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    mii_wannyantyu

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    mii_wannyantyu

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    『現代鬼殺のお話①』
    前に呟いていた、現代鬼殺のお話。書きたくて書いたものの、何書いてるのかよくわからなくなったので供養。

    現代鬼殺のお話①

    「はあっ!!」

    私に向かってくる、異形のものに対し、私だけの刃を振るう。ガシャン、プシュウ。一閃。ドサリという物音と、ぶわりと巻き上がる黒い靄。ふよふよとこの場を漂うけれど、それはもう無視。なんの害もこちらには及ぼせなくなっている状態のはずだから。耳をそばだて、気配を探る。……よし。もうあいつらはいない、みたい。依頼の内容も、一体だっていう報告だったし。

    「ふう。任務、完了」
    『今の刀の振るい方、なんだか粗くありませんでした?』

    ……ああ、また始まった。

    「うるっさいなあ」
    『蟲柱たるもの、もっと美しく、軽やかにこなしてもらいませんと』
    「ふんっ。そんなことにばかり拘ってるから、この間みたいに失敗するんじゃないの?」
    『なんですって?!』
    「ほらほら、しのぶ。後は隠がやってくれるから。今日はもう帰っておやすみ」
    「社長」
    『お館様』

    急に目の前に現れた雇い主の姿に、跪く。この位置からは見えないけれど、多分もう一人の私も、同じ格好をしてる。

    「そんなにかしこまらないでおくれ。しのぶ、今日はどうだった?」
    「はい。任務は、つつがなく。相手は人型を取ってはいましたが、それほどの力を持っていませんでしたので」
    『とは言っても、この子が荒っぽく日輪刀を扱うものですから、ヒヤヒヤものでした』
    「……私が報告してるの。あなたは引っ込んでてよ!」
    『報告は、細部まできちんとしなくてはならないのですよお嬢さん。あなたが、隠したいことでも』

    ……それを言われてしまうと、ぐうの音も出ない。

    「左大腿部に、軽い裂傷。頬に、打撲、です」
    「うん。ありがとう。しのぶは自分で治療ができてしまうかもしれないけれど、ここに治療器具はないだろう?事務所に用意してあるから、使うといい」
    『「ありがとうございます」』
    「じゃあ、今日はここまで。また、任務が入ったら、頼むね。お礼は、いつものところにあるからちゃんと取って帰るように」
    『「御意」』

    ふわっと風が吹いて、また音もなく、雇い主はどこかへと、行ってしまった。次の誰かを、労いに行ったんだと思う。どこに任務に行っても、彼は必ず、現れるから。きっと、雇っているのは、私一人ではないんだろうし。

    「じゃあ、事務所に戻る?」
    『ええ。さっさと戻りましょう。まずはその、みっともない頬の打撲を、どうにかしなくてはなりませんね』
    「……そうね。姉さんに見つかったら、大目玉だわ」

    明日から、しばらくはマスクをして過ごそう。心の中で、そう決めた。
     私は、支給された、蝶の羽のような羽織をひらめかせ、事務所へと急いだ。夜の街を、人間とは思えないようなスピードで、ひらりひらりと、飛び回りながら。

     ◇

    「お前は、頸が、斬れない、はず、では」

    目の前でそんなことを宣う化け物に、にっこりと、笑いかけてあげる。

    「あら。誰がそんなことを?あなたが知っているその人が、私と同じ顔をしているだけで、私がそうではないということを、お忘れなく。ああ、忘れるもなにも、お会いする機会は二度とありませんけれど」
    『もう、一息に落としてしまいなさい』
    「そのつもり」

    私は首に刺さったままの刀に力を込め、そのまま、引き裂いた。キュインという駆動音とともに、ドサリと、その場に、質量を持った何かが落ちた。ばしゃりと飛び散るものはない。ただ、黒いなにかが、霧散していくだけ。 

     憎しみ、悲しみ、怒り。人の、黒い気持ちから生まれたのが、あの化け物なのだと、社長に聞かされている。なぜか、私の顔を知っているものがいるのは、気分が悪いけれど、きっと、あいつらが言うのは、私の後ろで口うるさく何かを言っている、こいつのことだと、思う。

    『今のは上出来でした。褒めてあげます』
    「別にあなたに褒められたくてやってるんじゃないんだけど」
    『まあ。生意気をいうのはこの口でしょうか』

    にこにこと笑っているくせに、怒りを隠さず私のほっぺたをグニグニといじってくるのは、私にそっくりな姿をしている女。事務所にある仕事着。通称『隊服』と、私専用の『蟲柱の羽織』を身につけると、見えるようになる。いわば、私たちバイトが任務を遂行する時の、ガイドのようなものらしい。どうして、私と同じ姿をしているのかは、わからないけれど。

    「ふう。今日の仕事は、もう終わり。帰ろ」
    『……あなた、最近何か急いでます?』
    「別に、関係ないでしょう」
    『関係大ありです。あなたは私なんですから』

    その女は、ふわふわと宙を飛び回りながら、私の前に飛び出してきた。……ああもう、ほんと邪魔。

    「お金が、必要なの。研究を続けるには、お金が必要で、研究のための時間も。私一人でやらないといけないから、アイデアを出すのも、実験するのも、フィードバックも。だから、一秒でも、時間が惜しい」
    『ふうん』

    ガイドは、何か興味深そうな顔をしてる。あ、ニヤってした。……嫌な予感がする。

    『私が、手伝ってあげま』
    「結構です」
    『早いですね?!私これでも、稀代の発明をした、ちょっとすごい人なんですよ?!』
    「そんなこと知らないし。……この刀の改良も、私がしないと。今日は良かったけど、やっぱりまだ、稼働までに時間がかかる。太陽光しかエネルギーにできないってのが難点ね。それだと、充電が切れたら、どうしようもない。もっと質のいいバッテリーを作れるようにならなくちゃ。それに、散布してる毒も、もっと改良して。それから、相手が変な術をつかってきた時の、薬も」
    『……あなたはやっぱり、私ですね』
    「は?」

    いつも、からかいを含んだ表情をしているそいつは、少し怖いくらいに、優しい、目をしていた。姉さんや、母さんが、私に向けるものに似ている、あたたかい、もの。

    『生き急ぐな。と言ってるんです。この世界で、あなたの幸せは、壊れていない。あなたの大切は、まだ、あなたの近くにあるでしょう』
    『無理をしなくてはいけないことと、無理をしなくてはならないことがあります。でも、私たちは、あなたにその無理をさせないために、存在している』
    『私たちを、頼りなさい。胡蝶しのぶ。あなたは一人じゃないんだから』
    実体はないはずなのに、頭にぽんと触れられる手はあたたかくて。不意に、ぽろりと、涙がこぼれ落ちた。
    「えっ、な、で?私、こんな」
    『……はあ。まだまだお子様なんですから、そのままでいいんですよ、あなたは。無理に大きくならなくたって』

     月明かりが照らす夜の街で、私は、私にそっくりな女に、抱きしめられながら、涙をこぼしていた。誰にも迷惑、かけちゃいけない。そう、思ってた。だから一人で、今までがんばってきたのに。そんな優しい言葉をかけられてしまったら。

     頼ってしまうじゃない。気を抜いて、しまうじゃない。

    『全く。ほんとにあなたは、馬鹿な子ですね』

     クシャッと笑う『私』の笑顔は見たことがないもので。私の急ぎ、荒んでいた心は、ぽわり、とあたたかさを取り戻してしまったのだった。
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    mii_wannyantyu

    DOODLEさっきお話ししてた、モブさんに告白されて言い出せなかった💧さんとそれにもやっとしてしまう🍑さんのお話。らくがきです。まだ続くけど一旦ここまで。大丈夫!ハッピーエンド仲直りするよ!(これは僕のために言っています…)
    仲直りして!!!「どうして、言ってくれなかったの」
    ……愛莉ちゃんのこんな顔見たの、いつぶりだろう。
     私を見下ろす愛莉ちゃんを、真っ直ぐに見つめる。愛莉ちゃんの後ろには天井が見えて、ああ、私、今倒れてるんだ、なんて。
     形が良くて愛らしい眉毛がきゅっと寄って、私を映す桃色は、悲しそうに細められてる。いつもは綺麗に上がっている口元も、への字みたいに下がり切っていて。
    「えっと……」
    事の発端は、私が、この前出演したドラマの相手役の人に告白された事だった。もちろん、私には愛莉ちゃんがいるから断ったけれど、お付き合いしていることは、まだ内緒にしておこうって愛莉ちゃんと二人で決めたからちゃんと言えなかった。
     その人は愛莉ちゃんとも仲がいい人だったから、愛莉ちゃんになんとなく言い出しづらくて、切り出すタイミングを伺っていたらどんどん時間が過ぎてしまって、もう一週間。どういうルートを辿ったのか、私があの人に告白されたことが愛莉ちゃんの耳にも入っていて、おうちに帰ってきた瞬間、愛莉ちゃんに手首を少し痛いくらいに掴まれて、ソファにぐいって押し倒されてしまったの。
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    mii_wannyantyu

    MOURNING『現代鬼殺のお話①』
    前に呟いていた、現代鬼殺のお話。書きたくて書いたものの、何書いてるのかよくわからなくなったので供養。
    現代鬼殺のお話①

    「はあっ!!」

    私に向かってくる、異形のものに対し、私だけの刃を振るう。ガシャン、プシュウ。一閃。ドサリという物音と、ぶわりと巻き上がる黒い靄。ふよふよとこの場を漂うけれど、それはもう無視。なんの害もこちらには及ぼせなくなっている状態のはずだから。耳をそばだて、気配を探る。……よし。もうあいつらはいない、みたい。依頼の内容も、一体だっていう報告だったし。

    「ふう。任務、完了」
    『今の刀の振るい方、なんだか粗くありませんでした?』

    ……ああ、また始まった。

    「うるっさいなあ」
    『蟲柱たるもの、もっと美しく、軽やかにこなしてもらいませんと』
    「ふんっ。そんなことにばかり拘ってるから、この間みたいに失敗するんじゃないの?」
    『なんですって?!』
    「ほらほら、しのぶ。後は隠がやってくれるから。今日はもう帰っておやすみ」
    「社長」
    『お館様』

    急に目の前に現れた雇い主の姿に、跪く。この位置からは見えないけれど、多分もう一人の私も、同じ格好をしてる。

    「そんなにかしこまらないでおくれ。しのぶ、今日はどうだった?」
    「はい。任務は、つつがなく。相手は人型を取ってはいま 2898

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