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    ankounabeuktk

    @ankounabeuktk

    あんこうです。オル相を投げて行く場所

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    ankounabeuktk

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    オフ会(?)にコピ本持ってく文化があるっていうから……

    やまうごく【オル相】 寮での酒盛りは、規模感はあれど恒例の催しものからほぼ日常になりつつあった。皆が食材を持ち寄るので食事代わりに酒を呑まず腹を満たして行くものもいるし、食物には目もくれずひたすら命の水を流し込む輩もいる。つまり、好きにしていい。
     なにしろ開催場所はエントランスから丸見え、女性棟と男性棟へ別れる、絶対に通りかかる共用部分で行われているから姿を隠して部屋に帰るなんてことはできない。勿論強制ではないし、ミッドナイトの誘いに乗らないこともできる。少しは食い下がられても、断るにはそれなりの理由があるのだとわかっているから女傑は去るものは追わない。
     断ったことはいつまでも覚えているが。
     そんなわけで、明日は祝日のため今夜の酒盛りは大人数で大層盛り上がり、場の隅の方でオールマイトも話に相槌を打ちながら烏龍茶を飲んでランチラッシュが作ったというポテトサラダをちまちま口に運んでいた。その隣、体はオールマイトと反対側を向いて相澤がミッドナイトに捕まって結構な量の酒を飲まされていた。嫌そうに飲まされていたのは最初のうち、一定のラインを超えた相澤は並ぶ缶ビールの中から適当に選びながら、オールマイトが二度見する早さで次々と空にしていた。
    「相澤くん、大丈夫かい」
    「酔うために飲んでるんですよ酒なんて」
     滑舌は思いの外はっきりしているが、瞼はとろりと半分落ちて顔が赤い。典型的な酔っ払いの見た目をしている。缶ビールを持つ手が覚束無く、ちょっとしたことでこぼしそうに見えてハラハラした。
    「……ねむ」
     高い音を立てて缶の底がテーブルに打ち付けられる。中はもう胃袋に吸い込まれてしまったらしいそれを支えにぐらぐらと頭を揺らす相澤の手を缶から解き、倒れてはいけないと自分に凭れさせるように遠い方の肩を抱いた。
     簡単に相澤はオールマイトの腕の中にその芯を失った体を任せる。
     無防備が過ぎるだろうという理不尽にも似た怒りが少しだけ湧いた。これは相澤が悪いわけではない。オールマイト自身に起因するものだ。
    (……私が君のこと好きだって、気づいてるくせに)
     機密情報を持ち得ていて、それを外部に漏らしてはいけない。長年培って来て身につけた習性や技術は、片思いという未知の領域においては全く通用しなかった。人一倍そちら方面の自分の感情に鈍感だった自信もある。だからこそ、オールマイトが相澤を好きだと自覚した瞬間、多分それは周囲の機微を察してポーカーフェイスが誰よりも得意な相澤におそらく悟られてしまった。
     相澤はオールマイトに対する態度を何ひとつ変えない。オールマイトから告白でもしない限り、いや例え告白をしたのだとしても多分相澤のオールマイトへの態度は未来永劫変わることはないだろう。
     告白する気はなかった。相澤に恋人や婚約者がいるとは聞いたことがないし、親友のマイクもその辺の気配はないっスよ、とサムズアップして来た。しかしながら、告白したところで待っているのは失恋であるし、人生経験として今それを必要としていない。だからオールマイトは相澤を好きだけれど告白はしない、相澤に春が来たらそれを祝福すると心に決めていた。
     とは言え、好きな人に至近距離で接していればときめかない方が難しい。
     すんなりと腕の中に収まってしまった思い人に、返って動揺したのはオールマイトの方だ。
    「あらイレイザーおねむなの。早いわね」
    「今日は随分とハイペースだったようだけれど」
    「何かいいことでもあったのかしら。オールマイト、悪いけれどイレイザーを部屋まで運んでもらえる?」
    「お安い御用だ。じゃあ私も寝るとするよ」
    「はあい。美味しいワインの差し入れありがとう」
     声を掛けて促せば辛うじて相澤は自分の足をのそのそと足を動かした。隣に立って体を寄せ腰に手を回して、ろくに目も開いておらず明後日の方向に歩き出す体を上手く誘導する。
     おやすみ、と会場にいる人々の挨拶に笑顔と手を振って応え、オールマイトは相澤をなんとか階段まで導くことに成功した。
    「相澤くん、階段だよ」
    「……ん」
     ふらふらと左右に揺れながら、一歩ずつ相澤が階段を登る。踏み外さないように背後から見守っていると、突然相澤がくるりと振り返った。段差が仕事をして、珍しいことに視線の高さがぴたりと合う。
     いつも上から見下ろすばかりだったので新鮮な景色にオールマイトが瞬きをした。半目の相澤はわずかに眉に皺を寄せ、目の前のオールマイトがオールマイトに見えないのか訝った表情をしていた。
    「俺は酔ったら飲み会の大抵のことを忘れます」
    「……うん。そうだね」
     量は飲めても相澤は酒に強いとは言えない。全く飲まないことにしている自分よりは飲める方だと思うけれど、少なくとも教師陣の酒盛りを見るにおそらく相澤は弱い部類に入るだろう。ミッドナイトがおかしいというのは置いておいても。
    「だから、これも忘れます」
     そんな宣言と共に相澤は、まるで酔ってなどいないかのようにオールマイトの前で首を傾げ高さの揃った唇をそっと押し当てた。
     ビールの匂いが鼻先を掠める。
    「思い出させないでください、よ……」
     くく、と微かに笑って相澤はそのまま目を閉じ、オールマイトの方へ倒れ込んだ。
     手を広げて体を受け止める。規則的な呼吸音は、彼が眠りに落ちたことを示している。
    「……えっ?」
    (今のは)
     どう贔屓目に見積もってもキスだ。
     唇は触れ合った。酒の匂いのする、湿り気を帯びた薄い唇がオールマイトのそれに触れた。
     触れた瞬間、偶然ではないと言いたげに少しだけ強張って押し付けられた感触まで覚えている。
    (……思い出させないで、って)
     なら、何のためにしたのか。
     相澤は酒の席に興が乗って、自分に片想いする男を揶揄ってやろうなどと考えるような人ではない。
     揶揄いでないなら、なんなのだ。
     明日の朝相澤に昨日のキスの意味を教えてと尋ねてしまったら、深読みしたいと言っているようなもので。なら何も尋ねず、相澤が忘れるであろうこの悪戯を墓まで大事に持って行くのか。
     オールマイトはしばし愛しい温もりを堪能した後、決意を胸にその体を抱き上げて運んだ。



    「……」
     目が覚めて、そこが自室でないことはわかった。
     寝具が違う。僅かに身動ぎをしても全てを吸収するようなマットに横たわっている自分を、恐る恐る相澤は持ち上げた。すっぽりと顔を布団で覆い隠しているが、頭だけはみ出ていて、その髪色は金だ。
     布団が覆い隠す体躯の長さもそれがオールマイトだと言わずとも知れた。
    (何があった)
     ドンチャン騒ぎに巻き込まれ、ミッドナイトにとにかく飲まされたことは覚えている。状況から見るに酔い潰れてオールマイトに自室ではなくオールマイトの部屋に連れ込まれたのだろう。
     それはわかる。状況から筋道立てて判断するのはその仮説が一番正しい。
     ならどうして。
    (服脱いでんだ)
     シャツと下着。オールマイトが寝にくいだろうと脱がせてくれた。その仮説もなくはない。寧ろそうであってくれなくては困る。
     まさかまさか、酔った自分が暴走してオールマイトを襲ったわけではあるまい。
    (尻……痛くねえよな)
     手を当てるのも憚られるが、既成事実が有ったのならダメージを負っていそうな箇所に意識を走らせる。
    (ダメだマジで覚えてねえ。酔って、運ばれた。それ以上でもそれ以下でも困る)
     顔を覆った。
     好きな人とこんな形で事故を起こしたくない。
    「……おはよ。具合大丈夫?」
     無言で煩悶する相澤にいつの間にか起きたらしいオールマイトが話しかけた。
    「おは、ようございます」
     動揺から息継ぎの場所を間違って、それでも相澤は努めて平常心を保とうとする。
    「あの。昨夜、俺は何か失礼なことをしませんでしたか」
     オールマイトがじっと相澤を見た。
    「失礼なことは、されてないよ」
     奇妙な言葉の区切り。
     失礼でないことをした、と暗にしめすその意味合いに相澤はぐうっと息を飲んだ。
     オールマイトの目が真っ直ぐに相澤を見ている。
     綺麗な眼差しを前に、嘘も誤魔化しも許されない気がして耐えられなくなり目を逸らす。
     では何をしたのか。その質問は、藪を突いて蛇を出さないだろうか。出てくるのが蛇で済むならいい。
     それとも。
    (俺を餌にして、あんたが釣れるのか?)
     告白する気はないくせに好きだ好きだと物語る態度。どうしたいのかわかんねえとマイクに愚痴れば、回り道した回答は好きなだけでいい、と返って来た。本人に伝わっているとは知らないオールマイトの、その馬鹿げた愛情表現に苛立っていたのは事実だ。
     苛立っていたのは、相澤もオールマイトを想っていたから。そして同じ理由で、見守るだけにすると決めていたからだ。
     ウマが合わねえって互いにわかってるくせにそんなところだけ似なくていいのにな。
     マイクの揶揄に見せかけた心配に溜息しか出なかった。考え方が合わなくても目指すところが同じなら、似寄る部分もあるだろう。それが偶々、何の因果か惚れた相手に対する態度だっただけで。
     オールマイトの想いを知りながら何もできないままの自分の方が意気地無しだ。
     だから酒を飲んだ。
     忘れる自分が、箍を外して何かやってくれるのではないかと他力本願に祈りを込めた。その結果がこれだ。
    「……じゃあ、俺はどんなことをしたんですか」
    「再現してみる?」
     オールマイトが上半身を起こす。シャツとハーフパンツというラフな出で立ちで、これならきっと既成事実はないだろう。相澤が安心したのも束の間、オールマイトの手がすっと相澤の顔に伸び、目の前が暗くなる。
     触れて、最後に幻ではないよと一度だけ押し付けて。
    「……は」
    「君が言ったんだ。思い出させるなって。でも君が聞いたんだ。何をしたのかって。なら次は私が尋ねる番だよ相澤くん。どうして昨夜私に、キスをしたの」
     事実を受け止めきれない相澤に、質問しているオールマイトの方が泣きそうな顔をしていた。
     昨夜の自分の無謀な勇気に中指を立てる。そして、相澤は今度こそ正常な、素面な自分を自覚しながらオールマイトの頬に手を伸ばす。
     見えないだけでさりさりと指先に髭が触れる感覚を擽ったく感じた。
    「……そりゃあ、あんたにキスしたかったから、でしょうね」
    「それは」
     恥ずかしくて顔から火が出そうな言葉を物理的に言えなくした。喉の奥で出番を待つその二文字は、出来る限り引き伸ばす長い長いキスの後に、空耳のように転がり出ればいい。
     オールマイトが好きなだけでいいなんて本当は思ってないと、このくちづけで確認してから。






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    ankounabeuktk

    DONEなすさんのオールマイトの「消太」呼びについてよ妄想に爆萌えした結果のえろい方。
    でも挿入はない。
    イーブン【オル相】 しょうた、と名前を呼ばれて俺ははっと意識を戻した。
     まだ薄暗がりの部屋の中、尻が痛い。
     見慣れない風景に一瞬自分がどこにいるのかわからなくなり、身と息を潜めたまま本能的に周囲の気配を窺う。
     徹夜からの夜警当番だった。オールマイトがうちに帰って来てよ、と甘えて言ったのを何時に終わるかわかりませんからとはぐらかした。終わった時には疲れと眠気はピークを超えているだろうし恋人としての義務を果たせる自信がなくて。そうかあ、と残念そうに言ったオールマイトはそれ以上食い下がることはなく、俺はすみませんと週末に一緒に過ごせない申し訳なさに頭を下げて寮を出たのだ。
     そして明け方に平和に終わった帰り道、眠気に任せてぼんやり移動していたらオールマイトのマンションの前に立っていた。あんなことを言ったくせにここに帰るんだと刷り込まれていた意識が猛烈に恥ずかしかった。こんな時間にチャイムを鳴らして部屋に入るのは非常識だ。オールマイトは窓から来る俺のために寝室のベランダの窓の鍵をいつも開けている。今日も有難くそこから入ろうと捕縛布を使って真上に駆け上がった。カーテンはレースのものだけが閉じていたが、暗さで中を窺い知ることはできない。窓に手を掛けたら案の定からからと開いた。
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