幕間の楓恒①初めの頃は鏡を見ながらしていたことだが、慣れてくると鏡を見なくても自然と出来るようになった。
朝起きて、顔を洗い、筆を片手に持ち、顔に向ける。
「毎日自分でしているのか?」
いつの間にそこに居たのか丹楓がこちらを見ていた。
消えるなと言った手前、勝手に出てくるなとは言いづらく口を噤む。
「他の人に任せられないだろ」
「余が仙舟に居た頃は龍師にさせることもあったが」
それはお前が龍尊であり、丹楓だからだろう。
ジト目で丹楓に目を向けるが、本人は気にした様子もなく俺の手の中の筆を見ている。
「余がやってやろう」
「...結構だ、自分でできる」
「余がやると言っておるのだから、其方は甘受していれば良い」
「おい...!」
手に持っていた筆を丹楓に取られる。
736