Dozen Rose Dayに寄せて ふんわりと頭を撫でられた感覚でゆるやかに意識が覚醒した。
アラームの必要ない日曜日。最近の冷え込みの厳しさがベッドから出ることを億劫にさせる。
「ん、もうちょっと…」
もぞもぞと寝返りを打ってから、声が聞こえないことに気付いた。仕事のある平日なら遅刻の心配をして柔らかく溜息をつきながら、週末ならば二度寝すると朝食が冷めるぞと笑いながら返事をくれるのに。恋人の名を呼びながら瞼を持ち上げると、目の前に真っ赤な色が飛び込んでくる。驚いて一気に思考がクリアになり、その色が枕元に置かれた1本の薔薇のものだと分かった。
「何で薔薇?」
ベッドの中で起き上がり欠伸をひとつ。触れた茎に棘はなく、花弁が瑞々しい。二人だけの住まいでこんなことをできるのは一人しかいないが、理由を思いつけない。ベッドサイドに置かれた時計を見ればいつもの起床時間より早く、おそらく恋人は朝食作りに勤しんでいる頃と思われた。
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