とある日、楽屋で三月と2人の時。ソファに座っていた天はムッとした表情で自分のスマホの画面を見ていた。
三月が気になって後ろからそれを覗き込んだら。
「九条、何見てんの? ってオレのポスターじゃん!」
「ちょっと、勝手に覗かないで。」
天は眉を吊り上げてスマホの画面を伏せた。
「……なんでそんな顔で見てたんだよ。オレのポスター、あんま良くなかった?」
反対に、三月は眉を下げで尋ねた。天は小さく息を吐いた。
「……いや、キミはいい仕事をしたと思うよ。これを見たら誰だってそのハンバーグを食べに行きたくなると思う。」
アイドルとしての天の高評価に三月は胸を撫で下ろした。
「良かった~。ていうかじゃあ、なんでそんな顔してたんだよ。」
そして三月は口を尖らせる。
「……キミのこんな顔、見たことなかったから、」
天は小さな声で答えた。
「嫉妬してんの? ハンバーグに?」
三月は首を傾げた。
「し、嫉妬なんかしてない!」
天は恥ずかしそうに頬を染め、食いつくように否定した。
「ただ、キミをそんな顔にさせるハンバーグ、どんなものかと……」
そしてまたごにょごにょと小さな声で呟く天。そんな彼を見て、三月は吹き出した。
「ぷっ、あははは! 九条おもしれぇ~!」
「ちょっと、ボクは何も面白くないんだけど!」
天はそれに期限を悪くする。
「ハンバーグももちろん美味かったんだけどさ、やっぱりメンバーと一緒だからだったと思うんだよな。」
三月は笑いながら答える。
「ボクとじゃ、あんな顔してくれない?」
天が首を傾げて上目遣いに尋ねると、三月はわかりやすく狼狽える。
「う、……す、するかな、どうだろ。」
頬を染め、目を逸らしてわざとらしく両腕を組む三月に天もくすりと笑う。
「まぁ、ボクにしか見せない顔もあるからね。」
「もー、こんなとこで言うなよ、いろいろ思い出すじゃんか。」
三月は顔の火照りを誤魔化すように、手でぱたぱたと仰ぐ。
「そうだ、今度オフが被ったら一緒にOFF旅行かない? ハンバーグもすげーおいしかったからさ、一緒に食べようよ。」
そして三月が提案すると、天は頷いた。
「うん、キミが誘ってくれるのを待ってました。」
「自分で言やぁいいじゃんか。」
三月は怪訝な顔を見せる。
「1回行ったハンバーグ、もう1回どうって誘いづらいでしょ。」
天の言い訳に三月は呆れる。
「気にしないしお前となら何回でも行くのに。」
「いいのいいの。ポスターも生で見られるの、楽しみにしてる。」
「生のオレがいるのにオレのポスター見に行くのかよ……。」
三月は大きなため息をついた。