きっと最期のその日までオレの腕の中に抱えられた、生まれて一年ばかりしか経ってない生命は、春の日和よりも幾分も温かかった。その小さすぎる手を握った感触を生涯忘れることはないだろう。
「あんなちぃさかった足摺がもう三十かぁ。オレも歳を取るわけだわなぁ」
「よく毎年毎年、飽きもせず同じ感慨に浸れますね」
全く、と呆れたように酒を煽る。その悪態が照れ隠しなのも承知だった。
耳まで真っ赤にして小さくなって俯いてた子供の頃も、うるさい、恥ずかしい事を言うなと邪険にしてきた十代の頃も、火照る顔を酒のせいにして、もういいでしょうと狼狽えていた二十代の頃も。
そうやって思い出していく全てがまた感慨となる。くぅーっと強い酒を煽ってその胸の熱さに呆けた。
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