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    スープ作るときに歌うと紛らわしそーな曲をラジオで聴いたとです。みつひか年齢操作に捏造たっぷり

    紛らわしい歌を歌うな 寝ぼけた頭で動かした腕は何も掴むことなく、こころなしか湿ったシーツを撫でつけるに終わった。最後の記憶によれば腕に抱いていたはずの温もりは、既にベットを出ているらしかった。
     まな板に刃が当たる小気味良い音が脳にかかった霧を晴らしていく。体は重いのに眠りが深かったおかげかスッキリと目覚めて音のする方に顔を向ければ、エプロンをつけて台所に立つ弟の後ろ姿がある。ゆったりめのTシャツの下はボクサーパンツのみであり、昨夜、記憶が飛んでいる間にでもつけたのだろう鬱血痕の集中した首筋や太腿が無防備にも曝け出されていた。
     充は下着だけ履いて忍び寄る。休日ということもあり、まだ鏡の前に立っていないであろう光はご機嫌のようで、近付くにつれ、調理音に混じって鼻歌が聞こえてきた。歌といってもぽつり、ぽつりと単語が聞き取れるが、ほとんどは「ふんふん」とメロディを口ずさんでいるばかりである。どうやら歌詞はよく知らないらしい。
     包丁が置かれ、切った具材が水を張った雪平鍋に投入される。グツグツと煮立ってきたときに曲も一番盛り上がるところに差しかかったのか、曖昧だった鼻歌が徐々に意味のある言葉の羅列になっていく。そのタイミングに合わせて背後から抱きすくめてやろうと充は腕を伸ばす。
     光はラベルの貼られていない瓶を手に歌った。
    「どくいりすぅぷで〜いぃしょに〜いこ〜お〜♪」
     やけにハッキリと。まるで背後にいる充に聴かせるかのように。
     サラサラとした黄色がかった白い粉が小さじに二杯分鍋に振り撒かれる。
     弟に殺意を抱かせるようなことをした覚えが充にはさっぱり思い浮かばなかった。ましてや、昨夜などは腹を見せつけてくる猫のように艷やかな声で充を雄として求めてきたのだ。求められるまま獣になったが傷付けはせず、けれども二人は兄弟という血の繋がりを危険なスパイスにたっぷりと愛を確かめあった。それなのになぜ。どうして。why。
    「えっ」
     わけがわからない。思考を停止した脳からはみ出た気持ちは、意味までは届かずとも声だけが光の耳に届いたようだった。
    「……えっ」
     光は蓋を閉める前の瓶を取り落としそうになりながら振り返る。
    「あっ……起きてたんだ……おはよう、兄ちゃん」
     きっちり蓋をした瓶は別段慌てた様子もなく引き出しの中にしまい込まれた。おう、と充が一言発した後に訪れた不自然な沈黙は、
    「もうすぐご飯できるから食器出してくれる?」
     という光から少し困り気味に発せられた要求により破られた。
     充が普段、スープや袋入りラーメン、ご飯を多めによそう丼として使う大きめのお椀を二つ、ローテーブルに持ってくると、そこに具だくさんの毒入り(?)スープが等分される。
    「昨日の疲れが残ってて、簡単なものだけど……」
     と光が言い訳じみた口調で説明する、細かく切った数種類の野菜とウインナーのスープに、多めに炊いて冷凍したご飯を温めたものが追加されて朝食が揃った。
     ぱちんと手のひらを合わせて唱えられる「いただきます」を、充は内心穏やかでないままに復唱した。しかし、己を殺すために作られたかもしれない不安が邪魔をして箸が思うように進められない。それでも食べないのは変に思われるだろうとお椀を持ち上げて、置いて、持ち上げて、置いてを繰り返す。お椀の中身が減っていないのだから光に訝しまれるのも当たり前のことだった。
    「どうしたの? 食欲ないの?」
     光は心配そうに首を傾げてスープを啜った。どうやら本気で一緒に逝くつもりらしい。もくもくとウインナーを咀嚼する光は見るからにのほほんとしており、腹の中で決めているであろう覚悟を充に微塵も感じさせない。
     体調に問題が無いことを伝えると、手のひらに乗っかってご飯を食べるハムスターのようにしか見えない弟が殺意を抱くまでの経緯を、充はいま一度真剣に考え始めた。
     充が大学に進学し、一人暮らしを始めたことで兄弟は毎日顔を合わせることがなくなった。それでも毎日のように携帯でやりとりはしているし、休みになれば光は泊まりにくる。恋愛感情を確認しあったのは中学時代、体の関係は光が高校に進学してからのことで、合意のうえに成り立つ行為かつ誰でもいい性処理などではない。充は光のことを弟としても恋人としてもかけがえのない存在であると思っているし、光も同じ想いでいてくれるはずだと認識している。
     なおさら理由が分からなくなりかけた充はご飯を一口放り込み、停止しようとする思考を奮い立たせる。咀嚼しているうち、光の本当の気持ちが主観では全て測り知ることはできないはずだと思い至った。
     つまるところ、聞かねば永遠に答えは分からないまま。
     心中を実行しようなどするほどに追い詰めてしまったのであれば、それは自身の落ち度である。
     充は意を決してぬるくなったスープを口に含んだ。うっすら濁った鶏ガラ中華味が喉を伝って空の胃袋に流れ込んだ。
    「……なあ、光」
     軽い調子で切り出すはずが、充の口から出たのは重々しい声だ。緊張が伝わったのだろう、胡座をかいていた光は脚を畳み話を聞く姿勢をとった。
     正座という畏まった姿勢になった光に、充は半ば泣きそうになりながら訊ねた。
    「俺は、自分でも気付かないうちにお前に酷いことをしてしまったんだろうか。辛いことがあるなら正直に話して……教えてくれないか」
    「……? なんにも酷いことなんてされてないけど……? 強いて言うなら家に帰っても兄ちゃんがいないのが寂しいなー、くらい……?」
    「本当に、それだけか? 何を言われたって俺は怒らないぞ。……いや、違うな。俺は怒る立場じゃない。色々と言いたいことがあるのは光の方だ。そうだろ?」
    「えぇっと……? 兄ちゃん、なにか変なものでも食べた……?」
     怪しいものならたった今食べたなどとは口が裂けても言えない。充は光が来る前日の朝から晩に食べたものを順に答え、逸らされかけた話題を引きずり戻した。
     なにか辛いことでもあったのか。どんな些細なことでもいい。どんな内容だって受け入れる。そういった類の言葉を充が繰り返しかけ続けていくうち、光の方が「わけがわからない」と口にし混乱し始めた。遠回しに聞き出すのでは埒が明かないと、充は直球をぶつける。
    「実はさ、聞いちゃったんだよ。さっき。スープに毒をいれて――俺と心中しようとしてるって」
     光の顔色に分かりやすく変化があった。
     見開かれた目は都合の悪い言葉を聞かれたことへの焦りからと納得できる。しかし、頬が青ざめるのでなく紅潮したのは充にとって予想外であった。
    「えっ……聞いてたの……?」
    「あぁ。楽しそうに歌ってるなと思ったら、急に心中しようだなんて言うからびっくりしたぞ」
    「もしかして……これ、毒入りスープだと思ったの……?」
     光は縮こまりつつ、湯気の立ち消えてすっかりぬるくなったスープが半分ほど残った充のお椀を指さす。充は力強く頷いた。
     針を刺した風船から空気が少しずつ漏れ出すような吹き出し笑いは、あっという間に呵々大笑に変わる。腹を抱えてベッドをぽすぽす叩いてまで笑っていたかと思えば、光は何か引っかかることがあったのか不意にトーンを落として顎に手を添わせた。
    「なんで毒が入ってるなんて……? まさか――浮気してる? ……の?」
     ――毎日のようにやりとりをしているのだから、浮気をするような時間は現実的に考えて存在しないはずだ。それはお前も分かっているだろう。
     細かなことに気が付ける目から得た情報が元になる論理的思考に長けている光には、あやふやな精神論よりこちらも論理的(っぽい)ことで返した方がいい。口喧嘩で度々言い負かされる経験から導き出した言葉をぶつけようとし、充はそれを寸前で飲み込んだ。やりとりといっても電話口であったり文字であったりと、不都合な事実――今回で言うなら浮気を隠そうと思えばいくらでも隠せてしまうのだ。
     無論、そんなことはしていないが。
     それでも、光は反論の致命的な穴を突いてくるだろう。頭から浮気を疑って毒を盛るなどと凶行に及ぶほどまでに追い詰められているならば尚更。浮気をしているなどという勘違いを正すのは骨が折れるだろう。
     生憎と、一星充という人間は論理的も理論的も苦手である。もとより持てる力を存分に使ってぶつかっていく、悪く言えば力任せに。良く言えば豪快に。それが充の得意とするやり方なのだ。自分の知らないうちに浮気をされているかもしれないきっとそうだという無用な心配を消し去るための手段として、充が言い負かされることが絶対に無いと自信をもって選んだのは、慣れない理詰めではなく直情的に愛を伝えることだった。
     充は残ったスープを一滴残らず飲み干して「美味しかった」と感謝を述べた後、何か言いかけた光を真正面から抱きしめ鎖骨に鼻先を押し当てた。
    「あー、うん、やっぱダメだ。心臓がやばい。分かるか?」
     ほんのりと温かい耳に囁きかけると、垂れ下がっていた腕が意識を取り戻したかのように持ち上がり、充の背を掴んだ。
    「……本当だ。抱き合っただけでこんななんて、子供みたい」
    「だろ? 浮気だとか考える余裕なんて無いくらいに光のことが好きなんだ。光以外の誰かとっていうのが想像できない。光はいっつも……昨日も、頭が変になるとか言ってたけどさ、本当にダメになってる俺の方なんじゃないかってたまに怖くなるんだよ」
    「っ、それは言わないで……!」
     ぐりぐりと肩口に擦りつけられる額は熱い。充は昨晩の残り香を思わせる痕に重ねて口づけ、尾てい骨あたりまで手を下げる。光はびくりと体を震わせた。恐らくは無意識だったのだろうが、甘い含みのある吐息が耳を掠めた瞬間、充の口は「好きだ」という単語しか出せなくなった。
     赤みを増していく耳に何度も言い聞かせるうち、背中に回されていた腕は抱きつくと言うには強すぎる力が込められていく。充が抱き寄せているのではない。より密着した光の胸部からは早鐘を打つ心臓の脈動を感じられ、高くなった体温は、何かにしがみついてでもいなければ溶け崩れてしまいそうなのだろう。光をそうしたのは他の誰でもない充だが、少しばかり苦しくなってきてやむなく引き剥がす。昨晩も見た目と視線がかちあった。
    「にいちゃ……しゅき……」
     酔っ払ったような口を、充はたまらず塞いだ。
     光が口ずさんでいたのは心中を選ぶほどの苦しみを紛らわすための空元気などではなく、有線放送か何かで聴いた歌であり、それが状況的にたまたま紛らわしい内容であったこと。浮気を疑ったのは前後の歌詞を聞いたうえで毒を盛られたと勘違いされたと勘違いしたためであること。すれ違いが解消されるまで、あと三時間とちょっと。
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    DOODLEキョンシーコス一星を見て思いついたものその2。その1とは繋がりがありそうな無さそうな。アレオリ時空的にあの世界でイナズマジャパンのグッズ販売してそうという思いつきその2。画像をズームして見ただけなので実際のものと書いたの違ってるだろうなぁ……
    コスプレキョンシー、ほんものキョンシー 街明かりへと向かう仮装行列が夜の公園を通りがかっても、今夜に限っては誰ひとりとしてそれに奇異の目を向けることはない。洋風に偏ったモンスターの装いに、日本の侘び寂びを体現した秋の虫の声はどうにも似つかわしくないようではあるが。
    「その格好、寒くない?」
     王帝月ノ宮サッカー部による仮装行列を先導していた野坂から不意にそんな言葉が出る。
    「……ちょっと肌寒いです」
     答えたのは、そのすぐ後ろをついて行っていた一星である。古い時代の中国の官僚が被っていそうな帽子には、呪言に見せかけて自分の名を書いた札があり。詰まった首元、手を隠して垂れ下がる袖。それだけを見れば暖かそうなものだが、下半身へと視線を下っていけば膨らんだシルエットのズボンの裾は膝よりも上にある。靴も地面を踏む足をすっぽり隠すだけであり、脚の半分以上が秋の夜風に晒されている状態だ。
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    DOODLEキョンシーコス一星を見て思いついたものその1。アレオリ時空的にスポンサー契約やらなんやらで広告塔的な役割ある=グッズとか販売してそうという安易な思いつきその1
    ハロウィンフェスとキョンシー ハロウィンフェスとは名ばかりに、制服として支給されたと思しいパーティーグッズをつけた店員と僕たちを除けば、ショッピングモールの中で仮装している人というのはほとんどいない。

    「まあ、そうですよね……まだ昼に近い夕方だし、それにハロウィンは何日も先なんですから」

     一星くんは指先まで覆い尽くす袖をだらんと垂らす。膝上丈のズボンから露出した脚を少しでも隠そうとしているかのようにも見える。秋に向けて肌を隠す服装へと移ろいゆく季節的に、待ちきれずに浮かれきっているようにしか思えない服装に、目を引くのも仕方ないことだろう。
     それもそのはず、少し気が早いと一笑するには、ハロウィンに合わせて売り出されるグッズの撮影用衣装は手が込みすぎていた。僕は吸血鬼、一星くんはキョンシー。良くできていたものだから撮影が終われば用済みというのはもったいない気がして、撮影終わりそのままの格好で外に出てきたが、衣装を貰ってハロウィン当日に着るべきだったかと少しばかり悔やまれる。
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