HUMANLIKE|巽ひめ❚❚ 6
「実家の教会の裏にね、少しひらけた庭があったんです。だいたい六畳分くらいでしょうか、もう少し広かったかもしれません。とにかく、塀を建てたんじゃご近所さんに冷たい印象を与えてしまうからと、敷地をぐるりと囲むようにして生垣を作ろうということになって。母の提案で、夾竹桃を植えたそうです。育てやすいし、夏には鮮やかな花をつけるからと。それからしばらくは、母も近所の方々もその花が咲くのを喜んで眺めていたそうです。鮮やかなピンクや純白の花びらが、降り注ぐ陽光を一身に受けて輝いていたとか。ああ――すみません。どこか他人事のような話し方が気になりましたか? ご容赦ください。俺が物心ついたころにはもう、裏庭は更地になっていたもので」
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