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    思いついたSS(修正前/ちょっと長めやちょっと暴力表現有やちょっとエロいの)を適当にポイポイします。

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    外岡視点の弓場のの
    こちらは、ナリさん(@naridc3)がエワ8で展示公開されていました『ののさんお誕生日おめでとう漫画https://poipiku.com/1338440/7719277.html』があまりに素晴らしく、この話の後日談を外岡視点で書かせて頂いたものです。
    ※ナリさんには事前にご許可いただいております※

    外岡の三人称視点ですので弓場のの要素は正直薄めな気がしますが(笑)

    【外岡視点の弓場のの】A secret makes a woman woman狙撃手の職業病みたいなものだと、外岡一斗は思っている。
    僅かな仕草や重心の変化から射撃タイミングを図る外岡は、普段の生活でも人の変化を察する能力が高い。
    周りの人たちの体重の変化や体調不良、或いはささやかな喜怒哀楽にもよく気付く。
    元々の素質もあるが、ボーダーで狙撃手になってから、それは更に磨かれた。
    だから、藤丸ののに訪れた変化も、外岡はすぐに気付いた。
    「………ののさん、なんか最近いい事あったッスか?」
    「え?」
    弓場隊の作戦室で外岡にそう訊ねられた藤丸は、アーモンド形の大きな目をぱちくりさせた。
    「なんだトノ。藪から棒に」
    「いや……なんか、最近ののさんがキレイになった気がして……なんかいい事あったのかなあ、と」
    そう言い終わるか終わらないかの内に、かあっと頬を染めた藤丸にバシバシと背中を叩かれる。
    「だっ、誰がキレイになっただよ! トノも上手え事言うようになったなこの野郎!!」
    「いっ、痛いっ!  痛いッスののさん」
    実際のところ、外岡は換装体の為痛みはない。けれど、その手の平から伝わる衝撃が思いの外強く、生身だったら絶対痛いと思った。
    「世辞なんて言ってねえで、もうちょいで狙撃手の合同訓練だろ?  さっさと準備して行けよ!」
    「お世辞じゃないッスけど……」
    照れた笑顔のまま外岡を追い出そうとする藤丸に従い、外岡は素直に立ち上がった。
    時間にはちょっと早いが、藤丸がこの調子ではここにいても落ち着かなさそうだ。
    最後作戦室を出る前に、外岡は藤丸が綺麗になった原因で思い当たる人物の名を口にする。
    「ののさん、今日弓場さんって来ますか?」
    外岡の質問に、呆れるくらい分かりやすく動揺する藤丸。
    「えっ?!  なっ、なんで弓場の名前が出てくんだよ!?」
    「いや、隊長だからッスけど……」
    「あ、そ、それもそうだな! えーとな、うん。このあと来るぞ。しばらくは作戦室いると思う」
    「あざっす。じゃあ、行ってきます」
    「おう、気張ってこい!」
    最後は明るい笑顔で見送ってくれた藤丸は、やはり綺麗だった。
    (ーーーやっぱり、弓場さんが原因か)
    作戦室から出て、外岡は歩きながら最近の藤丸の様子を振り返る。
    外岡が藤丸の変化に気付いたのはここ最近。
    確か、藤丸の誕生日が終わった辺りだったと思う。
    藤丸は普段特別お洒落に気を遣っている感じではなかったが、元来のスタイルの良さとその活かし方はこなれていて、いつもさり気なくて綺麗だった。
    けれど、姉御肌な性格も相まって、可愛いと言うよりはカッコいいという印象が先に立つ。
    だが、最近の藤丸は、なんというか……妙に色っぽいのだ。
    具体的に服装が変わったわけでも化粧の感じが変わったわけでもないとは思うのだが(外岡は当然だがお洒落に詳しくない)、何となく受ける印象が変わった。
    仕草が女っぽくなったのか、笑顔が増えたのか、多分その辺りの変化だとは思うが、それにしたって、朴念仁の自覚がある外岡ですら時々ドキッとしてしまうくらいの変わり様である。
    (弓場さん、何したんだろう……)
    以前にも、こんなことがあった。
    藤丸が急に可愛い系の服を着る事が増えたな、と思ったら、ある日弓場隊が作戦室に緊急招集された。そして、そこで弓場から「藤丸と付き合うことになった」と生真面目な報告を受けたのだ。
    『俺らは今までと何も変わらねェつもりだ。お前ェらに迷惑はかけねェ。けど、もしも俺らが隊で舐めた真似してると思ったら、そん時ァ遠慮なくぶん殴ってくれ』
    90度のお辞儀のままそう告げた弓場と、隣で同じように頭を下げる藤丸に、外岡は隣にいる帯島と思わず顔を見合わせた。
    勿論外岡も帯島も、2人が付き合う前から2人の仲を応援していたので、この報告は嬉しいばかりである。
    そして弓場の宣言通り、隊での2人の関係も、外岡たちとの関係も変わることはなく今に至る。
    だから、今更何があってそんなに藤丸が変わったのか、外岡は好奇心半分で気になっていた。
    と……
    「あ、トノ! 早いねえ」
    「ああ、佐鳥。お疲れ。そういう佐鳥こそ、時間前に集合場所にいるなんて珍しいね」
    振り返った先にいたのは、嵐山隊狙撃手・佐鳥賢だ。佐鳥は外岡の言葉に笑って答えた。
    「今日は広報の仕事が早めに終わって、作戦室でとっきーと事務処理してたからさ。とっきーに「そろそろじゃない?」って声かけられて、素直に来たらこの時間」
    「さすが時枝。時間管理バッチリだなあ」
    そんな話をしながら、外岡は広報で幅広い年代の女性と接する機会の多い佐鳥に、先程考えていた疑問をぶつけてみる。
    「なあ、佐鳥。最近ののさんに会った?」
    「藤丸さん? あー……この前オペ会議終わって会議室から出てきた時、ちょっとすれ違ったかな? 相変わらず美人でカッコ良かった」
    佐鳥は息をするように女性を褒めるので、今の感想は挨拶みたいなものである。
    「ののさんさ、最近綺麗じゃない?」
    「うん?  藤丸さんはいつも綺麗だと思うけど」
    「最近余計にっていうか、色っぽい感じがするっていうか……」
    外岡の曖昧な言葉に、佐鳥はうーんと先日会った藤丸を思い出しながら考える。
    「確かに……言われてみれば、心なしか艶っぽさが増した、ような……?」
    「そうだよな」
    「けど、言われてみればってくらいだし、普段藤丸さんに会ってる訳じゃないから、よく分かんないって。ねえ、古寺」
    「うぇ、おれ?!  な、なんの話?」
    たまたま背後を通り掛かった三輪隊狙撃手・古寺章平に話を振った。驚く古寺に、佐鳥は「弓場隊オペの藤丸さんが、最近色っぽいって話」と答えた。
    「え? うん、え?」
    よく分かっていない古寺は、それでも律儀にこちらの会話の意図を目で訊ねる。外岡はちょっと申し訳なく思いながら、話を切り出した。
    「いやあ、最近うちの隊のののさんが女っぽくなった気がして、他の人の意見も聞いてたんだ。古寺は、最近ののさんを見かけた?」
    「いや、おれは会ってないね。藤丸さんは元々綺麗な人だから、朴念仁のおれなんかがそういう変化に気付けるかは自信ないけど……」
    頭を掻く古寺に外岡はパチリと目を瞬かせる。
    「いや、古寺の観察眼と分析力は凄いから、気付くと思うけどな」
    「え?  あ、ありがとう……?」
    突然の同級生の褒め言葉に、古寺は顔を赤くして戸惑ったように礼を言う。
    外岡は思っている事を言ったまでなので、軽く首を傾げて応えた。古寺は一度咳払いをしてから、外岡を真っ直ぐ見つめ返す。
    「でも、トノも凄いからさ。トノが藤丸さんが変わったって思うなら、きっとそうなんだろうね」
    「でも、なんで変わったのかが分かんないんだよなあ。ののさんの誕生日後くらいだとは思うんだけど」
    その一言を聞いた佐鳥がニヤァと笑い、「そりゃあ……」と何かを言いかける。が、古寺はその口をもがっと塞ぐ。
    そして、外岡に向かってにこっと笑いかけた。
    「分からないくらいで丁度良いよ。『秘密は女性を美しくする』って言うでしょ」
    古寺の言葉に、外岡は記憶を掘り返す。
    「あー……なんかの漫画の台詞だったっけ?」
    「あ、おれ分かる! 某有名探偵漫画の女エージェントの台詞だよね」
    「そうそう。あれは英語の台詞だったけど」
    そこから2人の話題はその漫画の話になり、外岡もそちらに耳を傾ける。
    その頭の片隅で、先程の古寺の言っていた台詞を反芻していた。
    (『秘密は女性を美しくする』か……)

    狙撃手合同訓練も無事終わり、外岡は解散してすぐ作戦室へと戻って行った。
    音もなく扉が開き、部屋の右手側にあるオペレーターデスクで、パソコンに向き合う藤丸とその横でモニターを覗き込む弓場拓磨がいた。何やら穏やかな表情で言葉を交わす2人。
    と、その時藤丸が軽く頬に掛かった髪を左手でかき上げ、一瞬露わになった耳にはキラリと華の形をしたピアスが光った。
    「!」
    外岡が知る限り、藤丸が装飾品をつけているのは初めてだ。そしてそのピアスが見えた瞬間、弓場の笑みが一層柔らかくなったのを、外岡の目は見逃さなかった。
    (あのピアスって……もしかして、弓場さんが誕生日プレゼントにののさんに贈ったのかな)
    それならば色々合点がいく、と藤丸の変化の原因に納得がいった。
    それと同時に、隠れて見えない筈のピアスの存在が、藤丸の美しさを引き立たせているという不思議さにも思いが巡る。
    「…………」
    立ったまま2人を見つめていた外岡に弓場が気付いて顔を上げる。
    「おゥ、帰ったか外岡ァ。訓練、ちゃんとキメてきたんだろうなァ」
    「うッス。今日の訓練じゃ、捕捉・掩蔽訓練で3位でした」
    「おゥ。おめェは隠密行動が巧いからなァ。だが、怠らず1位目指して気張れや」
    「ッス!」
    頷いた外岡はそのまま部屋へと入る。藤丸のピアスは既にミルクティー色の髪に隠れて見えなかった。
    外岡の視線に気付いた藤丸がニコッと笑い、その笑顔がいつにも増して艶やかで美しく、外岡はドキッとする。
    そんな外岡の背を、近付いてきた弓場がバンと叩いた。
    「うわっ!」
    ドキッとしたのがバレたかと思い、別の意味で心臓が跳ね上がった外岡に、弓場が二ッと笑いかける。
    「それでこそ弓場隊の狙撃手だ」
    「う、うす……」
    見返した外岡はなんとなくへらっと笑ってしまう。弓場は外岡の内心を見抜いているのかいないのか、目を細めたままもう一度ニヤリと笑ってポンと外岡の肩を叩いた。
    「今、丁度藤丸と次のランク戦のステージ予想と対策してたとこだ。おめェの意見も聞かせてくれや」
    「っス」
    そのままいつもの空気で話し始める弓場と藤丸に加わり、外岡も自分の予想やそれに対する対策を意見する。
    時折目が合い会話する藤丸のピアスは、もう見えなかった。けれど、やはり藤丸が綺麗に見える事には変わりない。
    そして、藤丸を見守る弓場の視線の柔らかさもまた、男の色気というものを醸し出していた。
    (『A secret makes a woman woman』……かあ)
    『秘密』の威力を知って、一つまた大人の階段を上った外岡少年であった。

    【終】
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