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    momo__taron

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    【天みつ】新婚天みつの痴話げんかに巻き込まれてあげるモモちゃん先輩

    その晩、怒りに任せて三月は百の家に転がり込んだ。
    「で、今日は天とどんな喧嘩したの?」
    ソファでクッションを抱えて頬をふくらませて座り込む三月に、百は優しく尋ねる。
    「……天が、女の人と肌を重ねる仕事があって、」
    三月はぽつり、ぽつりと話し始める。
    天が成人して早数年。TRIGGERのイメージからもそういったオファーが来ることは珍しいことではなくなった。だから、その仕事があったことは問題ではない。
    しかし天はその仕事があったことを三月に伝えていなかった。三月はそれをドラマのオンエアで初めて知ったのだ。
    「なんで教えてくれなかったんだって聞いたら、『よくあることだし、今更でしょ』って。」
    その言葉をきっかけに2人は喧嘩をして、三月が家出して百の部屋に逃げ込んできた次第である。
    三月は涙を流しこそはしないものの、目は少し潤んでいた。
    「あ~、うん……、まあ、心構え変わるし、言って欲しいよねぇ……」
    百も当たり障りのない返事をする。三月の気持ちも分からなくはないが、こればかりは職業柄仕方がないとも言える。
    「百さんは良いですよね……千さんは共演NGの女優さんばっかりで。そんな心配ないですもんね。」
    「そういう刺し方やめてくれる!?」
    酷い八つ当たりである。別にユキがそういう仕事やったって大丈夫だもん、多分。
    「三月、そろそろ機嫌直しな? 天からラビチャ来てたよ、『うちの来てないですか』って。」
    「うちのってなんだよ……オレは物じゃねーし。」
    三月は口を尖らせてごちる。
    モモちゃん、「うちのお嫁さん」ってことだと思うなぁ~……。
    「三月のとこにも電話やラビチャ来てるんでしょ。」
    「…………。」
    三月は自分のスマホの画面を表示する。三月が出てから天からの電話もラビチャも10件以上来ている。「ごめん、」「ボクの言い方が悪かった」「キミが居なくなると寂しい」「何でも言うこと聞くから」そんなどこかの漫画かドラマで見たようなセリフが並んでいる。
    「まぁウチにいるよって返しておいたからもうすぐ来ると思うけど。」
    「えっちょっ、」
    百の爆弾発言に三月はぎょっとした。
    その瞬間、ピンポーン。インターホンが鳴る。
    『九条です。』
    「はいはーい、開けるね。」
    三月が止める間もなく百はオートロックを解除する。
    「なんで居るって言ったんですかぁ!」
    三月は焦って百に泣きつく。こんなすぐに来るなんて聞いてない。
    「だって寮じゃなくてここに逃げてきたってことは、迎えに来て欲しいってことでしょ。」
    百の指摘に、その通りであった三月は顔を赤く染めて目を逸らす。
    三月は結婚と共に出たが、他のメンバーはまだ寮で暮らしている。長年暮らしてきた、実弟だっている寮の方が百の家より気兼ねなく過ごせるはずなのにわざわざ百の家に逃げ込んだのだ。三月の味方ばかりがいる寮に逃げ込んでしまったら、天が迎えに来にくいだろうから。だから中立の立場でいてくれる百の家に来たのだ。
    そして部屋のインターホンが鳴った。
    「百さん、遅くにすみません。」
    百が扉を開けると、気まずそうな顔をした天がいた。
    「いいよいいよ、あまり世話を焼かせてくれない天と三月が甘えてくれるの嬉しい!」
    ニッと八重歯を見せて笑う百に、天は眉を下げて笑みを見せた。
    「恐れ入ります。……三月。」
    そして天は相変わらずソファでクッションを抱えたままの三月に声をかける。
    「…………。」
    三月は無言のまま、クッションをぎゅっと握りしめる。
    「ごめん、三月の気持ちをちゃんと考えていなかった。ごめんなさい。」
    天は三月に向かって深く頭を下げた。
    「……よくあることだし、今更かもしれないけどさ。オレは毎回ヤだなって思ってるし。」
    三月はクッションに顔を埋めて、ブツブツとごちる。
    「……うん。ごめんなさい。」
    「でも仕事だし受けるな、なんて言えないから。我慢、してて。」
    三月の握りしめるクッションは湿っていた。小さく鼻をすする音が聞こえる。
    「……ごめん。これからはちゃんと言う。……だから、帰ってきて欲しい。正直、キミに泣かれるのは……堪える。」
    天は自分の服の裾を掴んで、絞り出すように懇願する。
    「……次は一織の部屋に逃げるからな。」
    三月はクッションから少し顔を上げて、上目遣いに天の顔を見た。目元が赤い。
    「それは困る……けど次は絶対ないから。」
    天は三月に左手を差し出した。
    三月はその手を取り、クッションを座面に置いて立ち上がった。
    「うん……。大人気ないことしてごめん……帰る……。」
    空いた方の手で乱暴に涙を拭おうとすると、百がティッシュを差し出す。
    「百さん、すみません……、」
    三月は素直にそのティッシュを受け取り、涙を吹いた。
    「いいのいいの。仲直りできて良かったね。」
    更に拭いたティッシュを捨てられるようゴミ箱まで持ってきてくれた百。
    そんな彼に天は深く頭を下げる。
    「ありがとうございます百さん。今度、お礼持ってきますね。」
    「へへ、それなら三月と天の作ったお菓子がいいな。時間できた時でいいから。ね?」
    百はあざとくウィンクをして見せる。三月はやっと顔を綻ばせた。
    「はい、作ります。天と一緒に作って、持っていきます。」
    そして2人は靴を履き、部屋を出る。
    「やったぁ! 帰り、気をつけてね。」
    「……はい、ありがとうございました。」
    「ありがとうございました。」
    百の見送りに、天と三月は一緒に頭を下げた。
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