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    もものかんづめ

    @kmjy25

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    もものかんづめ

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    丹楓さんがおしょたな丹恒くんを育てている楓恒の髪の話

    ##楓恒

    幕間の楓恒㉙ ゆっくりと白珠に編まれていく自分の髪を丹恒は早く見たいとはやる気持ちを抑えながらじっと座っていた。
     今日は少し暑いと、丹恒が零したことが始まりではあった。この天候も気温も管理されている仙舟の地で暑いと思うこと事態がおかしいのだが、丹恒からしてみれば最近水浴びをしていないので暑い、くらいの気持ちだったのかもしれない。
     そんな丹恒にそれなら髪を結ってみましょうと、白珠が丹恒の髪を編み始めたのが数刻前。そこに鏡流もやってきて、二人で丹恒の髪をこうしたらどうかと色々話し合いながら編み進めていた。
    「はくじゅ」
    「そろそろ完成です! えっと、ここに此れを…」
    「白珠、此方の方が良いだろう」
    「あ! そうですね!」
     鏡流から手渡された髪飾りが丹恒の髪へと飾られる。丹恒からその髪飾りは見えないが、少し体を震わせるだけでしゃら…と軽やかな音が鳴った。
    「どうですか! 丹恒」
     完成だと、白珠に言われ丹恒は視界に入った自分の髪へと小さな手を伸ばす。三つに編まれた髪はいつもと違い広がることは無く、どこか寂しさも感じるが高揚感もある。
     早く丹楓にもこの髪を見せてあげたいと丹恒は立ち上がり、鏡に映った自分の姿をじっと見た後にもう一度腰を下ろした。
    「丹恒?」
    「…おれも、ふうにぃにしたい」
    「この髪型ですか?」
    「ん」
     こくり、と丹恒が一度頷くと鏡流と白珠が顔を見合わせる。
     まだ十分に成長していない丹恒にいろいろなことを一度に教えても実践するのは難しいだろう。それに、丹恒は失敗したとなれば気落ちしてしまうかもしれない。
     それならばと、鏡流は持っていた元結を一本丹恒に手渡した。
    「良いか、此れは髪を結う為の紐だ」
    「ん」
    「編むのはできずとも、此れならばできるだろう」
    「ん、ありがとう、けいりゅう」
     簡単な結い方を目の前で鏡流が行う。それを丹恒は忘れないように視線で追いかけて、時折頷きながら鏡流から渡された元結をきゅっと握りしめた。
     早く丹楓にしてあげたいとはやる気持ちのまま、白珠と鏡流に手を振ると丹恒は丹楓の部屋へと駆け足で向かう。
     今日は、応星が来ていて何か難しい話をすると言っていた気がする。けれど、仕事の話ではないとも言っていた気がした。
     二人の話が既に終わっていればいいと丹楓の部屋の扉を僅かに開けると丹楓と応星はまだ何かを話していたようで、丹恒はその場から動けなくなってしまった。
     このまま此処で待っているのもいけない気がする。けれど、どうしても丹楓の髪を結いたい。
    「丹恒?」
    「…! ふうにぃ…」
    「その様な所で何をしている?」
     丹恒の姿に気づいた丹楓が、丹恒が通れる程まで扉を開ける。入っても良いのだと、嬉しくなった丹恒は元結をきゅ、と握りしめながら部屋へと入る。
    「…ふうにぃ」
    「髪を結って貰ったのか」
    「ん」
     するりと丹楓の指が丹恒の編まれた髪に触れる。いつもであればさらりと、丹楓の指から逃げていく髪も編まれているせいで逃げることなく丹楓の手に留まり続けている。
     丹恒の髪を彩っている髪飾りの花緑青色も映えているだろう。
     丹恒の髪を見ながら、己が丹恒に髪飾りを贈ることを僅かに考えていた丹楓は丹恒が同じ色合いの元結を握りしめていることに気づき目を瞬かせた。
    「それは如何した?」
    「…ふうにぃに」
    「其方がしてくれるのか」
    「ん」
     こくりと丹楓の言葉に頷き、丹恒は丹楓の髪に小さな手で触れる。鏡流はあまり引っ張ってはいけないと言っていたから引っ張らないように緊張した手でなるべく優しく。
     一纏めにした髪をなんとか元結で結う。纏まりはしているが、あまりにも緩くすぐにほどけてしまいそうだ。
     けれど、丹恒はそれでも自分が丹楓の髪を縛ることができたのだとご満悦な顔でじっと丹楓のことを見ている。
    「ふむ…、悪くはない」
    「…!」
    「解けた時はまた頼もう」
    「ん!」
     丹楓に褒められ、ふくふくとした頬を仄かに紅く染めた丹恒は嬉しそうに笑みながら頷くと丹楓の部屋を後にした。一瞬の嵐のような出来事に応星は、は、と笑いながら丹楓へと目を向ける。
    「すぐに解けそうだが、結い直すか?」
    「此れで良い」
     丹恒が結った髪へ視線を向けながら丹楓は小さく笑みを零す。
     此れで、ではなく此れが良いのであろう。そう思いはしたものの、応星はそれを口に出すことなく話の続きをすべく設計図を丹楓の前に広げた。

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