸が弱くなったエリゴスは特に何も言わず、ただ私の方を見つめている。私だけを見つめている。

    ここは敬意をもって何か労いの言葉をかけるべきとも考えていたのですが、やはり私達にもう言葉はいりませんよね。貴方を看取ることが私からの最大の敬意の表しなのですから。

    やがて強い眼差しを放つその目から光が無くし、鍛え上げた肉体から生力を無くし、それが、動かぬ塊になった、……小さな笑みを残して。

    その笑みは、遺憾なく私と全力で戦って満足したからでしょうか、それとも、私に負けた自分が情けないと思ってるからでしょうか。
    その答えが聞けないは、些か残念な気はしなくもないですが……

    これで、私は自分の個を全うした。己の終着点に辿り着いた。
    長かったようで短かった旅はここで終わる。
    胸当たりの傷がまだジンと痛むが、それ以上に今までない満足感を私の魂は噛みしめる。
    ——この痛みが消えないうちに、この満足感が冷めないうちに、それらを私の永遠にしたい。
    ここに彼女の魂は帰る場所があれど、私の魂の帰る場所はない。せいぜいヴァイガルドの大地の恵みとなって、ほんの少しこの世界で生きるものの役に立つくらいしかできない。
    自分の魂が砕けた後のことに興味はないが、それでも彼女がいたこの世界でフォトンとなり命の営みの一部になることも別に悪くないと思った。

    目を閉じ、精神を研ぎ澄ませ己の魂の形を想起する。
    そして、それの砕ける様も。
    自分を形作るものとそれ以外の境界が曖昧になっていくのを実感する。
    己が何者で、何を成してきたのか、少しずつ、少しずつ欠片となり消えていく。
    ただ一点、あの美しく高潔なる魂の輝きへの執着を除いて、他の全てが周りへ溶けていく。
    体の感触がなくなり、魂から発する冷気も周囲の温度に同化されていくその時、ふと傍に自分とは別の、熱くて、眩しいものの存在に気づく。

    視覚と言えるものがもはやないが、それでも意識を集中して傍にふわりと漂うその存在を追う。
    決して見誤るはずがない、生をかけて追い求めていた光の輝き。
    私の周りで漂う熱を帯びる光は、視線があるかのように私と向き合っている、私を見つめている。
    冷気を放つ己の奥底からその熱が移ったみたいな、火のついた感じがした。
    暫くして、その光はゆっくりと私から離れ、上に昇っていく。

    ……
    ………
    …………ふむ。
    エリゴス、貴方まさか、「最後の喧嘩に負けて悔しいけど、やっと勝負がついたし約束も果たせた。これで心置きなく何処へでも行ける」などと、思ってませんよね。
    あれで師匠への最後の挨拶のつもりですか。
    最後に負けたくらいで私から逃げられるとでも。
    やれやれ、どこまでも自分勝手で馬鹿な弟子ですねえ。そんなこと、師として許可するわけないでしょう。

    冷酷で透き通った魂の分解が一気に加速する。吹雪のようなフォトンの渦が上昇して行く光の欠片を取り込むように膨張し、一瞬にして冷たく眩しい光がその場の全てを照らす。

    ようやく光が収まった後、そこには高潔と謳われ、美しく咲き乱れる血の花の中で永久の眠りについた一人の戦士と、それを蓋いそのものの美しさをずっと留めていたいような、その高潔さをずっと独り占めしたいような、永劫に溶けない氷の棺だけが残っていた。


    完。


    追記:

    魂の分解のやり方はゲーム内にまだ判明されてなくて適当に書きました(笑)

    エリゴスの魂がヴァイガルドの大地やカトルスに帰っても、それに寄り添う穏便な方法が他にもあるはず。
    なのにお師匠が最後の最後に最悪の形で引き留めたのは、自分も言っていたようにそうすることしか己を表すことができない、のでしょうね。
    本当にそうなったら、エリゴスも「ったく、ほんっとう自分勝手な師匠だなぁ」って呆れながら受け入れてくれそう。

    どっちもどっちで、ちょっとわがままで不器用な師弟二人だと思います。
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