男装夢主ちゃん ハリポタ ボツ 教室に着くなり、ロックハートによるありがたい御高話が始まった。なげえしなげえしなげえ。
話してる内容も普通に語ってくれたらいいのに、どことなくこう……自慢が強くてだんだん飽き飽きしてくる。文章だとまだ小説的に面白いのに。教科書見てる方がマシだ。話を聞いてるうちになんだか頭が痛くなってきた……。
周りの女子のかなりの数がキラキラお目目で見てる事が信じられない。男女問わずキラキラお目目の生徒は多いが、男子のほうが全体だと率が少ないのだろう。げんなりした顔の生徒もちらほら見える。周囲を見渡していると、パチリと死んだ目をした男子生徒と目があった。お互いに大変だねの意を込めて肩をすくめる。向こうもほんとにね、とばかりに肩をすくめてくれた。
「えー、えー、君、そこのお嬢さん! 話を聞いてますか?」
話が終わったのかと思ってロックハートの顔を見ると、なぜかばっちりと視線が合う。……え、何、私に話しかけた。
「聞いてませんでした」
素直にそう返すと、オーバーリアクションで「なんという事だ! 私の話を聞いていないなんて!」と嘆かれた。
横のハンナたちから「ちょっとカイリ!」と言われたが、嘘ついてないし。
というか、なんだかまじで気持ち悪くなってきた。熱がぶり返してきた? いや、この前とはちょっと違う。ともかく、体調が本気で悪くなってきてしまった。
「先生、すみませんが頭が痛くなってきたので医務室に行ってもよろしいですか?」
「なんと! 大変だ。いますぐ治してあげましょう、こちらへおいで」
「は???」
何 言 っ て ん だ こ い つ 。
という目で見上げているうちにロックハートが近づいてきて、私の腕をつかんで無理矢理前に引き摺りだす。あまりの力強さに肩が外れるかと思った。きゃあきゃあと女子の黄色い悲鳴が上がるが、正気か? 私の顔見てなんでその声が上がった??
「ではお嬢さん。どんな風に体調がすぐれないのか言ってみなさい」
ニコリと顔に角度を付けながら口の端を上げてロックハートが微笑めば、教室中が歓声に包まれた。その甲高い声に、脳がやられた。
「放してください」
掴まれたままの腕を見ながら言うが、ロックハートには届かなかったらしい。
「大丈夫だとも! 私は様々な冒険をしてきたからね、当然人を癒す事だってお手の物さ!」
「放してください」
「ははは、どうやら少しシャイな子のようだ。まあ仕方ないね、なにせこの私が直々に魔法をかけてあげようというのだから……」
”私”がやたら強調されたうえに、謎に、だから……ら……ら……と声が反響していた。
「大丈夫だよ、お嬢さん。どうか身を委ねてごらん……」
肩をそっと触れられ、抱き寄せられかける。ぞわりと体中に悪寒が走る。ただの悪寒じゃなくて、むしろ、もっとねっとりとして、気持ち悪いもののような気がした。咄嗟に足に力を込めたけれど、成人男性の力には勝てない。ぼふんと、私はロックハートにもたれかかるような態勢になった。ゾッとする。
次の瞬間私は教室にあふれる黄色い歓声を押しのけて、絶叫した。
「変態だああああああああああ!!!!!!! いやだああああああああああああああ!!!!!!!!!! イエスロリショタノータッチいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!」
咄嗟に出た悲鳴は、英語ではなく日本語だったとのちに認識する。言葉が分からないうえにあまりの大声だったので、教室中が固まった。
うわああああああああああ!!!!!!!! と叫び続けていると、我に返ったロックハートが私の叫び声を止めようとする。
「お、落ち着きなさい、お嬢さん! 黙りなさい!」
口を手で押さえられる。私がそれでも暴れるので、それを押さえるためにロックハートは教壇の上に私の体を抑えつけた。
「何事ですかッ!」
そういいながら教室に入ってきたのは、マグゴナガル先生だった。
Q 悲鳴を聞いて教室に入ってきたマグゴナガル先生が最初に見たものは?
A 教壇の上に、ロックハートによって抑えつけられて口を塞がれて半泣きの私。
完全に事案の光景だ。
「ロックハート!!!」
マグゴナガル先生の怒号が飛び出した瞬間、ロックハートは硬直していた。「いや、あの、ちがくて」という言葉を漏らすも、マグゴナガル先生に弾き飛ばされた。マグゴナガル先生が教壇の上にいた私の体を抱きとめる。
「大丈夫ですか、ハナ」
「は、はなしてっていったのに、はなしてっていったのにいい!!」
私が喉を引き攣らせながらそう訴えると、マグゴナガル先生が不思議そうな顔をした。どうしてそんな顔をされるのか分からなかったが、マグゴナガル先生はロックハートを睨みつけると私の体を抱き上げる。抱き上げる時、わずかに魔法をかけられた気がした。
「顔色も悪い。マダム・ポンフリーの元に連れていきます。失礼」
マグゴナガル先生が私に対して不思議そうな顔をした理由は、医務室に行って事情を話そうとした所で判明した。
「ハナ……すみませんが日本語は我々は分かりませんの」
我に返れば、さっきの悲鳴も日本語だった。マグゴナガル先生に説明しようとして飛び出てきたのも日本語だったらしい。
慌てて英語を構築しながら、ちょっと気持ちが悪かった事、医務室に行こうとしたら治すと言われて無理矢理腕をつかまれた事を話した。その時に「ここをつかまれて」と袖をめくると、軽く痕になっていたので、マダム・ポンフリーの顔が険しくなった。そのあとは放してほしいといったのに話を聞かず、何を思ったか抱き寄せられ、家族以外の異性(しかも好感度マイナス)にハグされかけた事が気持ち悪くて仕方なくて叫んだことを説明すると、マグゴナガル先生とマダム・ポンフリーの顔はそれはそれは