「これでよし、と。」
三月はスマホを見ながら満足そうに頷く。
ピコン、と天のスマホが鳴り、紅茶のカップを置いて通知を確認する。
『和泉三月(IDOLiSH7) の新しい投稿を見る:明日19:00~あけぼのテレビにて放送の……』
ラビッターの通知だ。今しがたソファで隣に座っている三月が更新したものを知らせる通知だ。
「天、オレの投稿に通知設定してんの? 陸とかTRIGGERも?」
三月が天のスマホを覗き込んで尋ねる。
「キミだけ。忙しいとき、埋もれないように。」
「あー、それいいな。オレも天の通知設定しよ。」
三月がスマホを捜査していると、三月のスマホがティロン、と音を鳴らす。
「やべ、充電。」
ちらと天が視線をやると、三月のスマホの画面に『充電量が15%以下です』というダイアログが出ている。
三月は充電コードを持ってきて、コンセントとスマホを繋いだ。
「これで大丈夫っと。」
コンセントに繋いだまま、三月はラビッターの設定をする。
すると、三月の裾を控えめに引っ張る手があった。
「ねえ。」
「ん、どした?」
「ボクも……、充電ヤバいんだけど。」
天はこれ見よがしに視線を移す。
「コンセント余ってるよ?」
コンセントを指さす三月の鈍さに天は苦い顔をする。
「ボクはコンセント式じゃなくて。キミが充電してくれなきゃ……」
天の口元がへの字に曲がる。
「あ、そういうことか。ごめんごめん。はい、」
三月は両手を広げる。
天は何も言わず、そっとその胸に身を寄せた。
「低気圧かな。」
「うん……」
「そっか。頭痛いなぁ。」
「うん。」
「あとで冷却シート持ってくるな。」
三月は優しい手つきで天の頭をなでる。小柄な体に似合わないがっしりした指が、いつもより少しだけ絡まった天の髪を1つ1つほどいていく。
「ありがと……。」
「今、充電どんぐらい?」
「10%くらい……」
天は三月の肩に顔を埋める。
「マジでやべーじゃん。」
「朝までかかりそう……。」
「いいよ、朝まで充電してやる。ベッド行く?」
「……連れてって。」
「はいよ。っこいしょっと、」
三月は天の体を横にして抱える。
天は縋るように三月の服をきゅ、と掴んだ。
「お茶冷めただろうし、何か暖かい飲み物とかいる?」
寝室のベッドに優しく降ろし、三月はしゃがんで再び天の頭をなでた。
天はその三月のパジャマの裾をそっと指で引っ張る。
「一緒に居てくれたら、いいから。」
「ん、じゃあこのまま寝ちまうか。」
三月はふっと笑って、そのままそっとベッドに入り込む。
「うん。」
「起きたらきっと直ってるよ、大丈夫。おやすみ。」
丸くなった天の背中に手を回して、三月は囁いた。