明日僕はただの犬になる。「……さようなら、彰人」
明日も会えるはずなのに、それはもう今日とは違う関係だと知っている。また明日なんていう約束はしてはいけないと知っている。──そんなこと知りたくなかった。
「……はぁ」
「彰人……」
「自分でどうにかする。だから気にすんなって言ってんだろ」
普段とは違う、憂鬱を溜め込んだ息が吐かれるのを見たのは何度目だろうか。そんな些細な違和感を感じ取りながらも、解決できる問題だと当人に言われてしまえばどうすることもできなかった。頼ってほしい気持ちはある。だが頼って欲しい時はちゃんと言ってくれている。当人がああ言っている以上強引に聞くのは憚られた。
──しかし数日経っても彰人のため息や、集中力の削がれ様が普段通りに戻ることはなかった。解決できるといった手前頼ることができない、そういうことならば助け舟を出すべきなのだろう。だが何度頼れと言おうと、それに彰人がその言葉に乗ることはなかった。それどころか日に日に食まで細くなっていっているのが目に見えてわかる。昨日まで食べていた量を今日は残し。そして明日は今日食べ切れた量を残すのだというサイクルが予想できるほどに、生気が薄くなっていた。
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