手のひらでは味わえないナギリは自分が辻斬りをいつから始めていたか、はっきりとは覚えていない。
ただ覚えていない事は大した問題ではなく、ナギリにとっては少し夢見が悪くなるだけの代物でしかない。
寧ろ悪夢と思いたい現実の方が、シンヨコに来てからのナギリにとっては頭痛のタネだ。
今日も早速その原因の一人であり、目の前で叫ぶように挨拶してくるカンタロウはムカつく程に元気だ。
本人の言葉、そしてナギリの記憶においても最後にカンタロウを斬って以来、満腹になった記憶がない。
それなのにカンタロウの大声はナギリの空っぽの腹には響くのだから理不尽極まりないと思ってしまう。
「辻田さん、こんばんわ!こんな路地裏で奇遇ですね!本官は今日も辻斬りハザードマップが古くなっていないかチェックしつつ、パトロールであります!」
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