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    dankeimotorute

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    これの続き、マッチングアプリ経由で再会する三暮
    片思い拗らせ木暮編その①

    解砕①(三暮)※プロ選手の三井と会社員の木暮がくっつく現パロ
    ※木暮の恋愛遍歴を片っ端から捏造したあげく、元恋人のモブが堂々と出てきます(恋人っぽいムーブはしません!)
    ※同性愛に対して無理解な言説が登場します。必要に応じて読み飛ばしてください
    ※全方位の苦手要素を詰め込んでいる可能性があるので、心して読んでください


    「似たような男ばっか引っかけて懲りないの?お前、マジで好みわかりやすいよね」
     繁華街の隅、行きつけのバーで並びに座った友人がウイスキーを呷った。久しぶりに顔を合わせた彼と近況報告をするうち、話題はいつの間にか色恋の方向に流れていた。少し前に恋人と別れたのだと教えてやると、慰めより先に無礼な発言が返ってきたというわけだ(別に慰めてほしいわけでもないが)。
    「そうか?」
    「そうだろ。今までの男、みんな背が高くて身体鍛えててめんどくせえ性格のやつばっか」
    「言われてみると、まあ」
     かつて付き合った男たちを思い浮かべると、確かに彼の言い分には首肯せざるをえなかった。
    「よくもまあ自分よりでかい男ばっかり捕まえるもんだよ。お前だって結構でかいほうだろ。いっそ尊敬するね」
     かく言う目の前の男も百八十センチ超えの大男である。オレの元恋人のひとりだ。気のいいやつで、別れてからも店で鉢合わせれば一緒に飲む程度の交流があった。
    「ていうかお前バイじゃなかったっけ。男とばっか付き合ってるから忘れそうになるわ」
    「性別にはこだわりないからな」
    「それなのに男ばっか相手にしてんのはあれか、昔好きだったやつの面影を追いかけてたりすんの」
     彼の面倒くささはこういうところにある。興味津々、といった様子の男に冷たい視線を送るが意に介する様子はない。
    「別にそんなことないけどな」
    「たまにいるだろ、叶わなかった恋を引きずっちゃうやつ。オレは不毛だと思うけど、まあお前の自由だし」
    「だから違うって」
    「そういうことにしてやるよ」
     勝手に納得しているらしい目の前の酔っぱらいをいなしながら、オレの脳裏にはひとりの男の姿が浮かんでいた。――三井寿。自分よりも幾分背が高く、根っからのバスケットマンで、有り体に言って厄介な性格の男だった。いや、まさか。思考を打ち消すように、ぶんぶんと首を振った。
    「帰ろうかな」
     上着を抱えて立ち上がる。内心を見透かされたような感覚に、すっかり酔いが醒めてしまった。
    「なんだよ、もうちょっと飲んでけよ」
    「明日も仕事なんだ」
     じゃあな、と友人に手を振って店を後にする。四月の生ぬるい風が首元を撫でて、それがなんとも言えない気分にさせた。


     三井のことが好きだったのか?と聞かれれば、答えはイエスでありノーだ。オレは三井を好いていたが、一過性のものだと思うことにしていたからだ。
     確かに、三井に向ける好意は他の友人に向けるものとは違っていた。どうしてそうなったのか、今となっては思い出せない。はじめは同世代のきらめく才能への純粋な憧れと、意外に人間味ある性格への親近感だけだった。しかし、高校三年になって三井が部活に復帰したあと、いつの間にか友情が恋愛感情らしきものにすり替わっていた。
     人好きのする笑顔を向けられると、胸の奥がぎゅうと痛むのだ。三井には人を惹きつける力があって、皆が放っておかなかった。そして、彼は心を許した友人たちには同じように甘えてみせた。たとえ三井に勉強を教えろとせがまれても、じゃれつくように肩を組まれても、彼にとって木暮公延が特別であることを意味しない。そもそも三井は童顔巨乳のグラビアアイドルが好きだと公言して憚らなかったから、天地がひっくり返っても自分とどうにかなるはずがなかった。それを自覚するたび心に澱が溜まる。

     どうしていいかわからなかった。それまでオレは異性愛者のつもりだった。男性と恋愛する発想がなかったし、同級生に見せられたAVで当然のように勃起した。だから、同性のチームメイトを好きになるなんて思ってもみなかった。なにより困ったのは、バスケ部の大事な時期に恋愛で集中を削がれるなんて副主将として示しがつかないことだ。
     困り果てたオレは、手に入れたばかりのスマホでインターネットに頼ることにした。『同性 友達 好き』と検索してたどり着いた相談サイトには似たような境遇の投稿が山ほどあった。
    『同性の友達を好きになってしまいました。恋愛的な意味です。でも、今の関係を壊したくありません。このまま黙っているべきでしょうか?自分は同性愛者ですか?』
     自分と同じくらいの学生からだろう質問には、たいてい同じような回答が寄せられていた。
    『思春期にはよくあることです。私にも経験があります。これは一過性の勘違いですから、大学生になったらまた異性を好きになりますよ。先走って関係を危うくする必要はないです。』
     思春期にはよくあること。一過性の勘違い。誰が書いたともわからない回答を何度もなぞるように読んだ。それが救いだったのか呪いだったのかは今となってはわからないが、少なくともあの頃のオレにとってはほとんど唯一のよすがだった。三井にスキンシップをとられるたび、勘違いだ、いずれ終わる、と念仏のように唱えていた。
     そういうわけで、当時のオレは「これは恋ではなくて思春期特有の勘違いだ」と自分に言い聞かせていた。だからなにも起こらなかったし、起こさなかった。

     大学に入ってすぐさま恋人を作った。サークルの同期で、物静かだが優しい女の子だった。三井と引き合わせたこともある。彼が出場する新人大会をふたりで観戦して、試合が終わったあとに三人で食事をした。三井は彼女を見るや、オレの肩をばしばしと叩いた。「お前も隅に置けねえな」と言って笑うのを見てオレは確かに安堵した。今でもはっきり覚えている(別に三井への当てつけとか、自分が異性愛者だと主張するためとか、そういう打算的な理由で付き合い始めたわけではないことは言い添えておく)。
     肌感覚としては、オレの『一過性の勘違い』は半分当たりで半分外れだった。最初の彼女と別れて以降、交際相手のほとんどは男性だった。同性を恋愛対象に含むという点において、勘違いをしているわけではなかった。
     一方で、交際相手ができてなんとなく吹っ切れたオレは、問題なく三井との適切な距離感を維持できるようになった。個人的にはこちらのほうがよほど重大だったので、友情と恋愛感情を勘違いしていたのだと認識できるだけでずいぶん楽になった。
     こうしてオレの初恋もどきは幕を閉じ、儚い青春を駆け抜けた元チームメイトとしての美しい記憶は守られた。少なくとも、そう信じていた。


     閑話休題。帰宅して玄関の灯りをつける。誰もいない部屋に帰宅の挨拶をして、座卓に上着を放り投げた。前の恋人と別れてはや半年、自宅からはきれいさっぱり痕跡も消え、気楽な独り身にも慣れたものだ。とはいえ、うっすらした人恋しさがないわけではない。実家にいた頃は、必ず専業主婦の母が「おかえり」と言って出迎えてくれた。ひとり暮らしを始めて何年にもなるが、返事のない「ただいま」ほど虚しいものもない。

    「そろそろいい人いないかなあ」
     すっかり板についた独り言とともにソファに寝転がってスマホを開く。ただでさえ会社員は出会いが少ない。同性相手ともなればなおさらだ。イベントに出向いてまで探すつもりのない自分は、多少マッチングアプリの世話になっていた。面と向かって他人を品定めする居たたまれなさもないし、気が向いた時だけ使えるのがいい。
     そうは言っても、世の中は甘くない。ちょっと気になるな、程度の人が十人に一人だとしたら、会ってもいいと思えるところに行き着くのはその半分以下だ。実際に会ってみても、大抵は一晩の仲ならまあいいか、とか、友達としてなら楽しくやれそう、とかで、『いい人』にはなかなかめぐり合わない。アプリを開くのは半ば惰性でもあった。
     手慰みの要領で知らない男の自撮りを左右にスワイプしていると、久しぶりに「ちょっと気になるな」ラインのプロフィールが目に留まった。薄らぼけた後ろ姿のアイコン(背は高そうだ)に、『入会24時間以内!』のおすすめ表示が踊る。いかにも体育会系らしい焼き肉の写真、ほとんど埋まっていない自己紹介。あざとくないのが好感触だった。
    『はじめまして!プロフィール拝見しました。スポーツがお好きなんですね。自分も昔スポーツやってました。よろしくお願いします』
     内容の薄すぎるプロフィールと睨めっこしてメッセージを送る。登録したばかりで入れ食い状態だろうから返信は期待しない。そう思っていたのだが、ものの数分でチャット欄に『今はやってないんですか?』と通知が表示された。あ、たぶんアプリに慣れてないな。単刀直入な返信の内容からそう直感して、これはいけるかもしれない、と思い直した。
     そこから先はびっくりするほどうまくいった。日に数度のやり取りを重ね、あっさりと食事のアポイントにこぎ着けた。『久光』と名乗る相手の男は、何らかのスポーツ系の仕事に就いていて、休日はジムに通っているらしい。メッセージの内容も気さくで印象がよかった。いかにもお前の好みだな、と勝ち誇る友人の姿が見えた気がしてやや腹立たしいが、意地を張ってもいいことはない。これで実物も印象がよければ言うことなしだけど、とオレは至極お気楽にアポ当日を迎えてしまった。

    「……木暮?」
     果たして、当日オレの目の前に現れたのはいやというほど知った顔だった。三井の姿をみとめて胸が早鐘を打つ。嬉しいのか恐ろしいのかその両方か、頭の回転がすっかり止まってしまって、正面に立つ男の名前を呼ぶことしかできなかった。
    「み……三井?」
     認めざるを得なかった。好き好んで高身長の面倒くさいスポーツマンを相手にしていたわけじゃないこと。振り切ったはずの恋を引きずって十年生きてきたこと。それどころか、三井の影をずっと追いかけていたこと。一分の勘違いもなく、オレは三井に恋していたのだ。
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    Replies from the creator

    dankeimotorute

    MENU三暮webオンリーのサンプル兼尻たたきです。
    このあとに花火デートをする短編がくっつきます。
    全編はオンリー当日にpixivで展示します。
    百代の過客としても(三暮)1.兵どもが夢の跡

     生ぬるい夜だった。夏特有のまとわりつくような湿気をはらんだ風が首筋を撫でる。昼間ほどの暑さがないせいかどこか締まらない感じがする。気の抜けた炭酸水みたいだ、と三井は思った。あるいは、今の自分たちのようでもあった。劇的な勝利のあとに待っていたのは言い訳しようのない大敗だった。全国制覇をぶちあげて乗り込んだ割には、あまりにあっけない結末だ。トーナメントとは得てしてそういうものだと負けてから思い出した。この夏はなにもかもが上手く行きすぎたから、すっかり忘れていたのだ。いきなり引き戻された現実に気持ちだけが追いつかずに、意識はじめじめした空気の中を浮遊している。
     人気のない道路を歩く。アスファルトと靴底の擦れるぺたぺたという音と、遠くに聞こえる虫の鳴き声だけが聞こえる。ぽつぽつと立つ電柱に設置された街灯の頼りなさが不安を誘う。街灯を辿るように歩いていると、ガードレールの途切れたところに座る人影を見つけた。木暮だ。切れ目から下に伸びる階段に腰掛けて、頬杖をつきながら空を見ているようだった。
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