乾杯と誓い「お前さ、何も考えないで生きてりゃ、もっと長生きできたんじゃないか」
檀がそう言ったのは、酒の匂いがほのかに残る夜だった。
二人して縁側に腰を下ろして、黙って星を眺めていた。
太宰は缶ビールを片手に、草の匂いのする風に目を細めている。
「そうかもしれないね」
太宰は、ゆっくりと応じた。
頷きながら、笑っていた。
いつもの、皮肉とも弱音ともつかない、あの笑い方だ。
「なあ、俺は本気でそう思うんだよ。お前がもっとこう……鈍感で、器用で、人の目なんか気にせず笑える奴だったら……」
「だったら?」
「死なずに済んだんじゃねえかって、思うんだよ」
太宰は、しばらく黙っていた。
どこか遠くを見ていた。
「……それができたら、きっと、俺はもう俺じゃない」
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