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    ankounabeuktk

    @ankounabeuktk

    あんこうです。オル相を投げて行く場所

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    冬のオル相オフ会に性癖だけ参加したときに提出したペーパーの小話です。

    そして夜が来る【オル相】「あっ見て見て相澤くん! あそこ信号機が縦になってるよ!」
     オールマイトがタクシーの窓に張り付き子供みたいにはしゃいでいる。相澤はタクシーの後部座席でちらりとオールマイトの視線の先に目を遣り、そうですねと小さく同意した。
    「横だと雪が積もる面積が多いからなのかなあ」
    「おそらくそうでしょう」
    「合理的だね。あっ!」
     今度は何を見つけたのか、通り過ぎる速さに見送りながら指で示す。
    「コンビニの玄関の外側にもうひとつ囲いがあるよ」
    「風除室ですよ。雪除けです」
    「相澤くんは物知りだねえ」
     オールマイトは興奮冷めやらぬと言った様子で、椅子から浮かせていた尻を白いカバーの上に落ち着かせた。顔だけは窓の外の景色を飽きもせず、好奇心を抑えきれない様子で眺めている。
    「……雪国は初めてでもないでしょうに、そんなにテンション上げていたら疲れますよ」
    「はは。ごめんごめん」
     謝るけれど目は爛々と輝いていて、これは何を言っても無駄だな、と思いながら相澤はオールマイトとは反対側の車窓をぼんやりと眺めた。窓から離れているのにガラス越しにも冷気を感じる。
     空はどこまでも曇天が低く立ち込めており、体験したこともない低さに手を伸ばせば届くような錯覚に囚われた。その空から降り頻る雪は都会では見たこともない粒の大きな雪片をタクシーのフロントガラスに絶え間なく吹きつけている。
     駅前で乗り込んだタクシーの運転手は行き先を告げた後は観光地にありがちな話題を振ることもなければ特にそれ以外においても話しかけてくることもなく黙って車を走らせていた。オールマイトに気づかないはずがないだろうが、今はその心遣いが有難い。
     目的地のホームページによれば予定では四十分程と書いていたが、この道路状況ではその通りにならないだろうな、と思う。
     相澤の脳内のリスケジュールをよそに、オールマイトは小学生の下校風景や雪が降っているのに傘を差さない歩行者にいちいち新鮮に驚いては、そうか気温が低いから払えばいいのか、など自分なりに答えを見つけて納得している。
    「わあ、電話ボックスに階段がついてる」
     独り言の意味がわからず思わず目を遣ると、確かに電話ボックスが嵩上げされて数段高い位置に置いてあったし、登り降りのための階段がついていた。
    「……あれくらいは積もると言うことなんでしょう」
    「はあ。雪深いって大変なことだね」
     そもそも、何故オールマイトと相澤は今、二人で雪国にいるのか。
     それは数日前の校長の一言が全てだった。
    「雪山遭難者救出訓練のことなんだけど、今回は本物の山でやろうと思ってね。もう場所の候補は決めてあるから相澤くんにはオールマイトと下見に行ってきて欲しいのさ」
     聞けば土日を利用した一泊二日の距離だという。休日返上は良いとして、何故オールマイトと二人きりなのか。理由は明白だ。オールマイトは相澤の受け持ちクラスの副担任。それ以上でもそれ以下でもない。本当は、二人が交際している事実を察しのいいハイスペック校長はひょっとしたら十中八九気付いていて此方に何も言わないだけなのかもしれないとしても、公式に二人きりで出張を言い渡されるとなんとも居た堪れない気持ちになった。オールマイトは二つ返事で了承するし、相澤とて否を言い出せる立場にあっても校長の目論見が表面以外に読めない以上、理由もなく拒否するわけにはいかない。
     マイクには冬の雪見露天風呂なんて最高ジャン! などと囃され、ミッドナイトには地酒のリクエストのメモを握らされ、ブラドに至っては現地の親戚に便宜を図ろうと電話をかけようとしたので強引に止めた。遊びに行くわけではないのに、何故か全員に良い旅をと見送られて新幹線に乗ったのは今朝の話だ。
     そして数時間後には体感したことのない雪に囲まれている。タクシーが平地から山に登り出した途端、路肩の積雪量がぐんと跳ね上がった。すっかり落葉し切った枝ばかりの木々も、茶色い木肌が失われてすっかりと白に覆われている。
     タイヤが雪を食む、ギリギリという音が下から響く。
    「こんな雪山で遭難訓練なんかしたら、自分たちが遭難しかねませんよ」
    「ちょっと振動を加えるだけで雪崩も起きてしまうからね。二次災害が怖いな」
     訓練施設でこの程度の環境は作り出せるにしても、実際の現場になれば同じ動きができるとも限らない。
    「雪質も地域によって段違いだからね。もう少し南の豪雪地帯は水分を多く含んでずっしりとして重いし、北海道の方は気温が低いからさらさらとしたパウダースノーになって逆に固まりにくい。ここいら辺りはその中間といったところかな。しかし、こんなに雪が降っているのにこの山道は通行止めにはならないんだねえ」
    「観光地でもあるんでしょう。対向車がスキーを積んでます」
     すれ違う車の上には、キャリーにセットされたスキー板が載っている。これだけ雪深ければスキー場のひとつやふたつくらいあるに決まっている。
    「ほんとだ。観光バスも走ってるね」
     新幹線の駅名を目的地にした電光掲示板を頭につけた大型バスが通り過ぎる。その前面は吹雪の中を抜けてきましたと言わんばかりに真っ白に雪が張り付いていて、今でもこうなのに、これから向かう先の天候を想像しただけで相澤はげんなりとした表情を隠さなかった。
    「相澤くん、雪嫌い?」
    「嫌いというか、慣れてないだけです」
    「ちゃんとブーツ履いて来た?」
    「ブラドがやたら雪国マウント取って来たんで半分くらい真面目に聞きました」
    「持つべきものは友だね」
     どこまでも続く登り坂のうねるカーブの先に、突然大きな旅館が現れた。押し潰されそうな屋根雪を背負ってもびくともしない佇まいの前にタクシーは静かに進み出で、運転手の指がメーターを止める。
    「領収書下さい」
     ドアが開きオールマイトが先に降りた。
     吹き付ける雪と共に一気に車内の気温が下がる。同時に、強い硫黄の臭いが鼻についた。温泉地に来たのだという意識が高まる。相澤は金を支払い財布に領収書を入れた。下調べをした際、この旅館まではバスも出ていると聞いていたがオールマイトが騒がれる可能性を配慮して、タクシーを使っていいのさと相澤は校長から許可を得ていたし、実際そうして良かったと思う。タクシーですら先触れの時間より三十分は遅れている。バスを使っていたら遅刻はこの比ではなかったろう。
     トランクから一泊分の荷物を詰めた鞄を下ろす。宿は日帰り温泉がメインのようで、入浴券を買い求める自販機が一番目立つところに置いてあった。横に宿泊者はこちらと矢印が示されている。視線を遣ればチェックイン用のフロントが見えた。
    「俺が話をして来ます。ソファにでも座っていてください」
     相澤はオールマイトの足元に荷物を預けるとフロントに近寄り、校長が先に話を通してくれているという支配人の名と用件を告げた。人の良さそうな宿の半纏を着た中年の女性が後ろの事務室に消える。程なくワイシャツにネクタイの出で立ちのいかにも支配人風の男が出て来た。
    「根津様からお話は伺っております。こちらへどうぞ」
     相澤は早速老婆にナンパされているオールマイトの元へ駆け寄り行きますよと鞄を二つまとめて持つ。ファンへのお手振りを忘れずに、しかし足早に相澤の後ろに付き従ったオールマイトと二人、日帰り入浴客が流れて行くのとは反対方向の廊下をどこまでも歩いた。廊下の窓は木で蓋がしてあった。隙間から光が差し込むこともなく、暗い影を落としている。
    「すごい雪ですね」
    「はは。今年は少ない方ですよ」
    「これで?」
    「ええ」
     慣れた質問なのか苦笑いした支配人はしばらく歩いた先で、こちらですとドアを示した。鍵を差し込みドアが開けた先は、こじんまりとした、しかし上品に感じる和室だった。
     てっきり会議室辺りに案内されると思っていた相澤が面食らったのは、そこが明らかな旅館の客室だったからだ。
    「ここは?」
    「離れの貴賓室です。根津様からのご指示で」
    「遭難訓練の件は」
    「ああ。それはこちらにまとめてございます。どうぞご一読ください。疑問点等ございましたらお部屋に夕食をお持ちしますので、その時にでも係のものに渡して頂ければ明日の朝までにご回答致します」
     男は手に持っていた茶封筒を相澤に差し出し、それではごゆっくり、と言い残し扉を閉めて出て行った。
    「……どういうことです?」
     これではまるで、訓練の下見という名目のただの温泉旅行ではないか。
     相澤の苦虫を噛み潰したような顔を、オールマイトは口元を手で押さえて笑いを堪えながら眺めている。何もかもを知っていたらしいその態度に相澤の眉間の皺が深くなった。
    「あんたもグルかよ」
    「ごめん。怒らないで。遭難訓練の件は本当だよ」
    「だからって、わざわざ温泉に一泊する必要がどこに」
    「訓練をするなら少年少女の宿泊場所はここになる。宿の下見も我々の仕事だろ?」
    「それは理由が通りませんよ。あいつらを貴賓室に泊めるんです?」
    「それはそうだけど」
    「……俺らは仕事で来てるんですよ。なら、俺とオールマイトさんもただの同僚ですね」
    「相澤くん?」
    「何を楽しみに来たのか知りませんが俺とあなたはただの同僚なので、一緒に風呂に入る道理もありませんし同衾なんてもってのほか、況や肉体的接触なんかあるはずがないですもんね」
    「あ、相澤くん」
    「俺は仕事をします。あなたはお好きになさってください」
    「怒ってる⁈」
    「呆れてるんです」
     相澤は上着を乱雑に脱ぎハンガーに掛け、浴衣に着替えることもなくテーブルの上に預かった書類を袋から出して広げる。鞄から取り出したノートパソコンを立ち上げて開いたのは立案書のテンプレートだ。
     不機嫌さを表情に乗せたまま静かな部屋に相澤のキータッチの音がバチバチと響いた。
     オールマイトはコートを脱ぎ、することがないのか座布団に正座をして急須に湯を注ぎ二人分の茶を作っている。
     時折手が止まる。相澤は書類に目を通しながら、何かを思案してはまた指を動かしていた。眉間の皺が徐々に薄くなる。半ば騙されて連れて来られた釈然としない気持ちが、生徒たちへの課題で上書きされていく様子をオールマイトは黙ってテーブルの対面で眺めていた。
    「……こんなもんか」
     書類を保存して相澤が息を吐く。集中が途切れ、向かいで此方をしょんぼりと眺めているオールマイトを見て今自分がどこにいるのかを思い出した。
    「風呂、入ってなかったんですか?」
     てっきり先に入っているものだと思っていたけれど、しょぼくれ具合を見る限りは先程の宣言が余程堪えたのだろう。
    「……うん」
    「ここ、千人風呂っていう馬鹿でかい大浴場が有名なんだそうですよ。でも校長が離れを用意したってことは、あなたに配慮してくれたんでしょう」
     オールマイトの体にある傷痕は、隠すようなものでもないが晒すようなものでもない。引退したとはいえ、一般市民にあれを見せるのはオールマイト自信も躊躇う部分だと勝手に判断している。
    「先にどうぞ。俺は飯前にこちらの要望をまとめておきます」
     今度はボールペンを出して相澤が書類の空欄に直接書き付けを始める。
    「……じゃあ、お先に頂くね」
     湯呑みを持っていたオールマイトはタオルと浴衣を持ち相澤の後ろを通って、やはり元気無く外の風呂へ続くドアを開けて消えた。
     着替えの衣擦れが聞こえる。
     完全にこちらから見えなくなって、ようやく相澤は書類から視線を上げオールマイトが消えた先を見遣った。溜息で最後のわだかまりを吐き出す。
     質問と変更点を書き終え書類を封筒にしまうと、相澤も浴衣とタオルを持って気乗りしないままオールマイトの後を追った。
     相変わらず空からは、ひらひらなんて軽々しい形容詞はそぐわない大粒の雪が降り続けている。
    「ちゃんと肩まで浸かってください」
     オールマイトはそんな中でも上半身を半分以上湯面から出し、頭の上に雪を積もらせながら高い壁で覆われた露天風呂の外を見つめていた。
    「ってか、露天に入るような気温じゃねえでしょこれ」
     全裸で外に出るのも危険な外気温に、相澤は行儀を取っ払って湯船に飛び込んだ。高い波がオールマイトの肌を擽り、溢れたお湯は石畳の上のさらりと積もった雪を溶かして押し流して行く。
    「ぷは。……オールマイトさん?」
     頭まで跳ねた湯に波打った髪ごと掻き上げた相澤の前で、突然湯船にダイブして来た存在に驚いた顔が振り返っている。
    「随分ダイナミックな登場だね」
    「いつまでしょぼくれているんです? やることやってさっさとくつろいでください」
    「書類のまとめ終わったのかい?」
    「ええ。修正希望まで書き込んだんで風呂から上がったら意見聞きたいです。現場の下見は明日でいいでしょう。日も暮れますし、慣れない人間が夜間に雪山を彷徨くのも危ない」
    「承知した」
     オールマイトは気を取り直したのか、少し元気を込めてそう返事をするとずるずると体育座りのまま体を倒して肩どころか鼻の下辺りまで湯に沈んでいく。
    「何してるんです」
    「肩まで浸かれと君が言ったから」
     会話のために唇を水中から引き上げ、言い終わるとまたぶくぶくと沈んでいく。一緒に風呂に入るのはオールマイトのマンションがせいぜいだけれど、その湯船よりは広い石造りの浴槽の中で、大きなオールマイトはできる限り小さく縮こまっている。
    「……」
     触るなんてとんでもないと嗾けたのは自分だし、仕事で来ているのにいちゃつくなんて論外だ。それはそうだけれど、肝心のオールマイトが相澤の説教に納得せずとも素直に従っているのもまたどことなく面白くない。
     自分はつくづく我儘だと思う。
    「意見の取りまとめが終わって書類を旅館側に引き渡してから、明日の朝現場の下見に行くまでの時間は勤務時間外としてもいいです」
     ぷく、と泡が立つ。オールマイトは言葉もなくぎょろりと落ち窪んだ目だけを相澤に投げた。
    「校長が何を思って俺たちを送り出したのかは知りませんが、下見の次に大切なのはオールマイトさんのリフレッシュでしょう」
    「それは違うよ」
    「どこが?」
    「リフレッシュが必要なのは私だけじゃないってところさ」
    「気を遣って頂くほど切羽詰まっちゃいないつもりでしたが」
    「君は真面目だからな。強引に連れ出さないと息抜きすらしないだろ」
    「……否定はしませんがね」
     最近はお気に入りの野良猫の溜まり場にも行けていないのが事実だが、それを見抜かれていたのがまだまだ未熟な証だ。
    「書類に目を通しておくよ。それが終わったら、君にはご飯ともう一度風呂と睡眠を取ってもらう」
    「俺のための旅にされるのはごめんです」
     立って風呂から上がろうとするオールマイトの背に相澤はむっつりと唇を尖らせて文句を投げつけた。
    「引いてはみんなのためだろ?」
    「あんたのためにしてくれた方が俺は納得できますよ」
    「そんなに可愛いことを言うと夜にむしゃむしゃと食べてしまうよ」
    「二人きりで温泉なんて聞いて元からそのつもりだったって言ったらどうします」
     目を丸くしたオールマイトが吹雪に晒されくしゃみを連発する。相澤は慌ててオールマイトの手首を掴んで再び湯船に引き入れた。
     細身だけれど長めの巨体がどぼんと落ちて、二人の頭上を超える波が立つ。溺れる隙間を縫って相澤はオールマイトの体を抱き寄せ夢中で唇を合わせた。
     波が引き、それぞれの髪の先から雫が滴る。待ち散らかされた湯に雪が溶かされて色濃くなった湯気が息苦しさを呼ぶ。それでも、離せなくて。
    「……情熱的だね」
     やっと唇が離れた後にそう切り出したのはオールマイトだった。嬉しさを滲ませながらも迂闊な言葉選びが相澤の機嫌を損ねると知っているから、黙って出方を窺っている。
    「旅行に行くなら仕事に託けないでちゃんとそう言ってください。俺は恋愛なら騙し討ちが嫌いです」
    「素直に温泉行こうって誘ったって君時間の無駄だって言うじゃないか」
    「それを説得すんのがあんたの役目だろ」
     八つ当たりにも思える発言にオールマイトはけらけらと笑い、そうか、と破顔した。
    「そうだね、君は、そういうのが好きだものね」
    「好きじゃねえです」
    「ごめんごめん。察しの悪い私ですまない。私の可愛い相澤くん、どうか機嫌を直しておくれ」
    「まだ勤務時間中だって言ってんだろ」
    「ええ? さっきのキスは?」
    「あれはキスじゃありませんよ。偶然唇が触れただけです」
     屁理屈に屁理屈を重ねる相澤にオールマイトは喜ぶばかり。墓穴だとわかっているのに反論せずにはいられない。オールマイトへの想いを素直に出せない弊害だとわかっているのに止められなくて、とうとう相澤は黙り込んでしまった。
     オールマイトもまた何も言わずに、相澤の体を抱き締めて湯に浸ける。素直に痩せた胸板に頭を預ければ、視界いっぱいに傷痕が広がった。
    「のぼせますよ」
    「外はこんなに冷たいんだもの、のぼせないよ」
    「なんで抱き締めてるんですか」
    「これは、偶然手を回したら腕の中にたまたま君がいるだけさ」
    「……そうですか」
     偶然なので、相澤は黙ってオールマイトの腕の中にしばらく収まった。顔を上げたらまたもや偶然に唇が触れてしばらくそのままでいたけれど、全く狙った意図はない。
     離しても少しもすればどうしても偶然が偶然を呼び何度も触れ合ってしまって、仕方なく互いに離れようと唇を動かしてはみるのに、離そうと押し出すために差し伸べた舌がここに来ても偶然お互いの口内に入り込んでしまって、出られずにもがいていたあたりで、飽きて建前にけりを付ける。
    「仕事終わらせてから、って、言いました」
    「オーケー相澤くん。まず私は副担任の責務を全うするよ」
     オールマイトが両手を挙げて恭順の意を示す。上がっていく姿を恨めしく見送りつつ、相澤は天を仰ぎ極寒の空気の中で火照った顔を冷やした。
     勤務時間に食い込んでしまった、僅かばかりの私生活の逸脱をこの雪が全て覆い隠してくれるだろう。
     そして夜が来る。
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    ankounabeuktk

    DONEなすさんのオールマイトの「消太」呼びについてよ妄想に爆萌えした結果のえろい方。
    でも挿入はない。
    イーブン【オル相】 しょうた、と名前を呼ばれて俺ははっと意識を戻した。
     まだ薄暗がりの部屋の中、尻が痛い。
     見慣れない風景に一瞬自分がどこにいるのかわからなくなり、身と息を潜めたまま本能的に周囲の気配を窺う。
     徹夜からの夜警当番だった。オールマイトがうちに帰って来てよ、と甘えて言ったのを何時に終わるかわかりませんからとはぐらかした。終わった時には疲れと眠気はピークを超えているだろうし恋人としての義務を果たせる自信がなくて。そうかあ、と残念そうに言ったオールマイトはそれ以上食い下がることはなく、俺はすみませんと週末に一緒に過ごせない申し訳なさに頭を下げて寮を出たのだ。
     そして明け方に平和に終わった帰り道、眠気に任せてぼんやり移動していたらオールマイトのマンションの前に立っていた。あんなことを言ったくせにここに帰るんだと刷り込まれていた意識が猛烈に恥ずかしかった。こんな時間にチャイムを鳴らして部屋に入るのは非常識だ。オールマイトは窓から来る俺のために寝室のベランダの窓の鍵をいつも開けている。今日も有難くそこから入ろうと捕縛布を使って真上に駆け上がった。カーテンはレースのものだけが閉じていたが、暗さで中を窺い知ることはできない。窓に手を掛けたら案の定からからと開いた。
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