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    dankeimotorute

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    クエスチョニングの三がマッチングアプリでアポを取り付けたら初恋拗らせた暮が来た話 になる予定

    再会①(三暮)※三井がプロ選手、木暮が会社員。20代後半くらい
    ※思いっきりスマホとマッチングアプリが出てくる
    ※導入でモブがやや同性愛差別的な言動をとります(メインキャラに向かってではない)。必要に応じて読み飛ばしてください
    ※全方位の苦手要素を詰め込んでいる可能性があるので、心して読んでください
    ※今回は木暮ほぼ出ません


    「……木暮?」
     繁華街のど真ん中で、オレは凄まじい間抜け面を晒していた。待ち合わせ場所で会うはずのない男が待っていたからだ。オレが待ち合わせていたのはマッチングアプリで知り合った見ず知らずの男であって、断じて高校時代の同級生ではない。まかり間違っても数年ぶりの再会がこのシチュエーションであっていいはずがない。
    「み……三井?」
     向こうもどうやら同じことを考えているらしい。ぽかんと口を開けた元チームメイトこと木暮公延は、首振り人形のようにスマホの画面とオレの顔とを交互に見比べている。
     オレのほうもスマホを開いて待ち合わせ前のやりとりを見返してみると、『白地にアメコミのイラストがプリントされたTシャツの上に、カーキの半袖シャツを羽織ってます』というメッセージが届いていた。そして、目の前にいる木暮は文面どおりの服を着てオレ同様の間抜け面を晒している。
     どうしてこうなった?オレは10日ほど記憶を遡りつつ、現実逃避をはじめた。



     きっかけは飲み会でのくだらない雑談だった。チームメイトによくモテる美形がいて、そいつがついに男性ファンからラブレターまがいの手紙をもらったという話だ。処分に困るプレゼントやファンレターへの微妙な感情を酒の席で発散しようとするやつは珍しくない。
    「いやあ、わかるぜ、お前キレーだもん、オレもイケる気する!」
     話を聞いて、ひとりが明らかに酔った声を張り上げた。というか、そいつだけじゃなくてみんな酔っていた。だからだろう、そのチームメイトを恋人にできるか、という話題が妙な盛り上がりを見せていた。
    「あー、オレもイケるかも」
    「普通にキツいわ」
    「顔だけ見ればワンチャンできる」
    「ナニをだよ!」
     悪趣味なじゃれあいを遠巻きにして、オレは話題の中心をぼんやり眺めた。確かに整った顔だし、性格も悪くはないし、バスケもうまい。こいつとどうこうなりたいわけではないが、女と付き合うのと同じようなことをしても、まあ嫌ではない気がする。イケるかも。
     ......イケるかもって、マジで?自分の思考が至った結論に脳がついていかず、オレはぱちぱちと瞬きをした。
    「三井、飲みすぎたんか?」
    「……いや、ボーッとしてた」
     ぼんやりしているのを具合が悪いのと勘違いしたのか、チームメイトが心配そうに覗きこんでくる。が、こっちはそれどころではない。オレの二十数年間の人生が根底から覆されたような気さえしていた。つまり、青天の霹靂だ。
     思い返せばテンプレじみた恋愛遍歴を辿ってきた。初恋は幼稚園の先生、初めての彼女ができたのは中二の夏、初めてのセックスは高一の冬で、2つ上の先輩と。自分で言うのもなんだが異性にはモテるほうだし、それで嫌な気はしない(むしろ嬉しい)。
     だから可能性があるとしたら、ゲイじゃなくてバイってやつなんだとは思う。今まで男を好きになったことがないので、本当にそうかは確証がないが。やばい、一度気になるとそればっかり考えちまうな。
     こうなったら確かめるまで気が済まないのは性分だが、かといって今すぐ行動に出られるわけもない。やり場のない感情をなんとか鎮めるべく、その晩のオレはいつも以上のハイペースでグラスを開けて、ぐでんぐでんに酔っ払った。だから、ここから先の記憶はひどく曖昧だった。
     オレは三井寿、諦めの悪い男。そして、酔った勢いで奇行に走る男でもある。


     翌朝自宅のソファで目覚めたオレは、二日酔いで痛む頭を抑えながらスマホを凝視する羽目になった。というのも、ホーム画面に見覚えのないアプリが鎮座していたからだ。
    「なんだコレ……」
     開いてみると、トップ画面に人間の顔や上半身の自撮りやら飯の写真やらが表示された。写真の下にはニックネームと年齢、ざっくりした居住地が書かれている。このレイアウトには見覚えがあった。以前友人に見せてもらったマッチングアプリにそっくりだ。一つ違いがあるとすれば、あの時表示されたのは女の自撮りで、今回は男の自撮りということだ。
     どうやらオレは、酔った勢いで同性愛者向けのマッチングアプリをインストールしていたらしい。しかも、酔っぱらいのくせに律儀に本人確認まで済ませている。オレはローテーブルに放り投げられた財布と免許証を睨みつけた。
    「つーかアカウント名だせえな」
     プロフィール画面を一瞥して、オレはこめかみを揉んだ。久光ってなんだ、湿布売ってんのか。本名ちょっと捻っただけじゃねえか。もうちょっと考えて付けろよ、昨夜のオレ。だが、ざっと見た限りまずそうな文言や写真がなかったのは安心材料だ。泥酔しても顔写真をアップしない自分の危機管理能力には感謝したい。

     おおよその状況を理解したところで、次なる問題はこのアプリをどうするかだ。幸い、今はシーズンオフなので時間に余裕がある。腰を据えて自分の所業と向き合うことができるというわけだ。もっとも、シーズンオフでもなければ酔った勢いでマッチングアプリをインストールしたりしないんだが。
    「まあ、消すか」
     職業柄、インターネット上の不特定多数に対して出会いを募集するのはよろしくない。自分が本当に男を好きになるのかは別の方法で検証するとして、ひとまずマッチングアプリからは退会しよう。とはいえこれが見納めかと思うと、もう少しアプリ内を見て回りたい気もした。まだ閲覧していないタブを開くと、どうやらトーク画面のようだった。画面の上部には深夜に誰かとやりとりしたらしい履歴が残っていた。
     興味半分、怖いもの見たさ半分でトークの内容を確認してみる。アプローチは向こうからだった(少しホッとした)。趣味や休日の過ごし方について軽く会話したあと、『飲み友達から仲良くなれたら嬉しいです』という相手からのメッセージでチャットは途切れていた。やりとり自体は至って無難で、酔っている割にはまともな会話が成立していると思う。むしろ結構盛り上がっている気もする。
     もののついでに相手のプロフィールも拝んでやろう。ピンボケした全身写真のアイコンをタップして、チャット相手のプロフィール画面を表示させる。
     アカウント名を『ハム』と名乗った相手の男は、どうやら同い年の会社員らしかった。趣味は映画鑑賞とスポーツ観戦。プロフィールには旅行先で撮影したと思しき風景や海鮮丼の写真が何枚か添えられている。自己紹介文は適度にあっさりしていて、鬱陶しくも嫌味っぽくもない。ハムとかいう男は拍子抜けするくらい普通の人間のようだった。
    「そりゃそーか」
     ソファに寝転がって思わず言葉を漏らした。向こうだって普段は社会生活を営む社会人だ。テレビに出てくるようなエキセントリックなキャラばかりじゃないのは当然だろう。
     もう一度チャット画面に戻ってやりとりを見返す。『飲み友達から仲良くなれたら嬉しいです』というメッセージがいやに目についた。まずはお友達から、なんて社交辞令の常套句だ。まして顔の見えないマッチングアプリなら、やりとりの最中に相手が飛ぶなんて日常茶飯事だろう。それでも、生身の人間相手にいきなり会話を打ち切るのは申し訳なく感じる。気づけばオレはキーボードを開いていた。
    「『ぜひ、仲良くなりましょう』……?文章分かんねーな……」
     絵文字を付けたり外したり、気の利いた返事を検索したりして、メッセージひとつ返すのに何十分もかけてしまった。
     結局、それで力尽きたオレはアプリを退会することなく二度寝した。次に起きたときは夕方で、頭は変わらずガンガン痛んだ。もしかしたらまだ酔っていたのかもしれない。
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    Replies from the creator

    dankeimotorute

    MENU三暮webオンリーのサンプル兼尻たたきです。
    このあとに花火デートをする短編がくっつきます。
    全編はオンリー当日にpixivで展示します。
    百代の過客としても(三暮)1.兵どもが夢の跡

     生ぬるい夜だった。夏特有のまとわりつくような湿気をはらんだ風が首筋を撫でる。昼間ほどの暑さがないせいかどこか締まらない感じがする。気の抜けた炭酸水みたいだ、と三井は思った。あるいは、今の自分たちのようでもあった。劇的な勝利のあとに待っていたのは言い訳しようのない大敗だった。全国制覇をぶちあげて乗り込んだ割には、あまりにあっけない結末だ。トーナメントとは得てしてそういうものだと負けてから思い出した。この夏はなにもかもが上手く行きすぎたから、すっかり忘れていたのだ。いきなり引き戻された現実に気持ちだけが追いつかずに、意識はじめじめした空気の中を浮遊している。
     人気のない道路を歩く。アスファルトと靴底の擦れるぺたぺたという音と、遠くに聞こえる虫の鳴き声だけが聞こえる。ぽつぽつと立つ電柱に設置された街灯の頼りなさが不安を誘う。街灯を辿るように歩いていると、ガードレールの途切れたところに座る人影を見つけた。木暮だ。切れ目から下に伸びる階段に腰掛けて、頬杖をつきながら空を見ているようだった。
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