Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    aYa62AOT

    @aYa62AOT

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 34

    aYa62AOT

    ☆quiet follow

    モブジャン→ライジャンNTR
    2話目。
    詳しくは1話目のキャプションをご覧下さい。

    #ライジャン
    laijun
    #NTR

    虹色の箱庭② ある日曜日の朝、ベランダで洗濯物を干すジャンの耳にリビングのローテーブルの上で震えるスマートフォンの音が響く、サンダルを脱いでそれを手に取ると「荷物届いた」の短い文章が画面に表示されていて自分も「良かった、また足りないもの送る」と文章を打って家事の続きに取り掛かる。この短い全く同じやり取りをもう一年以上繰り返していて、赴任直後は料理の感想や感謝の言葉があったそれが一つ減り、二つ減り今ではこの一言ずつのやり取りが辛うじて夫婦の絆を繋いでいる気がジャンにはしていた。
     必要な物を敢えて聞いてわざわざ送るのもネットショッピングで買えば済むはずのそれをさせないようにしている自分が必死で「妻」としての役割を保とうとしている気がして洗濯日和の空とは打って変わってジャンの心をどんよりと曇らせた。

     一人分の少ない洗濯物と普段から最低限の掃除をしているからあっという間に部屋の掃除も終わって昼を迎える頃にはジャンは手持ち無沙汰になる、平日は会社勤めでそれなりの忙しさを感じているものの休日はただただ時が経つのが遅くて退屈だ。
    「……なんか資格でも取るかな」
     新聞の折り込み広告の通信教育のチラシを目で追いながら酷く退屈そうに呟いてはみるものの目ぼしい物は何も無くてクシャりとそれを丸めてゴミ箱へ放り立ち上がる。キッチンに向かうと中々減らない母の家庭菜園の夏野菜たちが段ボールの中でひしめき合っていた。
    「……買い物行くか」
     結局今の自分に出来るのはこの野菜達を消費する事くらいだと思い立ってジャンはエコバッグを片手にスーパーへと向かう、商店街のアーケードは休日の賑わいで満たされていて、そこにはジャンの持っていない「家族の幸せ」が溢れていた。
    「こんにちは」
     肉の品定めをしているジャンに背後から聞き馴染みのある声がして振り向く、初めて見る私服姿のライナーがやっぱりいつもの爽やかな笑顔で立っていた。
    「あ、こんにちは…」
    「もしかしたらって思って声掛けちゃいました、すみません」
    「いえ、買い物ですか?」
    「はい、今日の食料を…」
     なんて言いながら頭を搔くライナーのカゴには惣菜やインスタント食品、スナック菓子が山のように詰め込まれていてジャンは思わず目を丸める、そんな姿にライナーは苦笑いを浮かべ、そっと背後にカゴを隠した。
    「自炊まるでダメで…恥ずかしいな」
    「そう、なんですね…一人暮らしだと仕方ないですよ」
    「体に悪いって分かってるんすけどね」
    「良かったら、」
     
     ジャンの口から勝手に言葉が溢れる。
     食材が余っているだけ、ただそれだけだ。
     他意なんて微塵も、ない。

    「昼飯、作りますよ」  
    「え、」
    「実家から来た野菜、どう消費しようか迷ってて、迷惑じゃなければ」 
    「迷惑なんて、そんな…!」 
    「良かった」

     ただの世話になってる配達員に食事を振る舞うだけだ、そうだ。友達にもてなすのと同じじゃないか。
     ジャンの頭に自問自答がいくつも浮かんでは消え、消えては浮かぶ。カゴに食材を放り込む度に何度も。

     買い物を済ませて二人連れ立ってジャンのマンションへと向かう、別に非力でもなんでもないジャンの買い物袋をさりげなく持って当たり前に車道側を歩くライナーをチラと見て胸の奥にむず痒さを覚える、母以外から無条件に当たり前に優しくされたのはもう随分久しぶりだったから。
    「どうぞ、狭い家ですけど」
    「俺のワンルームに比べたら豪邸ですよ」
    「まぁ、一応二人暮しだから」
     形だけのそれにジャンは苦笑いを浮かべながらライナーをダイニングテーブルへと促す、ずっと昔に撮った夫婦の写真のあるリビングへは何となく促すことは出来なかった。
     料理の合間に二人は色々な事を話す、ライナーが毎日コンビニ弁当や惣菜で過ごしていることや趣味が無くて資格でも取ろうかなんてジャンが思っていること、取り留めのない話に時々笑って、気づいた頃にはテーブルいっぱいに皿が並ぶ。
    「すげー…プロだ…」
    「久しぶりでなんか、張り切っちゃって」
     久しぶりに誰かと向かい合って食事をするのは二人とも同じで自然とまた話が弾む。テーブルの下でうっかりと触れ合う爪先同士に素知らぬ顔をしながら互いに胸が小さく跳ねた。
     食後のコーヒーを片手にジャンは椅子の背に寄りかかって次第に終わりに近付く楽しいひと時に寂しげに笑みを浮かべる、カップに口をつけたライナーの目にもそれは当たり前に留まって、カチャリ、とソーサーへカップを置いて次の言葉を探す。
     せめて、今この瞬間くらいはこの人を笑顔にしていたい。そう思えば思うほど気の利いた言葉なんてひとつも、出てはこなかった。
    「ライナーさんは、「ライナーでいいですよ」
    「じゃあ、俺もジャンで。あと敬語もなしで、何か肩肘張っちゃって…大して歳変わんないだろ?今は客と宅配便のおにーさんでもないし」
    「あ、じゃあ…ジャン、で」
    「誰かと飯食うのがこんな楽しかったなんて、忘れてた」
     カップの縁を指で辿りながらやっぱりどこか寂しげな笑みを伏し目がちに浮かべてジャンは呟く、一人で住むには広いこの家が余計にジャンをどこか頼りなげに見せてライナーが咄嗟に口を開く。
    「俺で良ければいつでも、!」
    「え?」
    「俺で良ければいつでも、冷蔵庫の掃除手伝う、から…」
    「……ふは、冷蔵庫の掃除?上手いこと言うな」
     ライナーの決死の言葉に思わず吹き出したジャンの笑顔がパッと明るくなる、それだけでライナーは何だかホッとしてつられたように自分もまた、笑い出す。
    「じゃ、次また荷物が来た時は晩飯食いに来て」
    「も、勿論!迷惑じゃ、なければ」
    「じゃー次荷物来た時に食いたい物教えて、準備すっからさ」
    「ジャンの作る飯なら何でも、全部美味かったから…」
    「……あ、りがとう」
    「……いや、全然、本当美味かったから」



     不確かではあるけれど、次の約束をしてライナーを見送ったジャンは鼻歌混じりにキッチンで後片付けを始める。そんなジャンを他所に早く見ろと言わんばかりにスマートフォンが激しくリビングのテーブルの上で震えて通知画面が光って、消えた。
     






    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍☺☺☺☺☺☺☺☺☺☺👏👏💴🙏🙏💘🍑🍑👏😻💒💴☺🙏👏☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works