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    omoch117

    @omoch117

    文章書いて自給自足が趣味のゲーム脳おばさん。左右非固定、NLGLBLなんでも食う。
    絶賛、ツ島の刺と牢で狂ってる。

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    omoch117

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    誕生日のお祝いしてる刺と牢を書きたかった。
    お誕生日おめでとうございます。

    一年の節目 對馬を守った四人の冥人たち──鎧武者の侍、凄腕の女弓取、妖術を使う牢人、狐面の刺客。日夜、蒙古や鬼どもと人知れず戦う彼らにも休息の一時がある。

    「おい、今日のメシは何だ?」
     日が暮れる頃になると、刺客はこの時だけ騒々しくなる。腰に得物を差したまま、小屋を出たり入ったり。
     台所には、軽装で笠も面頬も外した牢人が立つ。その手元を後ろから覗き込んでは、やれ、これは何だ、あれは何だ、と刺客は質問攻めだ。それにいちいち答えてやる彼の寛容さに、弓取は毎度感心していた。
    「前から思ってたけど、あんたって料理も裁縫もできるし性格も静かでさ、出来た女房みたいだよねぇ」
     汁物の味見をするため、小皿を口に当てていた牢人は、そのまま居間へ振り向いた。
    「世辞だと思っておくぞ。不味いよりは美味い飯を食いたいだろう」
    「まぁ、そりゃあね」
     生憎と、この冥人四人衆のうち紅一点である弓取は、料理の才に恵まれていなかった。初日、それはそれは、食材が哀れになるほどのものを拵えてくれたものだ。以来、心得のある牢人が食事を担当することになった。
    「人にゃ、得手不得手ってもんがあるのさ」
     弓の弦を手入れしながら独り言ちる弓取。
     あれこれと言うつもりは毛頭ない。戦場でも、牢人は弓取の遠距離攻撃に、弓取は牢人の回復に、幾度も助けられている。もちろん、刺客や侍とも同じ。
     長所と短所は、お互いに出来ることで補い合えばよいのだ。それが同志というもの。
    「そういえばさ」
     ふと思い出したように、弓取は牢人の隣に立つ男の方を向いて言った。
    「刺客は、いつ生まれたのか全く分からないのかい?」
    「知らんなあ、いつの間にか生きてたからな。どこで誰が生んだのかもサッパリだ」
     淡々と、どこか他人事のように刺客は答えた。
     そのやりとりを黙って聞きながら、牢人は汁物を小皿に掬って最後の味見をした。
    「……よし、出来たぞ」
     ちょうど囲炉裏の鍋の粥も食べ頃だ。弓取は、侍を呼んでくる、と言い残して出ていった。


    「今日のはなんか、いつもより具が多くないか?」
     椀を半分ほど啜った刺客が、牢人を見やる。その相手は涼しい顔で、ニヤリと笑った。
    「気が付いたか。今日は特別な日だ、お主は覚えておらんだろうがな」
    「特別ゥ? なんかあったか?」
    「当ててみろ」
     記憶に残っていないだろうと自ら言っておきながら、その答えを当てろと無茶を言ってほくそ笑む。いつもなら、それは刺客の態度だ。
    「意地が悪いぞ、牢人」
    「お主に言われたくはないな」
     くくく、と牢人が笑う。刺客は仏頂面で頭を振った。牢人の笑う顔は好きだ、だが、そういうのじゃない。
    「全部喰っちまうからな」
    「おい、答えは」
    「知らん! 後だ、後。メシが不味くなる」
    「んん……それは困るな」
     がつがつと乱暴に貪っている様子を、満足そうに牢人が見ている。ふと、彼が食べ進んでいないことに気が付いて、刺客は手を止めた。ゴックン、と喉が大きな音を立てる。
    「おい、おればっかり食ってるぞ」
    「そうだな」
    「お前も食え!」
    「あぁ、食べるとも。お主が腹一杯になってからな」
    「おれのせいで痩せたら困る、食え」
     そのセリフで一瞬、呆気にとられた顔をしてから、盛大に破顔して牢人は声を上げて笑った。
    「お主に気を使われるとは」
    「さっきから笑いすぎだ」
    「くく、すまん」
     薄っすら涙目になりながら、牢人はまだ笑っている。苛立ちを募らせながら、刺客は本当に、牢人の分も食べきってやろうかと思った。
    「変わったな」
    「なにがだ」
    「お主がだ。当時は野生の狐のようで、手当やら何やらと苦労したものだったが……一年前の、ちょうど今日なのだぞ」
     ぴた、と刺客の手が止まる。
    「そうだったか?」
     目を丸くする顔に、牢人は頷いて応えた。
    「生まれた日が分からぬとも、何かの記念日をそれにすれば良いと思うてな」
     要するに、出会って一年の節目であるから、それを刺客の誕生日として祝おうということだ。この夕餉の具材が刺客の好物で、たっぷり腹を満たすほどの量を用意したのも、そういった意味を込めての事だったのだろう。
    「また一年よろしく頼むぞ、刺客」
    「おまえ、いいヤツだな」
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    💘💕💕💕🙏🙏😭❤❤❤😭❤❤❤❤🎂🎂🎂🎂🍰🎂💘💘
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    もなか

    DONE書かせていただいたアルテミスです!
    一人(?)だとこの長さがいっぱいいっぱいでした……!
    月って地球の唯一の衛星なんですよね。それってちょっと、エモいなと思って空を見上げています。
    ありがとうございました!
    貴方の唯一になりたくて(アルテミス(とオリオン)) 目を開けて、閉じる。瞼の裏に広がる宇宙は、今過ごしているこの場所よりよく見知った場所だった。私を象徴する月が静かにこちらを見ている気がして首を傾げる。だってこれは、私が私を見ているようなものだ。サーヴァントだからあり得るのかしら。それにしたって神たる私を複数用意するなんて、不敬だと思うのだけれど。
     辺りに視線を走らせれば他の星々も確認できたわ。太陽も、金星に木星も、目を凝らせば海王星だって見えた。だけど私のように人間を模した体は見当たらない。まあ、もともとこの体だって必要に駆られたから作り出したものだものね。誰もいなければ不必要だわ。──不必要、なのに。
     胸の奥にもやもやしたものが広がっていく。ここには何か入れていたかしら。姿を人間に似せただけで中身はよく理解していなかったから、何か不具合でも起こっているのかしら。もしそうなら面倒なものを作ってしまったものね。いっそ壊して、もっと機能性を追求した方がいいのかも。エラーやバグの類であると片付けてしまえば、頭は納得しても、もやもやはその強度を高めたようだった。
    1916