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    neko

    @neko22suki
    ポイピク始めました。
    ジャンル垣根なしの雑多垢です。
    好きなものを好きなだけ。ネタバレありです。
    自衛は各自でお願いします。

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    neko

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    ニル主。
    「真夜中の来訪者」と対になっている話。
    どちらから読んでも大丈夫・・・なように・・・している・・・つもりです・・・。
    いちゃいちゃしてるニル主はいいですね。書いてて楽しい。

    ##ニル主

    早朝の住人達 目を覚ますと、そこには目映いほどの光景が広がっていた。
     窓から注がれる朝日のきらめき。レースのカーテンを揺らす涼やかな風。
     清潔に保たれた白いシーツ。柔らかく上質な毛布。
     それらに包まれている黒真珠の肌を惜しげもなく陽の下に晒して眠る彼。
     得も言われぬ美しさがそこにはあった。
    「…僕はいつの間に楽園の扉を開いたんだ?」
     そんな一言が呆然としているニールの口からポロッと転がり出ていた。
     この場に第三者が存在してそれを聞いていたならば間違いなく何を言っているんだと吹き出すか、張り手を繰り出して突っ込むかの行動をしたであろう。当然ながら、そんな者はいない。ここは厳重に守られたセキュリティールームであり、尚且つ自分以外に彼のこんなあられもない姿を見る者がいたら罪深き二つの目玉を瞬時に抉り抜いて絶命させるからである。
     物騒なことを考えながら陽光の輝きが毛先まで滑る睫毛をじっくりと眺めつつ、ふと我に返る。
    (あれ?もしかして僕、抱きかかえられてる?)
     逆になんで気づかなかったのかと言われれば寝起きが然程強くないたちというのもあるが、第一にの当たりにしている夢みたいな現実を脳が未だ受け止めきれていないからだ。「これは夢だ」と告げられた方がまだ信じられる。
     固まっていた頭をギクシャクと動かして現状の把握に努めてみた。
     横になっているのは見知ったベッドである。
     太陽の位置からして早朝といった時刻なのだろう。
     ここまではいい。
     問題はここからである。
     隣人を起こさないよう慎重に自身の体を探ってみた。布地の感触はシーツと毛布だけである。あとは共に育った馴染みのある皮膚の感触が続くだけ。
     そして、恐る恐る彼の方へと目線を走らせた。
     先程見ていた光景と寸分の狂いもない。素肌のまま安らかに眠る美しい男。白い寝具と彼の肌のコントラストは宗教画に匹敵するほどの神々しさがある。思わず手を組んで祈りを捧げたくなるというものだ。
     まさに眼福である。その上、彼の両手足は変わらずこの身にゆるく絡みついたままだ。
     ただし、それを心ゆくまで味わえる心境ではなかった。
    (待て待て。おかしいぞ。なんで僕はここで眠っているんだ?)
     長期に渡る任務をこなしていたはずである。正確に言えば完遂して、あとは帰還するだけではあったが。とはいえ脳裏を巡る最新の映像は任務地でのものだ。
    (…とも言い切れないけど)
     如何せん、現地では強行に次ぐ強行を押し切っていた。ターゲットが国を跨いであちらこちらと方々ほうぼうに逃げたせいである。おかげで転々と変わる居所をしらみ潰しに探し回り、追いかける手筈を整えては策を練り、そうしている間にまたもや足取りを見失う、を延々と繰り返した。いつ何時国外へ高飛びするか分からない目標を監視するため不眠不休を余儀なくされて、まともな食事をいつ摂ったのかさえあやふやである。
     統率者からは常々「最低限の休息は取ること」を約束させられていたのに今回は久方ぶりに破る形になってしまった。
     だが、その甲斐あって目的を完遂することができた。疲労で身体も頭脳もドロドロになった仲間達と歓喜に湧いていたはずである。
     さて、その後一体どうなったのか。チームと手を叩き合ってから以後のことを思いだそうとしても記憶回路が仕事を放棄していて、黒いクレヨンで塗り潰したように何も見えてこない。
     そして現在。
     あの地獄からこの天国へ。場面が飛びすぎである。どんな粗悪なフィルム映画だって、こんな雑な中継ぎはしない。
     なにより。
    (なんで裸なのさ…)
     そこである。
     生理現象が大変なことになりそうなので直視はしていないが、接している肌の感触から恐らくどちらも寝間着どころか何も身につけていない。
     辛うじて、こちらは下着を着ているようである。しかし、彼がそうか否かは自制の崩壊が怖くて確認できなかった。
     確かに隣の彼とは念願叶って裸で同衾するような間柄である。彼が羞恥に耐えて足を開いてくれる瞬間は、互いの肌を重ねて熱を交差させる時間は、何にも代え難い至高の一時であった。
     その実感が、この身にはない。だから青ざめている。何もないなら、それでいい。彼となら添い寝だって充分至福だ。
     けれど。もし。仮に。意識のない自分が。無体を強いたのなら。
     彼は抵抗できる。でも。場合によって。優しい彼は抵抗しない。
     ぐるぐると思考が回る。
     滑らかな肌に傷や痕はない。それが全てとは限らない。
     この人は強いから。痕跡を消すなんて躊躇いなくやってのける。
     彼を害することはしない。――では、どうしてこんな事態になっているんだ。
     するわけがない。――言い切れる自信があるか?
     彼にひどい事なんて。――どうやって帰ってきたかも覚えていないのに?
     万が一に。もしそうなら。
     果たして自分には彼に触れる資格など。
     嫌疑の渦に飲まれそうになった刹那、巻き付いていた腕が震えているのを感じた。
    「…ひどいな。起きているなら挨拶してくれればいいのに」
     憮然とした口調で話しかければ、耐えきれないとばかりに「ハハハッ」と結ばれていた口から笑いが生まれた。
    「おはよう。ニールの百面相は凄いな。目を閉じていてもよく分かる」
    「おはよう。それができるのはね、君だからだよ」
     首に巻き付いていた腕に力が込められてクイッと引き寄せられる。その先にあったのは彼の花唇だった。抗うことなく合わせれば、下唇にやわく歯を立てられる。
    「安心しろ。お前が心配するようなことはない」
    「・・・どうだか」
     お見通しとばかりに笑われた。可笑しそうに動く黒い瞳に心傷を負った形跡はない。ただ、彼は隠し事が上手いから未熟な諜報員では探し当てることがひどく難しい。
    「おや、信用がないな」
    「君に対してじゃない。僕は僕が信じられないだけ」
     戯れの中に紛れて本音を吐露する。それに対して玩具を見つけた猫みたいな目をした男が口を開く。
    「じゃぁ、少しだけ真実を暴くヒントを」
     無邪気に楽しげな顔を覗かせる時だけ本来の優しい人間味が滲み出る。それを間近で見られるのが嬉しい。必要に迫られた時は心を殺して冷徹に判断を下す人だから。
    「一つ。玄関をくぐったニールは正常ではなかった」
    「二つ。こちらの声は届いていなかった」
     不安要素しかない情報が羅列された。これでどうして安心なんかできようか。胸中にじわりと黒いシミが浮かび上がっていく。
    「三つ。ニールの服を全て脱がした犯人は目の前にいる」
    「…ん」
    「四つ。意識のないニールをベッドに運んだのも同一人物である」
    「…え?」
    「五つ。その犯人は自ら裸になってニールの隣に自分の意志でいる」
     ニコニコと朗らかな笑みを象る口で今度はとんでもない情報が開示された。きょとんとしていると「嘘だと思うなら居間に行くといい。お前の服が散らばっているから」と犯人が自供した。これは現場検証をするべきところなのだろうが。
    「不安が解消したから君と仲良くしたい」
     安堵して、ようやく彼の体に腕を伸ばしたところでピシャリと叩かれた。
    「今はダメだ。俺はまともに食べていないお前に食事を与えるという使命がある」
    「そんなの後で」
    「ニール」
     強く名を呼ばれたら従わずにはいられない。折角触れた玉体からパッと手を離してホールドアップした。
     それにこの身が本調子でないことも事実である。彼の労りを考慮してベッドから起き上がった。
     ふと足下にある彼が脱いだであろう服の塊を発見してそのまま渡す。その中に下着も見つけてしまい無心になるべく難解な数式の羅列を思い浮かべていた。
     ベッドの中でゴソゴソと身支度を調える気配を耳にしながら下着姿のまま部屋を出る。その寸前。
    「分かってるか?"今は"ダメだ。それ以外なら・・・まぁ、お前次第かな」
     クスクスと笑う声が後を追う。どういう顔をしていいか分からず部屋を出て耐えきれず廊下にうずくまる。
     ひとまず体調を万全にすることにしよう。良い子にしていたら、ご褒美がもらえるようだから。
    【END】
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