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    momo__taron

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    【天みつ】相合傘

    ##天みつ

    「あ、傘忘れた……マジかぁ」
    もう少しで梅雨入りが発表されるかというとある日の昼過ぎ。和泉三月がテレビ局を出ようとすると、リュックに折り畳み傘が入っていないことに気づいた。
    昨日の鞄と違うリュックにして来たら、折り畳み傘を入れ替えるのを忘れていたらしい。
    「お疲れ様、どうしたの?」
    後ろからかかった声は九条天。同じ番組の収録だったのだ。
    「あー、傘忘れちゃって。昨日使ってた鞄に入れっぱなしにしてたみたいでさ。」
    まいったな、と三月はへらりと笑う。駅までは走れば5分くらいか。コンビニを探してビニル傘を買うよりは走って駅まで行った方がいいだろう。そう思っていた。
    すると、天が自分の傘の留め具を外しながら尋ねる。薄桃色で柄のないシンプルな傘だった。
    「駅までで良ければ入っていく?」
    「いいの?」
    思わぬ天のお誘いに三月は目をぱちくりとさせた。
    「さすがにキミたちの寮までは難しいけど。」
    天は眉を下げる。テレビ局の最寄り駅に着いたらそこから2人は違う路線で帰る。
    「そっちは今日壮五が作曲で篭ってるから傘持ってきてもらうわ。助かる!サンキュー!」
    そして天は傘を広げ、三月を中に入れた。

       ***

    しとしとと降り続ける雨の中、同じ傘の中に入った2人はたわいもない世間話を繰り返し駅へと向かう。陸の体調の話、先日ユキから貰った野菜の話、MEZZO''の新曲の話、トウマの出演するバイク旅番組の話……。話題は尽きず、気がつけばあっという間に駅に着いてしまった。
    「助かったよ、九条。入れてくれてありがとう……って、お前肩めっちゃ濡れてんじゃん!」
    屋根のあるところまで行き、天が傘を閉じる。三月がお礼を伝えようと天と向かい合って、初めて天の肩が濡れていることに気がついた。三月のいた方と反対側の肩だから、傘から出てしまっていたのだろう。
    「ああ、傘思ったより小さかったみたい。」
    なんでもないように答える天だが、三月の中の申し訳ない気持ちは拭えない。
    「言えよ……ごめん、冷えるだろ……もし風邪でも引いたら、」
    「大丈夫だって。」
    少し肩が濡れただけでは簡単に風邪は引かないだろう。天はそう言うが三月はやっぱり引き下がらない。
    「でも……」
    「そしたら、」
    すると天は三月の後ろに立ち、不用心にも開け放しだったリュックから何かを取りだした。
    「これ、借りるね。」
    天が取り出したのはオレンジ色で薄手のジャンパー。三月が念の為にと持ってきていたものだ。寒色系でシックに纏めた今日の天の格好には些か不似合いのような気がする。
    「リュック、ちゃんと閉めた方がいいよ。また今度返すね。」
    天はそう言ってジャンパーを肩にかけ、自分の路線の改札を通って行ってしまった。
    「かっこい……」
    三月はそんな姿を呆然と眺めていた。
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